5年間で1000台の販売目標
電気自動車(EV)世界最大手である中国の比亜迪(BYD)社の日本法人、「ビーワイディージャパン」(劉学亮社長、横浜市神奈川区)は3月25日、東京・赤坂でEV事業における日本戦略に関する記者会見を開き、来春、1充電で200㎞を走破できる小型電気バス「J6」を日本市場向けに投入、都市型2タイプ、郊外型1タイプの3モデルを提案すると発表した。J6の販売は2024年までの5年間で1000台を予定している。
記者会見に臨んだ日本法人の花田晋作副社長は現在、中国を始め海外に導入している小型電気バス(K6)をベースに「日本仕様にリメイクする」とし、アルミボデーのK6をさらに軽量設計するほか、技術進歩の著しいモーターやバッテリーの最新技術を織り込み、現行150㎞の走行距離を3割アップさせた日本戦略モデルJ6を投入することを明らかにした。
日本でのEV普及の先駆けを訴える花田副社長
また同氏は「本日より先行予約受け付けを開始する」とも述べ、希望小売価格を税抜き1950万円の低価格に設定したこと、また新モデルが「国交省が定める地域交通グリーン化事業の定義に入る。完全な電気バスなので交通事業者さまが申請すれば補助金を受けることが可能と考えている。現在、3分の1の補助が受けられるので、差し引けば凡そ1200万~1300万円になる」とし、充電設備も補助制度が適用になると指摘した。
BYDの電気バス販売累計は、世界で5万台を超え、その1日の走行距離は1000万kmに達する。お膝元の中国・深圳市では2011年のユニバシアード開催を機に、大型電気バス200台が導入され、2017年度には路線バス約1万7000台のすべてが電気バスに代替えされ、その9割がBYD社製になっている。深圳市での1日当たりの電気バス走行距離は350万㎞になり、CO2排出削減に寄与している。
ディーゼル仕様のバスは、乗用車の33台分のCO2排出になるが、日本でのEV化は遅れており、路線バス6万台のうち、電気バスは約40台で0・1%未満にとどまる。このうち21台はBYD社製電気バスで占める。2015年に京都で初めてBYD社製大型電気バス5台が導入されたのを皮切りに、17年には沖縄・那覇で10台を納入、昨年は京都で2台の追加があり、福島・会津若松で中型電気バス3台を納めた。
BYDの使命は「電動化社会を広げる」ことにあり、日本でも積極的にEV化を推進する考えで、今回のJ6の2000万円を切る価格設定は「限界的な数値」とし、「補助金がなくても、普及に向き合っていける」とした。超高齢化社会に入る日本では、急速に交通弱者が増えると予想し、幹線道路を大型や中型電気バスでカバーし、生活道路を小回りの利く小型バスが交通弱者の足となって走る。大都市だけでなく、郊外や地方都市でも必要な車両とする。
J6のイメージ図
「J6」は、全長6990㎜×車幅2060㎜×車高3100㎜の小型バスのサイズ。バッテリー容量は105k Whで既存のK6と同じだが、バッテリーを車体後部に配置し、ノンステップで床をフラットにした。充電時間は3時間。都市型Ⅰタイプは31人乗員で前部に扉1枚。都市型Ⅱタイプは後部にも扉があり、乗員29人のり。郊外型タイプは1枚扉だが、ゆとりのある25人乗りだ。
コミュニティバスとして路線バスに利用されるだけでなく、病院、老人ホームなどの自家用ユースにも今後販売が期待されている。BYDでは、今後、J6をベースに2020年以降自動化に対応していくほか、災害対応ということで21年に車両から家に、また車両同士で電力供給するシステムを搭載、さらに22年に車両から電力会社に電力を供給する仕組みも開発する。
なおBYDでは日本生産を「地元の要望があれば、柔軟に対応する」との考えを示したが、「現在、要望はないし、深圳には十分な生産能力がある」と答えた。また中国では電気バス普及に向けた補助金が止まるとの報道に触れ、「補助金が止まっても、われわれはある程度、設備償却を完了しおり、一定価格で販売していくことが可能だ。われわれは事業の継続性も含め、心配している状況にない」とコメントした。