ステランティスジャパン(打越晋社長)は9月10日、フィアットの新型電気自動車(EV)「600e」のプレス発表会を東京・二子玉川ライズのスタジオ&ホールで開いた。600eは「セイチェントイー」と読み、同日から発売した。(佃モビリティ総研・松下次男)
発表会の冒頭、打越社長はステランティスジャパンンの戦略に触れ、ステランティス傘下の7つのブランド全てでバッテリーEVの拡充を継続する一方で、市場動向に合わせてガソリン車を含めたマルチパスウエイ戦略を積極的に展開すると表明した。
打越社長はまず傘下の全ブランドで電動化車両がラインアップされるとともに、フィアット・ブランドに続き、ジープ、プジョー、シトロエンアルファロメオなどのブランドで立て続けに新型車を投入する計画を紹介。
そのうえで、BEVのみならず、プラグインハイブリッド(PHV)、マイルドハイブリッド、ガソリンエンジン車などの全てのパワートレインを展開する方針を語った。
これにより、ステランティスが元々持っていた「多様性のあるモデル」に加え、ユーザーのライフスタイル、カースタイルに即した形でパワートレインを選んでもらえる体制が整うと強調。「選択できる喜びをより強化」し、新しい時代に向け、ステランティスの強みになると話した。
このため600シリーズについてもマイルドハイブリッドの「セイチェントHV」を来年春ごろ日本に投入する計画だ。
今回、日本に導入することになった600eは昨年夏、欧州で発表された新型EVで、すでに国内でも8月1日にティザーサイトを公開済み。
新型EVはステランティスジャパン傘下のフィアット・ブランドのラインナップに1年半ぶりに加わる新モデルで、アイコニックなイタリアンデザインに快適性、革新性、テクノロジーを詰め込んだ100%BEVのコンパクトSUVだ。
最大の特徴は、1955年に発売した初代「600」や「500e」からインスピレーションを得たデザインを随所に散りばめた点であり、フィアット・ブランドとして初めて4つの運転支援機能を装備した。
来日したフィアット・ブランドのフランソワ・ルボワンヌ・チーフデザイナーは「すべて丸みを帯びたスタイルが特徴だ」と述べ、独自性のあるデザインを強調した。
ステランティスジャパンの熊崎陽子氏によると、フィアット・ブランドユーザーの50%以上が女性で、2台以上保有している人も60%となっており、約80%以上の人が「かわいい」と表現されたスタイルに満足しているという。
このため、600eについても「かわいい顔して、しっかりしたモノ」というキャッチコピーで展開し、ヤングファミリー層がメインのターゲットとなる。プレス発表会を二子玉川で開いたのも、ヤングファミリーのイメージと重なるためだ。
エクステリアは、丸みのあるフォルムにLEDライトを装備。さらにグロスブラックのアクセントを随所に採用して、18インチダイヤモンドカットアルミホイールとともに精悍さを際立たせている。
インテリアはアイボリーカラーを基調とし、丸形のメータークラスターや2スポークステアリングホイールなど、初代600からのインスピレーションを散りばめている。シートにはアイボリーカラーのエコレザーシートを採用し、フィアットロゴのエンボスおよびターコイズブルーのステッチをアクセントとして加えている。
パワートレインは、54キロワットアワーのバッテリーを装備し、一充電航続距離(WLTC)は493キロメートルと従来から約2割航続距離を高めた。
運転支援機能では次の4つをフィアット・ブランドとして初めて採用。一つがレーンポジションアシスト で、任意の位置を設定しステアリングを握ることで、その位置を維持するレーンポジションアシスト機能を搭載。運転時のステアリングをサポートする。
このほか、運転席にシートマッサージ機能を搭載し、ドライバーの疲労を軽減するアクティブランバーサポートやハンズフリーパワーリフトゲート、キーレスエントリーを初めて採用した。
ボディカラーはフィアット・ブランドとして新色の「サンセット オレンジ」および「スカイ ブルー」、人気の「ホワイト」の3色を用意。
車両サイズは全長4200ミリメートル、全幅1780ミリメートル、全高1595ミリメートル。ホイールベースは2560ミリメートルの長さ。ポーランドのティヒ工場で生産される。車両価格(税込み)は585万円で、65万円の助成金がある。
また、ステランティスジャパンは600e発売を記念し、アニメ「ルパン三世」とのコラボレーション・キャンペーンを実施する。
ルパン三世のアニメ映画の中で、フィアットの代表モデルである「500」が愛車としてたびたび登場することから、ルパン三世がモチーフのアクセサリー7点を装備した特別仕様車を9月10日から発売したほか、オリジナルの短編小説やイラストなどを特設サイト内で公表する予定だ。