みちのりホールディングス(以下「みちのりHD」)、会津乗合自動車(以下「会津バス」)、デンソー(以下「デンソー」)、ABB日本ベーレー(以下「ABBベーレー」)、ダイヘン(以下「ダイヘン」)、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下「デロイト トーマツ」)は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が2020年度に実施する「商用車を活用した物流MaaS(MaaS:Mobility as a Service)の実現に向けた研究開発・実証事業」を受注し、2020年10月から実証事業を開始した。デンソーが11月10日発表した。
本実証事業では会津バスが2018年12月から運行しているBYD製のEVバス3台のデータを収集し、デンソーがAI技術を活用して電費*1の分析や予測アルゴリズムの検証を行うとともに、効率的にEVバスの充電を行うための充電管理技術をダイヘンのSynergyLinkを搭載した急速充電器にて検証する。また、みちのりHDのグループ各社の営業所単位でのEVバス導入の可能性を検討する。
*1) 電費とは、電気自動車における単位走行距離当たりの消費電力、または単位電力量当たりの走行距離のことを指す。
【実証実験の概要】
1.EVバス車両からのデータの収集と電費予測の検証
会津バスが運行しているEVバスからデータの収集を行う。EVバスの電力消費量、運行距離などの車両データに加え、車載カメラで計測する乗車人数、バスロケーションシステムからの運航遅延情報、天候や積雪状況などの外部環境データを収集。収集したデータをデンソーがAI技術を活用して分析し、時間帯ごとの利用者数や天気などによる変動を織り込んだ電費予測のアルゴリズムを検証する。EVバスの走行可能距離の管理精度を高め、将来的なEVバス導入時の基礎データに役立てていく。
2.充電管理技術の実証
本実証ではABB日本ベーレーがABB Ability™ Energy Management suiteのソリューションOPTIMAX®を用いて、運行計画、電力価格、系統容量等のデータを取り込み最適化した充電スケジュールを生成する。実証ではスケジュールに沿って充電器からEVバスに充電を行うため、ダイヘンが開発したSynergyLink*2の技術を活用し、ダイヘンの十三事業所内で検証を行う。これらを通じて、EVバスの大規模導入時においても適切なタイミングでの充電や充電量のコントロール、また運行管理を実現する技術の確立を目指す。
*2) SynergyLinkとは、高機能な管理制御装置なしに、機器やシステム同士が協調(Synergy)して繋がり(Link)、最適な状態に導くことができる自律分散型の新しい制御技術。
3.営業所単位でのEVバス導入検討
本格的なEVバスの活用を見据え、本実証から得られた知見を生かし、みちのりHDのグループ各社の営業所を対象に、EVバス導入の可能性を検討する。
【将来的な展開】
EVバスのエネルギーマネジメントシステムを構築し、エネルギー使用量のモニタリング、それに応じた電気調達の調整、運行計画立案などを一体的に実施することで、導入・運用コストが高いEVバスを合理的な価格で導入・運用することを目指す。
また、バスの運行形態をEVバスに適した形に変更することで、必要となる車載電池容量を抑えたEVバス開発の実現可能性や車載電池からの電力融通について検討を行う。これらの検討を通して得られたノウハウを生かし、EVバスの導入を促進することで、持続可能な社会の実現に貢献していくという。