NEXT MOBILITY

MENU

2022年12月30日【自動車・販売】

カウンターポイント、今年第3四半期の欧州EVシェア調査

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

TMT( テクノロジー・メディア・通信 )業界の調査に特化したカウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ ( Counterpoint Technology Market Research )は12月30日、欧州のEV乗用車の販売調査( ここでの販売とは、メーカー卸し値、各社の工場からの出し値を指す )の結果を発表した。

 

なお、ここで示しているEVとは、BEVとPHEVのみを指している。従ってHVとFCVは調査の対象外だ。

 

調査のベースとなったのはカウンターポイント調査による「世界の乗用車EV販売トラッカー( Global Passenger Electric Vehicle Model Sales Tracker )」をベースとするもので、ここには、チャネル情報・POSデータ・ディストリビューターアンケート調査・公開データなどボトムアップデータソース・トップダウンリサーチなどの組み合わせなど、カウンターポイント社独自の調査方法で実施された( 調査時期:2022年7月1日~2022年9月30日 )。

 

加えて本調査の対象となった国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェイ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、ウクライナとなっている。

 

2022年第3四半期の欧州EV乗用車トップブランド販売シェア( 出典:カウンターポイント社Global Passenger Electric Vehicle Model Sales Tracker, Q1 2008 – Q3 2022

 

上記を踏まえて、当地の2022年第3四半期のEV乗用車販売の中に於いて、バッテリー駆動のEV( BEV )は、全体の61パーセントを占めた。各国別の切り口ではドイツが欧州最大の市場なり、これが全体の1/3を占め、このドイツにイギリスとフランスが続いた。

 

当該市場の動向調査に関して、カウンターポイント社の調査担当で同社のバイスプレジデンのピーター・リチャードソン氏は「欧州の自動車市場全体は、この3四半期間で縮小を続けている。これは経済的な逆風とサプライチェーンの分断とが原因である。

 

しかし、主要な自動車製造国であるドイツ、イギリス、イタリア、スペインではこの四半期に販売が伸びており、特にEVが健闘している」と述べた。

 

実際、市場サマリーを見るとメルセデスベンツは、欧州のEV市場をリードし続け、2022年第3四半期のシェアは9.2パーセントを刻んだ。この同社のEV販売の35パーセントはBEVによるもので、この部分は前年同期比75パーセントの伸びである。

 

メルセデスベンツのプラグインハイブリッドEV( PHEV )モデルは、GLEクラス、GLCクラス、Cクラスなどであり、BEVで代表的なモデルはEQB、EQA、EQC等がある。

 

そんなメルセデスベンツは、欧州のEV販売をリードし続けて来たが、ベストセラー10車種の中に同社の車はランクインしていない。

 

メルセデスベンツは20車種を超えるEVを販売し、その車種数は全自動車メーカーのなかで最多であるのだが、どの車種の販売シェアも1パーセント未満で横並びとなっている。

 

一方のフォルクスワーゲンは、第2四半期に於いて販売不振となり、前年同期比でEV販売の44パーセントを失った。しかし、第3四半期にサプライチェーンが復旧すると、8.9パーセントのシェアを稼いでBMWを抜き去り、第2位のEVメーカーとなって自らランクを押し上げた。

 

そんな同ブランドのBEV車種はID.3、ID.4、ID.5などのIDシリーズが代表格である。また、PHEVモデルの出荷も捉えた広い電動車カテゴリとしては大きく改善を記録する事になった。

 

なおBMWはこの期間、第3位に転落してシェアは8.6パーセントとなっている。但しBEVの場合、同ブランドに於けるEV販売シェアは45パーセントを占めている。

 

なかでも最も売れているBEV車種はi3で、その次にi4とiXが続く。またX5が最も売れているPHEV車種で、その次に3シリーズとX3が続く。

 

そうしたEVランキング上位のメーカーの中では、テスラが前四半期より販売が大幅に改善し、特にトップ5に返り咲いたモデルYは9月の欧州に於けるEVベストセラー車種となり、テスラ全体の売上の7割を占めた。

 

以上を総合すると欧州市場でEV販売のトップ10車種は、2022年第3四半期の同EV市場に於いて全体の27%を占め、テスラ・モデルY、フォルクスワーゲンID.4、フォード・クーガが第3四半期に最も売れたモデルとなっている。

 

2022年第3四半期の欧州EV乗用車トップ10モデル( 出典: カウンターポイント社Global Passenger Electric Vehicle Model Sales Tracker, Q1 2008 – Q3 2022 )

 

また欧州EV市場の見通しに関して、カウンターポイント社アソシエイトディレクターのモヒット・アグラワル氏は「2022年の欧州のEV市場は、250万台を僅かに下回る位になるだろうと予測している。

 

その背景には、欧州各国の政府は充電インフラに巨額の投資をしており、消費者がEVを選ぶのを後押ししている事がある。この傾向に関する背景は、カウンターポイント社のGlobal Passenger Vehicle Model Sales Trackerにて詳細が説明されている。

 

とにかく現在のところ、メルセデスベンツやBMWといった高級車メーカーが、EVとPHEVの両方を揃える事でEV販売をリードしているのは確かだ。

 

しかし、コストパフォーマンスに優れたメインストリームの車種を取り扱うルノー、フォルクスワーゲン、プジョーといったメーカーがEVのポートフォリオを充実させてくれば、EV販売全体がもっと大きく急成長する事になるだろう」と指摘している。

 

なお更なる調査の詳細は本文字列の外部リンク を参照されたい。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。