ポルシェAGは5月28日、自社ブランドの屋台骨といえる車種シリーズの911をアップグレードしたことを明らかにした。また新型911カレラGTSは、ハイブリッドユニットを搭載した初の公道・市販型の911となる。予約受注は5月29日より開始。販売価格は1694万円〜2615万円。
総排気量3.6リッターの内燃エンジンと一体化させたハイブリッドシステムは、静止状態から100km/hまでが3.0秒。最高速度は312km/hに到達する。また911カレラGTSと同時に新しい911カレラも発売される。こちらも新開発の3.0リッター水平対向ツインターボエンジンを搭載したことで先代モデルよりも高いパワーを実現している。
エクステリア面でもエアロダイナミクスの向上を図った上で、インテリアにも手を入れ、コネクティビティー機能の拡張も図っている。今回の911の刷新のみならず、ここのところ、パナメーラ、タイカン、マカンも刷新させたことについてオリバー・ブルーメCEOは、「当社の製品ポートフォリオは大きく改められました。加えて個々のお客様に向けて、多くのカスタマイズオプションも用意しています。
そうしたなか今回の911シリーズでも911カレラGTSモデルは、ポルシェのエンジニア達がモータースポーツの現場から獲得した知識を、ハイブリッドシステムを生み出すための基礎としています」と述べている。
次いで911および718モデルライン担当副社長のフランク・モーザー氏は、「私たちは、911と完璧に適合するハイブリッドシステムに辿り着くべく、様々なアイデアやアプローチを積み重ねてきました。
その結果、最も911らしい手段を探し当て、パフォーマンスを大幅に向上させることができました。そんな軽量でパワフルなT-ハイブリッドシステムには、新開発の電動ターボチャージャーが搭載されています。
これによりコンプレッサーとタービンホイールの間に組み込まれた電気モーターが、瞬時にターボチャージャーの速度を上げることができています。これによりブースト圧が瞬時に上昇。
また併せて電気モーターは先の機能と併せてジェネレーターとしても働き、最大11kW(15PS)の電力を発生。ウエイストゲートのない電動ターボチャージャーは、従来の2つのターボチャージャーに代わって1つのターボチャージャーのみでの機能し、よりダイナミックで応答性の高いパワー供給が実現できるようになりました」と説明している。
そんなパワートレインには、新しい8速デュアルクラッチトランスミッション(PDK)に組み込まれた永久磁石同期モーターも含まれる。アイドル回転数でも最大150N・mの駆動トルクで水平対向エンジンをサポートし、最大40kWの出力向上に貢献。
新たな911は、両方の電気モーターを軽量でコンパクトな高電圧バッテリーに接続。そのサイズと重量は従来の12Vスターターバッテリーに相当し、最大1.9 kWhのエネルギー(総)を蓄えて400Vの電圧で作動する。加えて総重量を最適化するため、ポルシェは12V車載電気システム用に軽量リチウムイオンバッテリーも搭載している。
一方、T-ハイブリッドドライブの心臓部は、高電圧システムによりエアコンコンプレッサーを電動で駆動させることが可能になり、その結果、ベルト駆動が省略されてエンジンが大幅にコンパクトになっている。より具体的には、これにより電源ユニットの上部にパルスインバーターとDC-DCコンバーター用のスペースが生まれた。
内燃エンジンの1シリンダーあたりのボアは97mm、ストロークは81mmへと拡大、先代に比べて排気量は0.6リッター増加した。またエンジンヘッドにはバリオカムカムシャフトコントロールとロッカーアーム付バルブコントロールが装備される。これによりマップ全体に亘って燃料と空気の理想的な混合比(ラムダ = 1)を維持できるようになった。
この新世代エンジンにより新型911は、先代モデルから50kgの重量増に収まった。出力面で電動アシストなしで357kW(485PS)の出力と570N・mのトルクを発生。システムの合計出力は398kW(541PS)、合計トルクは610N・mとなり、先代と比較した出力増加は45kW(61PS)となる。
従って新型の911カレラGTSは、静止状態から100km/hまでの加速タイムが大幅に向上。プラグインハイブリッド車と比較した場合は、余分な重量を大幅に減らしたことでCO2排出量も削減できている。
最もスタンダードな911カレラは、ツインターボを備えた3.0リッター水平対向エンジンを搭載しているが、実は同エンジンも全面的に刷新された。
911カレラのターボチャージャーは、排出ガスの低減と最大トルク450N・mに加えて290 kW(394PS)までの出力向上を達成。新しい911カレラクーペの0-100km/h加速タイムは4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は294km/hとなり、先代モデル比で、それぞれ0.1秒、1km/h向上した。
911カレラGTSではサスペンションも包括的に見直され、リアアクスルステアリングが初めて標準装備された。その結果、高速走行時の安定性が向上し、回転半径が小さくなっている。
加えてポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)アンチロール安定化システムをパフォーマンスハイブリッドの高電圧システムに統合。これにより電気油圧制御システムの使用が可能になり、システムの柔軟性と精度が更に高まっている。
ホイールには、計7つの19/20インチまたは20/21インチのホイールデザインが用意された。911カレラに初めて採用されたエクスクルーシブデザインのホイールは、空気抵抗係数を低減し、効率を高めるカーボンブレードを備えている。
911カレラGTSは、幅11.5インチの21インチホイールと315/30 ZR 21タイヤをリアに標準装備した。フロントには245/35 ZR 20タイヤを8.5インチ幅の20インチホイールに装着。性能の大幅な向上に伴い、リアタイヤの接地面積を広げたことで911カレラGTSの場合は、ドライビングダイナミクスとトラクションが向上した。
エクステリア面では4灯のグラフィックを備えたマトリックスLEDヘッドライトに、すべてのライト機能を統合した。これにより、フロントドライビングライトを省略することが可能になり、車両のフロントに大型の冷却ベントを設けるスペースが生まれた。
ボディ後部では再設計された円弧と“PORSCHE”ロゴを統合した新しいライトストリップデザインを採用。これにより911のリアエンドをより深くより広く見せる。再設計の各サイド5枚のフィンを備えたリアグリルは、リアウインドウへとスムーズに接続され、格納式スポイラーに溶け込むグラフィックユニットを形成する。
併せてナンバープレートの位置を高めに設定し、すっきりとした構造のリアバンパーを採用した。モデル専用のエグゾーストシステムは、目立つディフューザーフィンにエレガントに組み込まれている。911カレラモデルには、オプションでスポーツエグゾーストシステムが用意。911カレラGTSモデルには、GTS専用のスポーツエキゾーストシステムが標準装備される。
インテリア面でクーペモデルについては2シーターが標準となっている。追加料金なしで2+2シートも用意することも可能だ。コックピットには、お馴染みの911デザインのDNAと最新のテクノロジーが融合された。
ポルシェドライバーエクスペリエンスコントロールコンセプトは、ドライバーを中心とした直感的で素早い操作に重点を置いたもの。重要なコントロールエレメントはステアリングホイール上またはステアリングホイールの周囲に直接配置されている。
より大きな違いは、911に初めてフルデジタルのメーターパネルが装備されたことだ。12.6インチの曲面ディスプレイは、新しいコントロールとディスプレイのコンセプトにエレガントに適合し、幅広いカスタマイズを可能とした。
ポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)システムは、10.9インチの高解像度センターディスプレイで操作し、ドライビングモードのカスタマイズ性やドライバーアシスタンスシステムの操作性が大幅に改善されている。
アップグレードされた911には、新しいコネクティビティー機能も装備される。QRコードは、ポルシェIDによるPCMへのログオンプロセスを大幅に簡素化する。今回初めて、駐車中のビデオストリーミングもオプションで利用できるようになっている。
新型911(カレラ+タルガ価格/2024年5月28日現在)
車種_TM_ハンドル_価格(税込)
カレラ_8速PDK_右/左_1694万円
カレラカブリオレ_8速PDK_右/左_1943万円
カレラGTS_8速PDK_右/左_2254万円
カレラGTSカブリオレ_8速PDK_右/左_2503万円
カレラ4 GTS_8速PDK_右/左_2365万円
タルガ4 GTS_8速PDK_右/左_2615万円
カレラ4 GTSカブリオレ_8速PDK_右/左_2614万円