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2021年3月2日【トピックス】

独VWグループ、2020年に予想を上回る業績を達成

NEXT MOBILITY編集部

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フォルクスワーゲン・ロゴ

 

 

フォルクスワーゲン グループは3月2日(ドイツ・ウォルフスブルグ、2月26日発表)、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックが続いているにもかかわらず、2020会計年度において予想を上回る業績を達成したと発表した。同時に、重要な戦略的決定により、テクノロジー企業への変革を加速させたと伝えた。

 

 

好業績の背景について同社では、グループの効果的な危機管理、最大の単一市場である中国の急速な回復、堅調だったプレミアムセグメントおよびファイナンシャル サービス事業が好業績の鍵となり、パンデミックの影響を最小限に留めたとしている。売上高(2,229億ユーロ:–11.8%)の動向は、販売台数(–16.4%)の動向を上回った。

 

 

ディーゼル問題に起因する特別項目計上前営業利益は、パンデミックにもかかわらず、106億ユーロ(–45.0%)の堅調な水準を達成。特別項目計上前営業利益率は4.8%(2019年:7.6%)だった。自動車部門では、堅牢なビジネスモデルと厳格な運転資本管理により、64億ユーロ(同:–41.3%)の堅調なネットキャッシュフローを達成。自動車部門の純流動性資産は25.9%上昇し、268億ユーロと順調に増加している。

 

 

取締役会および監査役会は、前年同様、普通株式1株あたり4.80ユーロ、優先株式1株あたり4.86ユーロの配当を提案。その場合の配当性向は、戦略的目標レベルの30%に近い29.0%となる。普通株式1株当たり利益は16.60ユーロ(同:26.60ユーロ)で、優先株式1株当たり利益は16.66ユーロ(同:26.66ユーロ)だった。

 

 

フォルクスワーゲングループ財務およびIT担当取締役のフランク・ヴィッター氏は、次のように述べている。

 

 

「Covid-19は、私たち全員に前例のない挑戦をもたらしています。昨年、フォルクスワーゲングループは、パンデミックが事業に及ぼす影響を最小限に留めることに成功すると同時に、変革のための重要な戦略的基盤を構築することに成功しました。今回の財務結果は当初の予想よりもはるかに優れており、弊社が危機においても達成できることを示しています。私たちは、大幅に改善した下半期の勢いを今年も継続することを目指しており、固定費および調達コストの削減プログラムにより、長期的な業績はさらに改善されるでしょう。そのため、私たちはグループの営業利益率に関しては、目標範囲の上限を達成することを目指しています。」

 

 

2020年、フォルクスワーゲングループは920万台(同:-16.4%)の車両を販売し、世界の乗用車市場におけるシェアは13%とわずかに増加(同:12.9%)。グループは、世界的な電動化攻勢の一環として、前年の3倍となる 42万2,000台の電動車を顧客の手に届けた。売上高は 2,229億ユーロ。前年比11.8%の減少については同社は、主にCovid-19パンデミックがもたらした販売台数の減少によるものだとしている。にもかかわらず、特別項目計上前営業利益は106億ユーロ(同:193億ユーロ)で、特別項目計上前営業利益率は4.8%(同:7.6%)であった。販売台数の減少に加えて、為替レート変動が影響を及ぼし、リストラクチャリング対策のための5億ユーロの一時費用も利益の減少に影響を及ぼした。プラスの要因は、固定費の低下だという。フォルクスワーゲン グループの税引前利益は117億ユーロ(同:184億ユーロ)。税引前営業利益率は5.2%(同:7.3%)に低下。中国の合弁事業に起因する営業利益は、36億ユーロ(同:44億ユーロ)となった。

 

 

自動車部門のネットキャッシュフローは64億ユーロ(同:108億ユーロ)で、明らかにプラスとなった。前年比での減少は、主に利益の減少とディーゼル問題に起因する現金支出の増加によるもの。ネットキャッシュフローに関しては、優れた在庫管理が特にプラスの要因になったという。ハイブリッド債の発行が成功したこともあり、純流動性資産は268億ユーロ(同:213億ユーロ)に改善した。自動車部門の研究開発費の絶対額は減少したものの、パンデミックに伴う売上高の大幅な減少により、R&D率(売上高に対する研究開発費の比率)は7.6%(同:6.7%)となり、前年よりも増加。設備投資の大幅な減少の結果として、自動車部門の売上高に対する設備投資の比率は6.1%(同:6.6%)に低下した。

 

 

◾️見通し

 

 

フォルクスワーゲングループでは、(Covid-19パンデミックの感染拡大に歯止めをかけることに成功することを前提として)厳しい市場環境が続く中で、2021年の販売台数は前年よりも大幅に増加すると予測している。経済状況、競争の激化、不安定な資源および外国為替市場、サプライチェーンの確保、より厳しい排ガス要件などが課題となる。

 

 

また2021年のフォルクスワーゲングループおよび乗用車部門の売上高については、前年を大幅に上回ると予想している。グループおよび乗用車部門の営業利益に関して、2021年の営業利益率は5.0〜6.5%になると予測。商用車部門については、売上高が前年比で大幅に増加する中で、リストラクチャリング対策費を除く営業利益率は4.0〜5.5%になると見込む。パワーエンジニアリング事業分野については、売上高が前年に比べて大幅に減少し、損益分岐点に達すると予測している。
ファイナンシャル サービス部門に関しては、売上高が前年度を大幅に上回り、業績は前年度並みになる見通し。

 

 

自動車部門では、2021年の売上高に対する研究開発費の比率は約7%になり、売上高に対する設備投資の比率が約6%になると予想。ディーゼル問題に起因する現金支出は、2021年もほぼ同じレベルになる見通しで、M&Aによる影響は大幅に増加すると予想している。したがって、ネットキャッシュフローは前年並みになる見込み。同社では自動車部門の純流動性資金は、2021年には緩やかに増加すると見ており、投資利益率(ROI)は、最低限必要な利益率よりも明確に高くなると予想している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。