ドイツの総合化学会社BASF(本社:ルートヴィッヒスハーフェン)のコーティングス事業本部は、現地時間の1月5日、「BASF自動車用OEM塗料カラーレポート2021」を発表した。
自動車産業は、一昨年、昨年と世界中で生産が大幅減となるなど、これまでにない新たな課題に直面。そのため、BASFのコーティングス事業部が作成したデータ分析「BASF自動車用OEM塗料カラーレポート(※)」では、世界各地で特定のカラー領域の人気がより鮮明になる一方、長年人気があったカラー領域に陰りが見られたと云う。
「ホワイト」や「ブラック」、「グレー」、「シルバー」といった無彩色は、現在も最も人気あるカラーではあるが、不動だった人気に変化が起こりつつあり、世界の多くの地域では、「ブルー」や「レッド」にシェアが奪われる傾向に。また、数字としては小さいが、データには「グリーン」や「ベージュ」といったカラーも登場しているとのことだ。
※昨年(2021年)1年間の世界の自動車生産と乗用車への塗料適用に基づいて作成。
■欧州、中東、アフリカ(EMEA):有彩色がさらに多様に
欧州、中東、アフリカ(EMEA)では、有彩色のシェアが現在27%を超えてさらに上昇、過去20年間で最も高い数値となった。
そのような中で、現在、スカイブルーからミッドナイトブルーまで180色近い種類がある「ブルー」がトレンドを牽引。エレガントで新鮮かつ、若々しさを感じさせるブルーは、全てのセグメントのあらゆるボディタイプに使用されている。また1位のブルーに大きく引き離されつつも2位につける「レッド」、そして「グリーン系」の色もかなりのシェアを獲得した。
無彩色では、「ホワイト」が依然として一番人気ではあるが、エレガントやダーク表現、輝きを放つ色から、軽やかでスポーティなソリッドカラーまで160種類の選択肢がある「グレー」も追い上げてきていると云う。
以上の結果に対して、EMEAの自動車デザイン責任者のマーク=グートヤール氏は、以下のようコメントしている。
「EMEAのためにデザインされた色は、見慣れた色域を使いながらも、新しいエフェクト、かすかな色のグラデーション、あるいは特定の輝きを加えることで新鮮な色にしています。これにより、有彩色が個性とスポーティさを大胆に表現する色となり、毎年人気が高まっています」。
■アジア太平洋:グローバルな色の多様性を牽引
アジア太平洋地域では、新車の79%に無彩色が使われ、「ホワイト」が最も人気のある色となったが、「ブラック」と「グレー」が4年連続で増加し、その人気には陰りが。
有彩色の人気は安定しており、最人気カラー「ブルー」の割合が「レッド」のシェア減少分を食う形で、グローバルデータ同様に増加した。また、「ブラウン」と「ゴールド」はある程度の数値となり、「ベージュ」、「オレンジ」、「イエロー」、「グリーン」、「バイオレット」はそれぞれ1%程度で踏みとどまった。
アジア太平洋のデザイン責任者の松原千春氏は、この結果に対して、以下のようにコメントしている。
「アジア太平洋地域は自動車生産台数が世界一であり、他の地域と比較して最も多様な色が使用されています。ブルーの急増に伴い、グリーン系統の色も約2%増となりました。ただし、通常のグリーンではありません。ティール、カーキ、オリーブと、今年は特にSUVでグリーン系の色の人気が高まりました」。
■北米:アメリカでは色の好みが急速に変化
北米では、有彩色「ブルー」のシェアが昨年比で4%減少。その人気が他の色へ移行し、「ブルー」を好む傾向が2017年の水準となった他、「レッド」が1%増加、有彩色で「ブルー」と並ぶ最も人気ある色となった。
一方で世界的に減少した「ホワイト」を含む無彩色が増加。しかし「シルバー」と「グレー」は共に減少した。
なお昨年、原材料不足により少ない資源の配分を迫られた自動車メーカー各社は、より大型で人気のあるプラットフォームを好む傾向にあったと云う。
この結果を受けて、南北アメリカのデザイン責任者であるポール=チョーニー氏は、以下のようにコメントしている。
「北米はより早く方向転換しているようです。需要が高く、供給が減少傾向にあるため、購入者はより現実的な選択を迫られ、感情に基づく選択をしなくなるでしょう。消費者は、無彩色のカラー領域で、より親しみやすい色合いにすばやくシフトしています」。
■南米:世界的方向性に追随
南米では、世界的に人気が急上昇している「ブルー」が3%増となり、「レッド」のシェアを奪う一方、購入者の目を引く新しい色合いも登場。この地域で「ホワイト」の車を購入する人たちは、より保守的である傾向が強いと云う。
自動車デザイナーは通常、3~4年先のモデルを見据えて色を開発するが、南米では他の地域に比べて色の方向性を受け入れるのが遅い傾向があり、予想通りの展開となった。
南米自動車塗料のディレクター、マルコス=フェルナンデス氏は、この結果に対して、以下のようにコメントしている。
「これだけ増えてくると、南米でもブルーが定着してきたと言えるでしょう。スカイブルーからダークブルーまで、より多くの購入者がこのカラーファミリーを好むようになってきました。 私たちは、この重要なデザイン領域を高めるような、美しいエフェクトや顔料、特にメタリックを取り入れています」。
■(BASFジャパン)BASF自動車用OEM塗料カラーレポート(日本語)(※クリックでPDFダウンロード):https://www.basf.com/jp/documents/ja/news-and-media/news-releases/2022/20220106_Color%20Report%202021_JP.pdf