生産停止が国内工場の約6割(グローバルで約4割)に及ぶ
日野自動車は8月22日、オンラインで記者会見を開き、エンジン認証不正問題が小型トラックでも追加、判明したと公表した。国土交通省の立ち入り検査で判ったもので、小木曾聡社長はこれにより車両の生産、出荷停止が国内工場の「約6割相当」に拡大する見通しを示した。(佃モビリティ総研・松下次男)
新たに追加のエンジン認証の不正が判明したのは小型エンジン「N04C(HC―SCR)/2019年」モデル。これを受けて、日野は同エンジンを搭載する小型トラック「日野デュトロ(トヨタ・ダイナ向け含む)」の出荷を同日付から停止した。
不正は、排ガス認証申請に際し、劣化耐久試験で各測定点の測定を2回以上行う必要があるところを1回のみの回数不足測定点があったことや劣化補正値の算出でそれらの測定データを使う必要があるところを、各測定点で1回の測定データで算出していたというもの。
判明は、8月2日の特別調査委員会の調査報告が公表されたのを踏まえて、翌8月3日から国交省が立ち入り検査を実施して判った。
これを受けて小木曾社長は「追加で不正が判明したことは深刻で弁解の余地がない。再びこのような多大な迷惑をかけたことを大変申し訳ない」と陳謝した。
国交省の立ち入り検査で判明した不正対象車種は64万台へ拡大
今回、追加でエンジン認証問題の不正が判明したことについて日野は各測定値点で2回以上行うことの認識、理解が欠けていたことや確認不足が掲げ、不正を行っているとの認識はなかったとした。
ただし、メーカーとして「知らなかった、で許されるものではない」と反省する。8月2日の特別調査委員会の調査報告に含まれなかったことについては、日野からの「提案がなかった」ことから漏れたと述べた。
技術検証からは、今回の小型エンジンに関する排出ガスの規制値超過の可能性は認められなかったとしている。
新たに出荷停止となった車両は、日野デュトロの2019年5月発売以降の国内市場向けモデルが対象。主として、「積載量2トンクラス」が対象とし、トヨタ製GDエンジンを搭載する積載量1・5トンクラスは対象外とした。対象小型トラックの累計登録台数は約7万7千台。
今回のエンジン認証申請の追加不正により、日野自動車の出荷停止は国内工場の生産分で8月2日時点の約3割から約6割へと影響が拡大することを明らかにした。
主な工場でいえば、大中型トラックを生産する古河工場(茨城県古河市)で約75%の停止、小型トラックを生産する羽村工場(東京都羽村市)で半減の生産停止という。
過去の小型トラックへも不正が広がる可能性も燻る
エンジン認証不正の対象台数も3月4日公表の12万台、8月2日公表の57万台から、今回の追加不正で64万台に広がった。
グローバルでみても出荷停止は16万台のうちの約4割に及ぶとし、業績へのさらなる影響は避けられないだろう。
追加の不正が判明したエンジン認証試験の現状については、昨年末から新たな態勢で取り組んでいることから「法規通りの検査が行われている」ことを確認済みとした。
しかし、特別超委員会の調査報告で指摘された「風土改革」などの体質改善に引き続き取り組んでいく必要性を小木曾社長は強調した。
また、今回追加判明した小型トラックの認証不正は2019年モデルについてであり、検査員の理解不足から「それ以前のモデルについて同様の可能性がある」として、独自に再調査する考えを示した。