独ZFと手を組むオーストリアの高性能センサー企業ams、自動運転向け新型LiDARを紹介
オーストリアの高性能センサーサプライヤー、amsのトーマス・ストックマイヤーCOO(最高執行責任者)は5月21日、日本法人のamsジャパン本社(東京都港区)で開いた記者説明会で、自動運転車向けライダー(LiDAR)・システム分野に本格的に参入し、自動車事業を大幅に拡充する方針を明らかにした。目玉となる戦略が独大手自動車部品メーカーのZFグループとの提携だ。これにより日本、欧州をはじめとした世界の主要自動車メーカーへ売り込みを図る考え。
amsが展開するライダーは自動運転分野向けで初となるソリッドステート・ライダー・システム。amsジャパンは同日、このライダー・システム技術を促進するため、ams、ライダーセンサー技術の専門企業である独Ibeoオートモーティブ・システムズ、ZFフリードリヒスハーフェンの3社が提携することで合意したと発表した。
ストックマイヤーCOOは同ライダー・システムについて、「小型で、部品点数が少ないの特徴だ」とし、コスト競争でも優位に立てるとの見解を示した。3社で2021年までに、この技術を迅速かつ安全に導入できるよう、共同で研究開発を進める。
センサーソリューションを提供するamsは東京を含む世界各地に18カ所のデザインセンターを持っており、従業員数は約9000千人(うちエンジニア1100人)、売上高は16億2700万米ドル(2018年)。これまでに取得・出願した特許数は約3000件にのぼる。
日本法人の岩本桂一カントリーマネージャーによると、これまでamsは通信、民生、コンピューティング向けなどの比率が高く製品売上の約7割を占め、車載用は25%程度に過ぎなかった。日本でも中心の供給先はスマートホンなどの通信分野となっていた。
だが、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の普及、拡大により、車載分野向けの供給が急速に増加しているという。現在、平均的な車両一台当たりのセンサー使用量は100個に達しており、さらに近い将来200個へと倍増することが見込まれている。これを踏まえ、amsは世界的な規模で、車載分野へ注力することになった。
すでに車載向け分野では緊急ブレーキ支援用のライダー向け半導体や投影照明用アプリケーション、ドライバー・搭乗者の識別3Dスキャンアプリケーション、パワートレイン・車載システム用先進センシングステムなど多彩なセンサー・テクノロジーを実用化し、展開する。
これに加えて、新タイプの車載向けソリッドステート・ライダー・システムをZFなどの3社と共同開発し、OEMメーカーへ提供することを目指す。ストックマイヤーCOOはこうした中で、世界的な自動車メーカーが多数存在する「日本はたいへん重要な市場だ」と強調した。(佃モビリティ総研・松下 次男)