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2018年10月3日【オピニオン】

ディーゼルゲートで揺れ続ける独・自動車業界

坂上 賢治

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具体的には、フォルクスワーゲングループはユーロ5(Euro5)並びにユーロ4(Euro4)基準の車両ユーザーに対して新型車への乗り換え時(トレード・イン対策)におよそ65万7000円にあたる5000ユーロ(車種・条件により4000から8000ユーロ)の購入オプションが提示された。但し各社の足並みが揃っている訳ではなくBMWは該当車両に対して6000ユーロ。ダイムラーは1万ユーロの購入オプションが提示された。

 

一方ユーロ5基準車に対しては、該当車両に追加の対策措置(レトロフィットキットの装着)を講じることで、そのまま対象車を乗り続けることもできる。

 

 

 この対応で連立政権は、措置に係るコストを自動車の製造メーカーが全額負担することを望んでいる。これに対して独・自動車メーカー最大手のフォルクスワーゲンは、改造支援自体には合意しているが、この日の段階ではBMWやダイムラーをふくめ全額負担に関しての完全合意には至っていない。

 

さらに仏・プジョーとオペルは追加対策の技術面・経済面双方で賢明な策ではないとハードウェア改造の方向性に難色を示すなど混迷を極めている。

 

しかし連立政権は、ドイツの各都市におけるディーゼル禁止が実施される以前の段階で、ディーゼル車の大気汚染対策で合意する方針であることを確認したと高らかに宣言している。

 

なお連立政権は、ゴミ輸送車などの行政が利用する大型公共車両の改修費用のおよそ8割の資金提供(税収からの供与となる)を提案しており、このような内容を含め、一般市民からは連立政権の自動車メーカーに対する対応が甘過ぎるという声も上がっている。

 

 

当地で交渉後の会見の席に立った独・環境省と、独・環運輸省の担当者は「旧ディーゼル車オーナーが、多額の割引で新型車に交換できるトレードインスキームについては、早々に利用可能になる。

 

しかし排出ガス削減を目的に、旧ディーゼルエンジン搭載車に新たなハードウエア対策を施す改造計画は、自動車メーカーと完全に合意するためにさらなる時間が必要だ。我々は、この交渉によってドイツの14の都市でディーゼル走行の禁止が回避されることに期待している」と語っている。

 

ただディーゼルゲート前のピーク時からディーゼル車の販売は永らく芳しくなく、そうしたなかユーロ5基準のディーゼル車は550万台、ユーロ4基準のディーゼル車は310万台が今も市中を走行しており、ディーゼル車の将来に関する不確実性は未だ解消していない。( MOTOR CARSから転載  )

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。