ダイハツ工業(以下、ダイハツ)は11月1日、小さなクルマに適したパワーユニットとしてシリーズハイブリッド(SHV)の〝e-SMART HYBRID(イー・スマート・ハイブリッド)〟を開発。これをコンパクトSUVの「ロッキー」に搭載し全国一斉発売した。なおトヨタ自動車からも同日に同じ動力システムを搭載した「ライズ」を発表した。(坂上 賢治)
両社が今回1.2リッタークラスの車両にSHV搭載車を送り出した背景には、ダイハツが長年〝1mm、1g、1円、1秒〟に拘り〝良品廉価〟のクルマ造りに取り組んできた背景がある。
そもそも車両価格200万円前後の自動車購入層の多くは、街乗り用途が主な活用範囲となっているため、トヨタ自動車が上位車種で展開しているストロングハイブリッドでは、複雑な遊星ギヤなどを用いた機構であるゆえにパワーユニットの製造コストが嵩むだけでなく、ユニット自体の重量も重くなってしまう。そこでロッキーにSHVを選択した。
選択・搭載したSHVは、発電用ユニットに最高熱効率40%を実現した3気筒1.2リッターエンジンを活用。これにトランスアクスルへ発電用と駆動用の2つのモーターを並列配置して、軽量かつコンパクトな車両パッケージを目指した。
走行用の搭載バッテリーもエネルギー密度が高い容量4.3Ahのリチウムイオン電池を採用。先の街乗り用途を踏まえ中低速域の使い勝手に注力した。またバッテリーはリアシート下に配置し、ゆとりのある室内空間と荷室空間を両立させた。
この結果、新型ロッキーのエンジンラインナップは、今発表の1.2リッターSHV(最高出力60kW<82PS>/5600rpm、最大トルク105Nm<10.7kgfm>/3200-5200rpm + モーター出力78kW<106PS>/4372-6329rpm、最大トルク170Nm<17.3kgfm>/0-4372rpm)に加え、1.0リッターターボ(最高出力72kW<98PS>/6000rpm、最大トルク140Nm<14.3kgfm>/2400-4000rpm)と、1.2リッター自然吸気(最高出力64kW<M87PS>/6000rpm、最大トルク113Nm<11.5kgfm>/4500rpm)の3ラインが用意される。
これによりSHVでは、モーター駆動の強みである低中速域のピックアップの鋭さを街乗り走行に最適化。エンジンを発電専用にする100%モーター駆動のシリーズハイブリット方式を完成させた。この結果、エンジンを発電と走行の両方に使用するパラレル方式とは異なりシンプルでコンパクトな構造に仕上げた。
燃費性能については、SHV専用に最適化した新エンジンと発電・充電性能の最適化で28.0km/Lを実現。2030年度燃費基準を100%達成し、重量税は免税、環境性能割は非課税とした。価格面ではハイブリッドモデルの基本グレードであれば211万6000円と220万円を下回る最廉価を実現している。これまでSHVモデルは、日産車(イー・パワー)が独占していたが、トヨタ陣営の「ロッキー」&「ライズ」の登場を契機に新たな競争時代が始まりそうだ。
具体的な車両選択の場面では、先進感や環境や燃費を求めるユーザーにはSHVモデルを。遠出やアウトドアでの走りに拘るアクティブなユーザーには1.0リッターターボを。街乗り中心で車両購入価格を重視するユーザーには1.2リッター自然吸気モデルを選択出来るようにした。ちなみに命名した「e-SMART HYBRID」の意味は、電気の〝e〟に、賢い・機敏なという意味を込めたた〝SMART〟を組み合わせた。
ダイハツでは「カーボンニュートラル社会の実現に向け、小さなクルマの電動化と普及を推し進めていく。そのためには良品廉価である事、最小単位を極める事、先進技術をみんなのものにするダイハツのクルマ造りの指針〝DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)〟を守り、ダイハツならではの小さなクルマに最適なハイブリッドシステムの開発を目指す。また今後は、軽自動車にも同システム展開を図りつつ、海外への展開も併せて検討していきたい」述べている。