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2020年12月7日【ESG】

水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)が設立

松下次男

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トヨタ自動車など9社が推進役となり発足、会員数88社でスタート

 

 トヨタ自動車、三井住友フィナンシャルグループなどが参画して水素の社会実装取り組みを推進する水素バリューチェーン推進協議会(略称・JH2A)が発足した。12月7日に東京都内で設立記念イベントを開き、設立趣旨を紹介するとともに、2021年2月をめどに水素普及に向けた提言を政府に行う考えを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

 発足したJH2Aは、トヨタ自動車の内山田竹志会長、三井フィナンシャルグループの國部毅会長、岩谷産業の牧野明次会長兼CEOの3氏が共同代表に就任。会員数は88社でスタートした。当面、任意団体で展開するが、将来的に一般社団法人化を目指す。

 

 JH2Aは岩谷産業、ENEOS、川崎重工業、関西電力、神戸製鋼所、東芝、トヨタ、三井住友フィナンシャルグループ、三井物産の9社が中心となり、設立準備を進めていたものだ。

(岩谷産業・公式チャンネルから引用)

 

水素の社会実装に向けた革新的な取り組みを推進

 

 内山田会長はJH2A設立記念イベントで「トヨタは第2世代となる燃料電池車(FCV)の新型ミライ(MIRAI)を今月から発売する。FCVならではの魅力や水素社会の可能性をミライを通じて感じ取ってほしい」の述べうえで、本格的に水素を社会実装するためには、社会実装をはらんでいる要素を取り除く必要性を強く指摘した。

 

 

そのために「これまでの取り組みの延長線を越えた不連続のイノベーションが必要だ」と強調するとともに、諸外国を比べて高い障壁となっている社会実装への規制緩和を求めた。このためJH2Aを通じ、水素の生産、物流、利用の様々なステークホルダーと議論を重ねるほか、関係諸団体とも連携して政府への提言や啓発活動など行う考えを示した。

 

乗用車から商用車、鉄道、船舶などへ水素利用を広げ、需要を喚起

 

 水素の社会実装をめぐっては、わが国がFCV投入で先行するものの、欧州グリーンディールを提唱するEU(欧州連合)や中国など世界各国で水素エネルギー利用の動きが加速している。
2020年7月にはEUが水素エネルギー戦略を公表したほか、ドイツも国家戦略として水素エネルギー戦略を決定。脱炭素社会推進の一つとして水素社会実現に向けた取り組みが広がっている。

 

 

これに対し、日本は2017年に水素基本戦略を策定し、水素・燃料電池戦略ロードマップに基づいて技術開発を進めているが、社会実装が着実に進行しているとはいいがたく、まだまだ水素社会先行の知見が生かせていないのが実態だ。

 

 

一方で、菅内閣は「2050年にカーボンニュートラルを目指す」ことを打ち出しており、政府としても脱炭素社会推進の取り組みが不可欠。このため、来賓として挨拶した梶山弘志経産相もJH2Aの活動をサポートするとともに、民間の取り組みとして期待感を示した。

 

 

イノベーションが不可欠であるため多くの金融機関が参画、資金供給の仕組みをつくる

 

 JH2Aが目指す活動内容は、社会実装プロジェクトの提案・調整、ファンドの創設、需要創出・規制緩和の政策提言、国際的な活動、情報収集・分析・発信など。
また、浮かんでいる具体的なプロジェクト案では、地方自治体と連携した特区制度の活用など地産地消型プロジェクト、海外での水素製造、輸送、貯蔵の課題解決のサプライチェーン型プロジェクト、商用車、鉄道・船舶、化学・鉄鋼などへの需要拡大型プロジェクトを掲げた。

(川崎重工の公式サイトから引用)

 

 今回のJH2Aには三井住友フィナンシャルグループなど多数の金融機関の参加が目立つが、これについて國部会長は「金融機関の多くが脱炭素化社会の実現を経営方針に掲げている。加えて、脱炭素化には新たなイノベーションが不可欠であり、活動資金が必要となる。このための活動をサポートしていきたい」と述べた。

 

牧野会長はインフラとなる水素ステーション設置が拡大しない要因に「要件をクリアーするために、設備に希少な金属を使う必要がある」など日本特有の問題を指摘したうえで、「ガソリンスタンドに併設できるよう条件を緩和してほしい」と規制緩和を求めた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。