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2024年5月4日【ESG】

FCELとトヨタ、米ロングビーチ港で初の水素発電所を稼働

坂上 賢治

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Tri-genは、再生可能電力、再生可能水素、使用可能な水を生成する

 

定置型燃料電池及び電気分解プラットフォームに取り組むフューエルセル・エナジー( FCEL / FuelCell Energy, Inc. )と 北米トヨタ( TMNA / Toyota Motor North America, Inc. )は5月2日、カリフォルニア州ロングビーチ港にある完成車の物流拠点( TLS /トヨタロジスティクスサービス )に於いて、バイオマスからグリーン水素・電気・水を生み出す世界最大級の燃料電池施設の「Tri-Gen(トライジェン / Tri-Gen命名の由来は後述の通り )」を立ち上げた。( 坂上 賢治 )

 

より具体的にTri-Genは、2.3メガワットの発電が可能な燃料電池( FC )発電所及び水素ステーションが併設されており、畜産場の家畜排泄物や余剰食品等の廃棄物系バイオマスから水素を取り出し、燃料電池を用いて発電することで再生可能エネルギーから水素・電気・水の3つ( Tri )の物質を生成( Generate )する。

 

同生成によりFCELは、環境に配慮した分散型ベースロードエネルギープラットフォームソリューションの開発・提供に一定の目処を付け、100%再生可能エネルギー由来のカーボンニュートラル( CN )な港湾オペレーションを本格始動させる構えだ。

 

その一方でTMNAは、Tri-Genの拠点竣工前の2023年の9月からFCELと生成される水素・電気・水を20年間購入する契約を締結していることから、同一港内にあり、年間で約20万台の車両を受け入れるTLSでの車両処理および配送センター業務などで、生成される再生エネルギー100%電力を利用する事業活動のモデル化に乗り出す。

 

トヨタは世界初の港湾車両処理施設で100%再生可能電力を活用する

 

こうした取り組みにTMNAで、持続可能性および規制担当グループの任にあるトム・ストリッカー副社長は、「当社とFCELが事前に定めた目標は、ここロングビーチ港のTLSの車両処理施設に於いて、持続可能なソリューションを創り出すことにあります。

 

それは、水素ベースのエネルギーが一般企業へ大きな利益をもたらし、小型車両および大型車両のゼロエミッション輸送を実現し、地域社会の大気質の改善もサポートし、水の使用量すら削減し、即時および長期的な利益を社会にもたらすことができることを実証しています」と述べた。

 

大型燃料電池電気自動車の燃料に生成した再生可能水素を利活用する

 

これを受けてFCELのジェイソン・フューCEO兼社長は、 「トヨタのような先見の明のある顧客が自身の事業を脱炭素化し、我々から提供される水素が生まれたソリューションを活用できるよう、私たちは今後も、その役割を果たしていきます。その結果、我々は地域社会に清浄な空気を残し、送電網や水道の負担を軽減することができます。

 

次にTri-genは、トヨタの次期小型燃料電池電気自動車 ( FCEV ) ミライの燃料供給ニーズに合わせて最大1,200 kg/日の水素を生成・提供すると同時に、隣接する大型水素補給ステーションにも水素を供給することで、TLSに於けるゼロエミッショントラックによる輸送も支えます。

 

更に水素生成による副産物として1 日あたり最大1,400ガロンの水を生成することができ、それは顧客への納車前に港に入港するTLSの車両の洗車作業に再利用されます。これにより、当該地域の水供給が年間約50万ガロン削減されます。

 

併せて当拠点は2.3メガワットの再生可能電力を生成し、その余剰電力の一部はTLSを介して港湾運営のためにも利用されます。加えて余剰となる電力についてはカリフォルニアバイオエネルギー市場調整関税( BioMAT )プログラムに基づき、地元電力会社の南カリフォルニアエジソンに送られ、手頃な価格のベースロード発電として役立つことになります。

 

Tri-genはロングビーチ港や地域社会が目指す炭素削減目標節制にも貢献する

 

このような地域をも包括した環境の恩恵について、ポート・オブ・ロングビーチのマリオ・コルデロCEOは、「Tri-genは、ロングビーチ港に於けるTLS事業をサポートすることで送電網からのCO₂排出量を年間9,000トン以上削減できます。これはトヨタロジスティクスサービスの二酸化炭素削減目標の実現と共にロングビーチ港が目指す炭素削減目標節制にも貢献するものです。

 

今や、このFCELとTLSの協力関係のおかげでロングビーチ港に於ける水素時代の幕開けが間近に迫っています。今後はTri-genシステムによって生み出されるグリーンエネルギーにより、世界初のゼロエミッション港になるというポート・オブ・ロングビーチの目標も達成されることでしょう。

 

Trigen は、人と環境の両方に有害な6トンを超えるNOx排出を回避することにも役立ちます。港湾業務で水素燃料電池の8トラックを使用すると、ディーゼル消費量を年間420,000ガロン以上削減できる可能性があるからです」と語った。

 

最後にロングビーチ市長のレックス・リチャードソン氏は、「FCELとトヨタの共同努力は技術革新を実現し、ロングビーチを再生可能エネルギーソリューションに於ける世界的リーダーに押し上げることになります。

 

この革新的な取り組みは、グリーンイニシアチブの先駆者としての当市の地位を確固たるものにし、私たちの地域社会並びに市民にとって、よりクリーンで持続可能な未来へ貢献する私達の姿勢を表しています」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。