そんな同社は今から2年前の2016年、今日に至る自動車メーカーのデファクトスタンダードを打ち立てた自らの歴史のすべてをかなぐり捨て、新たな「モビリティサービスの形」を模索し続けている。
その想いについて2017年5月に先代のマーク・フィールズ氏を押し出して新CEOに就任したジェームズ・ハケット氏は、「地上に於けるすべての交通システムの在り方を全面的に再定義する時代が到来した」と宣言。
翌2018年の春にモビリティ事業全域の再編計画を発表。これまでの「自動車製造」と「販売」という範疇から突き抜ける新たな事業として、今日考えられる地上での移動手段の全域を「フォードブランド」でカバーすることを本気で目指している。
それは移動時に利用されるハードウエアに始まり、インフラストラクチャーを含むプラットフォームサービス全域、そして移動そのものをいかにビジネスマーケティングするかに至る領域まで一気通貫させるという壮大なプランであり、今回のSpin買収もこの流れの一環である。
そしてSpin買収は、利用者が「より簡単に」「より迅速に」「より安価」に移動することを手助けすることにある。
近年、各国・地域毎にラストマイルを移動するための「乗り物」の種別は多種多彩であるから、利用で供されるマイクロモビリティは、地域に合致した「機敏」で「適応性」の高い乗り物でないと生き残ることはできない。
特に日本に比べ、地域の公共交通手段が圧倒的に未整備な米国では、西海岸一帯で活発に利用されている電動キックスクーターが、手頃なシェアリングコストのおかげで都市活動者に最も適したソリューションとなっている。