DMM.com(以下「DMM」)は11月2日、子会社のベルリングが、オーエックスエンジニアリングが開発した、日本初となる国産ECMOストレッチャーを搭載したエクモカーを、千葉大学医学部附属病院(以下「千葉大学病院」)に納入したと発表した。
ECMO(体外式膜型人工肺)は、患者の体内から血液を取り出し、酸素を加え再び体内に戻す装置で、新型コロナウイルスの重症患者にも広く使われている。新型コロナウイルスの感染拡大により、ECMOを使った治療が必要になるケースや、近隣の病院にECMOの空きがなく遠くの病院まで患者を運ぶケースが相次いでおり、ECMOを装着したまま患者を長距離搬送することができるエクモカーは必要不可欠な存在となった。
新型コロナウイルスの感染拡大によりエクモカーの需要は高まっているが、今回開発した車両は、千葉大学病院が大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場へ駆けつけるDMATでの運用も視野に入れた、汎用性の高い設計になっている。
なお、千葉県内でのエクモカーの導入は初となる。
■エクモカーの特徴
ポイント①:出動現場で救命活動が可能に
・マイクロバスタイプはトラックタイプに比べて、一般的には車内空間は狭くなるが、今回は車内のレイアウト設計を工夫することで、診療空間を確保することに成功。
・室内照明を多数設置し、どの角度からも均一に照射できる構造とすることで手術や処置中のストレスを解消。
・ベッド周囲の動線に配置するシートを跳ね上げ式にすることで活動性アップ。
今回開発したエクモカーは、重症な患者を安全に搬送するためにモニタリング機器を配置し、緊急時には360度から治療ができるようスペースを確保。また、簡易陰圧装置を備え、コロナの感染患者にも対応している。
患者の搬送に加えて、ドクターカーとして出動したときには、開胸や開腹手術ができるようライティングにも工夫。出動現場で救急室さながらの救命活動を行うことができる。
ポイント②:日本初の国産ECMOストレッチャーを搭載し、より円滑な救命活動を実現
・ECMOストレッチャーはモジュール部品の組み合わせにより、医療機関の要望や搭載車両に柔軟に対応可能。
日本初の国産ECMOストレッチャーは、従来のものに比べ、医療機器の配置調整などカスタマイズの自由度が高くなっている。千葉大学病院で導入したストレチャーは国内で使用されるECMO機器に対応するスペースを確保しつつ、患者に対して救命処置が可能な高さに調整することで、様々な現場で円滑に救命活動を行える設計になっている。
従来のECMOストレッチャーは海外メーカーのものが主流となっているためコストが高く、エクモカー導入のハードルが高くなっていた。しかし今回、オーエックスエンジニアリングが、自社の車いすの開発技術を活用することで、従来のものと同じような素材で構成されたECMOストレッチャーを、半分のコストで導入することを目標に開発した。
ポイント③:DMAT(災害派遣医療チーム)での運用も視野に入れた車両設計
・ECMOストレッチャー及び搬送用ストレッチャーを搭載し、最大2名の患者搬送が可能。
※運転席2名、患者2名、医療者5名の計9名乗車可能。
・酸素配管系統においてボンベ8本(通常車両は2本)装備可能で、万一のリスクを回避できる。
・災害地への派遣時にも十分な電源供給が行えるようバッテリーを3台搭載(車両メイン・サブバッテリー・緊急バッテリー)。
・今後、車両を起点とした情報伝送を可能にする通信設備を導入できるスペースや電源設備を確保。
DMATの出動の際は、災害現場に長期間滞在することもあるため、救命活動に必要な資機材を積むスペースをどれだけ確保できるか、何名乗車できるかが重要となる。また移動も長距離に渡るため、隊員の負担をなるべく減らす意味で、乗り心地も重要なポイントとなる。
車体は、主流となっているトラックタイプではなく、あえてマイクロバスタイプを使用しているため、走行性能が高く、また移動中の揺れを抑え、隊員と患者の負担を軽減する。