今年半ばからソフトウェアをOTAでアップデート
中国・比亜迪(BYD)の日本法人、BYDオートジャパン(BAJ)3月1日、「2024戦略発表会」を東京都内で開き、第3種目の電気自動車(EV)「シール(SEAL)」を今年年央の6月をめどに日本へ投入する方針などを表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
冒頭に登壇したBYDアジア太平洋地区自動車販売事業部総経理でビーワイディージャパンの劉学亮社長は以降も「毎年1車種以上のモデルを日本市場に投入する」と強調し、「もっとグリーンな未来に貢献したい」とアピールした。
また、BAJは第1弾の日本発売EVモデルであるミドルサイズSUV「アット(ATTO)3」のアップデート版を同時に発表、同日から発売した。
同モデルはイヤーモデル版といえるもので、内外装などに新色を追加するとともに、ソフトウェアを更新した。
加えて、BAJは既販車種についてもソフトウェアをインターネット経由のOTA(オーバー・ジ・エア)で自動更新する考えを明らかにした。現在準備を進めており、年央以降にも実現する方針だ。
劉社長によると、BYDは現在70超の国・地域、400超の都市で事業を展開しており、昨年、EVとプラグインハイブリッド(PHV)をあわせた販売台数は「302万台に達し、同分野でナンバーワンだった」とアピール。
車種も一般乗用車から高級車まで多様な車種を展開し、累計販売台数も650万台に達した。
蓄電池メーカーから発展した同社について劉社長は自動車領域だけでなく、低炭素社会に貢献する多様なエネルギー事業をも展開する「新エネルギーテクノロジーカンパニーだ」と訴えた。
日本市場には早くから電気バス(EVバス)を展開し、今や50%を超える都市で、70%以上のEVバスのシャアを持つ。
そこへ満を持して日本のEV市場に参入し、1年強が経過。劉社長は「テクノロジーで、グリーンな未来を共創する」と話す。
続いて登壇したBAJの東福寺厚樹社長は日本市場での販売台数について「2023年(1~12月)累計登録台数が1446台に達した」と表明。うち第1弾のアット3が1198台で第2弾の「ドルフィン(DOLPHIN)」が248台だった。
さらに今年1、2月の動向を合わせると、受注累計台数は「2000台に届く」としながらも、一般の人の目に触れるようになるには3000台以上必要とし、「早く3000台に到達したい」と訴えた。
ディーラー網については2024年3月2日時点で開業準備室を含めると全国51拠点に達し、うち正規ディーラーは2日にオープンする東京・練馬店を含め22店舗に達する。BAJは2025年末までに100店舗を展開する計画。
加えて、東福寺社長は今年を「日本でのBYDのビジネスをさらに加速する1年にしたい」と強調。いずれ発売すると公表済みだったシールを「年央に発売」すると表明するとともに、車両モデル以外に体験機会やコミュニケーションのアップデートを展開する方針を説明した。
具体的には車両ではアット3のディスプレイサイズを約3インチ拡大するとともに、インターネット検索などの機能を追加する。
体験機会のアップデートでは、「ハローBYDキャラバン」と名付けた試乗会を全国30か所で展開する。コミュニケーションのアップデートでは、車両のテレビコマーシャルのほか、4月からブランドキャンペーンも実施する予定だ。
戦略発表会での記者との質疑応答は次の通り。
――既販車種でのOTAはアット3のみでしょうか。
「既販車種へのOTAはアット3とドルフィンともに行うことで準備中です」
――これまでの販売への評価は。また、今後日本市場へ毎年1車種以上のモデルを投入する計画ですが、どのような車種を展開するのでしょうか。
「店舗が1店舗増えるに従って車両販売も伸びる手ごたえはあった。ただ、ドルフィンの発表時に1100台の年間目標販売台数を掲げたが、実際はドルフィンの型式認定が遅れ、計画を下回った。6月のシールの販売と同時に、ドルフィンも型式認定を取る予定です。以降、発売する1車種についてはある程度固まってきているが、まだ発表できる段階でない。本国では多くの車種をそろえており、日本市場に合うモデルを検討しています」
――世界的にEVの減速感が出ていますが。
「日々、風は変化しており、どの国にとっても自動車産業は重要な産業です。EVのメリット、ガソリン車との違いというだけでなく、社会的な観点からも見ていく必要があるのでは」
――日本市場にPHVを導入する計画は。
「中国の場合、国土が広く、充電設備が十分でない地域が少なくない。このため、これらの地域にPHVを投入しており、現状、EVと半々の比率となっています。日本市場はEVのみの展開を目指す」
――自動車事業以外のエネルギー事業を日本で展開する考えは。
「日本には素晴らしい企業がたくさんあります。全部ではないが、こうしたところとすり合わせて、可能な事業は行っていきたいと思っています」
――中古車事業については。
「EVの中古車はこれまでバッテリーが劣化するとうことで評価が低かった。しかし、技術が進化し、各社も再販に力を入れている。BYDもバッテリーの長期保証制度や中古車認定制度を設けて、再販体制を強化しており、いずれガソリン車並みの中古車の価格体系に近づくと思う」