Tri-genは、再生可能電力、再生可能水素、使用可能な水を生成する
定置型燃料電池及び電気分解プラットフォームに取り組むフューエルセル・エナジー( FCEL / FuelCell Energy, Inc. )と 北米トヨタ( TMNA / Toyota Motor North America, Inc. )は5月2日、カリフォルニア州ロングビーチ港にある完成車の物流拠点( TLS /トヨタロジスティクスサービス )に於いて、バイオマスからグリーン水素・電気・水を生み出す世界最大級の燃料電池施設の「Tri-Gen(トライジェン / Tri-Gen命名の由来は後述の通り )」を立ち上げた。( 坂上 賢治 )
より具体的にTri-Genは、2.3メガワットの発電が可能な燃料電池( FC )発電所及び水素ステーションが併設されており、畜産場の家畜排泄物や余剰食品等の廃棄物系バイオマスから水素を取り出し、燃料電池を用いて発電することで再生可能エネルギーから水素・電気・水の3つ( Tri )の物質を生成( Generate )する。
同生成によりFCELは、環境に配慮した分散型ベースロードエネルギープラットフォームソリューションの開発・提供に一定の目処を付け、100%再生可能エネルギー由来のカーボンニュートラル( CN )な港湾オペレーションを本格始動させる構えだ。
その一方でTMNAは、Tri-Genの拠点竣工前の2023年の9月からFCELと生成される水素・電気・水を20年間購入する契約を締結していることから、同一港内にあり、年間で約20万台の車両を受け入れるTLSでの車両処理および配送センター業務などで、生成される再生エネルギー100%電力を利用する事業活動のモデル化に乗り出す。
トヨタは世界初の港湾車両処理施設で100%再生可能電力を活用する
こうした取り組みにTMNAで、持続可能性および規制担当グループの任にあるトム・ストリッカー副社長は、「当社とFCELが事前に定めた目標は、ここロングビーチ港のTLSの車両処理施設に於いて、持続可能なソリューションを創り出すことにあります。
今日に於いても世界で希に見る再生エネルギー施設であるTri-Genは、水素をベースとした柔軟な技術を活かして、当社の事業活動から二酸化炭素の排出量を大きく排除するのみならず、地域全体の二酸化炭素排出量削減と共に天然資源に係る負担も大きく削減することができることを指し示しています。
またTri-genによってTLSは、100%生成された再生可能エネルギーで稼働するトヨタ初というだけではなく、世界でも初となる港湾車両処理施設となりました。FCELの電気化学プロセスを使用した革新的な燃料電池技術は、燃焼活動もなく実質的に大気汚染物質を排出せずに高効率にバイオマスから電気、水素、使用可能な水を生成します。
それは、水素ベースのエネルギーが一般企業へ大きな利益をもたらし、小型車両および大型車両のゼロエミッション輸送を実現し、地域社会の大気質の改善もサポートし、水の使用量すら削減し、即時および長期的な利益を社会にもたらすことができることを実証しています」と述べた。
大型燃料電池電気自動車の燃料に生成した再生可能水素を利活用する
これを受けてFCELのジェイソン・フューCEO兼社長は、 「トヨタのような先見の明のある顧客が自身の事業を脱炭素化し、我々から提供される水素が生まれたソリューションを活用できるよう、私たちは今後も、その役割を果たしていきます。その結果、我々は地域社会に清浄な空気を残し、送電網や水道の負担を軽減することができます。
次にTri-genは、トヨタの次期小型燃料電池電気自動車 ( FCEV ) ミライの燃料供給ニーズに合わせて最大1,200 kg/日の水素を生成・提供すると同時に、隣接する大型水素補給ステーションにも水素を供給することで、TLSに於けるゼロエミッショントラックによる輸送も支えます。
更に水素生成による副産物として1 日あたり最大1,400ガロンの水を生成することができ、それは顧客への納車前に港に入港するTLSの車両の洗車作業に再利用されます。これにより、当該地域の水供給が年間約50万ガロン削減されます。
併せて当拠点は2.3メガワットの再生可能電力を生成し、その余剰電力の一部はTLSを介して港湾運営のためにも利用されます。加えて余剰となる電力についてはカリフォルニアバイオエネルギー市場調整関税( BioMAT )プログラムに基づき、地元電力会社の南カリフォルニアエジソンに送られ、手頃な価格のベースロード発電として役立つことになります。
Tri-genはロングビーチ港や地域社会が目指す炭素削減目標節制にも貢献する
このような地域をも包括した環境の恩恵について、ポート・オブ・ロングビーチのマリオ・コルデロCEOは、「Tri-genは、ロングビーチ港に於けるTLS事業をサポートすることで送電網からのCO₂排出量を年間9,000トン以上削減できます。これはトヨタロジスティクスサービスの二酸化炭素削減目標の実現と共にロングビーチ港が目指す炭素削減目標節制にも貢献するものです。
今や、このFCELとTLSの協力関係のおかげでロングビーチ港に於ける水素時代の幕開けが間近に迫っています。今後はTri-genシステムによって生み出されるグリーンエネルギーにより、世界初のゼロエミッション港になるというポート・オブ・ロングビーチの目標も達成されることでしょう。
Trigen は、人と環境の両方に有害な6トンを超えるNOx排出を回避することにも役立ちます。港湾業務で水素燃料電池の8トラックを使用すると、ディーゼル消費量を年間420,000ガロン以上削減できる可能性があるからです」と語った。
最後にロングビーチ市長のレックス・リチャードソン氏は、「FCELとトヨタの共同努力は技術革新を実現し、ロングビーチを再生可能エネルギーソリューションに於ける世界的リーダーに押し上げることになります。
この革新的な取り組みは、グリーンイニシアチブの先駆者としての当市の地位を確固たるものにし、私たちの地域社会並びに市民にとって、よりクリーンで持続可能な未来へ貢献する私達の姿勢を表しています」と結んでいる。