フォルクスワーゲン グループは3月2日(ドイツ・ウォルフスブルグ、2月26日発表)、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックが続いているにもかかわらず、2020会計年度において予想を上回る業績を達成したと発表した。同時に、重要な戦略的決定により、テクノロジー企業への変革を加速させたと伝えた。
好業績の背景について同社では、グループの効果的な危機管理、最大の単一市場である中国の急速な回復、堅調だったプレミアムセグメントおよびファイナンシャル サービス事業が好業績の鍵となり、パンデミックの影響を最小限に留めたとしている。売上高(2,229億ユーロ:–11.8%)の動向は、販売台数(–16.4%)の動向を上回った。
ディーゼル問題に起因する特別項目計上前営業利益は、パンデミックにもかかわらず、106億ユーロ(–45.0%)の堅調な水準を達成。特別項目計上前営業利益率は4.8%(2019年:7.6%)だった。自動車部門では、堅牢なビジネスモデルと厳格な運転資本管理により、64億ユーロ(同:–41.3%)の堅調なネットキャッシュフローを達成。自動車部門の純流動性資産は25.9%上昇し、268億ユーロと順調に増加している。
取締役会および監査役会は、前年同様、普通株式1株あたり4.80ユーロ、優先株式1株あたり4.86ユーロの配当を提案。その場合の配当性向は、戦略的目標レベルの30%に近い29.0%となる。普通株式1株当たり利益は16.60ユーロ(同:26.60ユーロ)で、優先株式1株当たり利益は16.66ユーロ(同:26.66ユーロ)だった。
フォルクスワーゲングループ財務およびIT担当取締役のフランク・ヴィッター氏は、次のように述べている。
「Covid-19は、私たち全員に前例のない挑戦をもたらしています。昨年、フォルクスワーゲングループは、パンデミックが事業に及ぼす影響を最小限に留めることに成功すると同時に、変革のための重要な戦略的基盤を構築することに成功しました。今回の財務結果は当初の予想よりもはるかに優れており、弊社が危機においても達成できることを示しています。私たちは、大幅に改善した下半期の勢いを今年も継続することを目指しており、固定費および調達コストの削減プログラムにより、長期的な業績はさらに改善されるでしょう。そのため、私たちはグループの営業利益率に関しては、目標範囲の上限を達成することを目指しています。」
2020年、フォルクスワーゲングループは920万台(同:-16.4%)の車両を販売し、世界の乗用車市場におけるシェアは13%とわずかに増加(同:12.9%)。グループは、世界的な電動化攻勢の一環として、前年の3倍となる 42万2,000台の電動車を顧客の手に届けた。売上高は 2,229億ユーロ。前年比11.8%の減少については同社は、主にCovid-19パンデミックがもたらした販売台数の減少によるものだとしている。にもかかわらず、特別項目計上前営業利益は106億ユーロ(同:193億ユーロ)で、特別項目計上前営業利益率は4.8%(同:7.6%)であった。販売台数の減少に加えて、為替レート変動が影響を及ぼし、リストラクチャリング対策のための5億ユーロの一時費用も利益の減少に影響を及ぼした。プラスの要因は、固定費の低下だという。フォルクスワーゲン グループの税引前利益は117億ユーロ(同:184億ユーロ)。税引前営業利益率は5.2%(同:7.3%)に低下。中国の合弁事業に起因する営業利益は、36億ユーロ(同:44億ユーロ)となった。
自動車部門のネットキャッシュフローは64億ユーロ(同:108億ユーロ)で、明らかにプラスとなった。前年比での減少は、主に利益の減少とディーゼル問題に起因する現金支出の増加によるもの。ネットキャッシュフローに関しては、優れた在庫管理が特にプラスの要因になったという。ハイブリッド債の発行が成功したこともあり、純流動性資産は268億ユーロ(同:213億ユーロ)に改善した。自動車部門の研究開発費の絶対額は減少したものの、パンデミックに伴う売上高の大幅な減少により、R&D率(売上高に対する研究開発費の比率)は7.6%(同:6.7%)となり、前年よりも増加。設備投資の大幅な減少の結果として、自動車部門の売上高に対する設備投資の比率は6.1%(同:6.6%)に低下した。
◾️見通し
フォルクスワーゲングループでは、(Covid-19パンデミックの感染拡大に歯止めをかけることに成功することを前提として)厳しい市場環境が続く中で、2021年の販売台数は前年よりも大幅に増加すると予測している。経済状況、競争の激化、不安定な資源および外国為替市場、サプライチェーンの確保、より厳しい排ガス要件などが課題となる。
また2021年のフォルクスワーゲングループおよび乗用車部門の売上高については、前年を大幅に上回ると予想している。グループおよび乗用車部門の営業利益に関して、2021年の営業利益率は5.0〜6.5%になると予測。商用車部門については、売上高が前年比で大幅に増加する中で、リストラクチャリング対策費を除く営業利益率は4.0〜5.5%になると見込む。パワーエンジニアリング事業分野については、売上高が前年に比べて大幅に減少し、損益分岐点に達すると予測している。
ファイナンシャル サービス部門に関しては、売上高が前年度を大幅に上回り、業績は前年度並みになる見通し。
自動車部門では、2021年の売上高に対する研究開発費の比率は約7%になり、売上高に対する設備投資の比率が約6%になると予想。ディーゼル問題に起因する現金支出は、2021年もほぼ同じレベルになる見通しで、M&Aによる影響は大幅に増加すると予想している。したがって、ネットキャッシュフローは前年並みになる見込み。同社では自動車部門の純流動性資金は、2021年には緩やかに増加すると見ており、投資利益率(ROI)は、最低限必要な利益率よりも明確に高くなると予想している。