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2024年5月28日【新型車】

ボルシェ、新型911カレラ+GTSの予約受注を開始

坂上 賢治

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ポルシェAGは5月28日、自社ブランドの屋台骨といえる車種シリーズの911をアップグレードしたことを明らかにした。また新型911カレラGTSは、ハイブリッドユニットを搭載した初の公道・市販型の911となる。予約受注は5月29日より開始。販売価格は1694万円〜2615万円。

 

総排気量3.6リッターの内燃エンジンと一体化させたハイブリッドシステムは、静止状態から100km/hまでが3.0秒。最高速度は312km/hに到達する。また911カレラGTSと同時に新しい911カレラも発売される。こちらも新開発の3.0リッター水平対向ツインターボエンジンを搭載したことで先代モデルよりも高いパワーを実現している。

 

 

エクステリア面でもエアロダイナミクスの向上を図った上で、インテリアにも手を入れ、コネクティビティー機能の拡張も図っている。今回の911の刷新のみならず、ここのところ、パナメーラ、タイカン、マカンも刷新させたことについてオリバー・ブルーメCEOは、「当社の製品ポートフォリオは大きく改められました。加えて個々のお客様に向けて、多くのカスタマイズオプションも用意しています。

そうしたなか今回の911シリーズでも911カレラGTSモデルは、ポルシェのエンジニア達がモータースポーツの現場から獲得した知識を、ハイブリッドシステムを生み出すための基礎としています」と述べている。

 

次いで911および718モデルライン担当副社長のフランク・モーザー氏は、「私たちは、911と完璧に適合するハイブリッドシステムに辿り着くべく、様々なアイデアやアプローチを積み重ねてきました。

 

 

その結果、最も911らしい手段を探し当て、パフォーマンスを大幅に向上させることができました。そんな軽量でパワフルなT-ハイブリッドシステムには、新開発の電動ターボチャージャーが搭載されています。

 

これによりコンプレッサーとタービンホイールの間に組み込まれた電気モーターが、瞬時にターボチャージャーの速度を上げることができています。これによりブースト圧が瞬時に上昇。

 

また併せて電気モーターは先の機能と併せてジェネレーターとしても働き、最大11kW(15PS)の電力を発生。ウエイストゲートのない電動ターボチャージャーは、従来の2つのターボチャージャーに代わって1つのターボチャージャーのみでの機能し、よりダイナミックで応答性の高いパワー供給が実現できるようになりました」と説明している。

 

そんなパワートレインには、新しい8速デュアルクラッチトランスミッション(PDK)に組み込まれた永久磁石同期モーターも含まれる。アイドル回転数でも最大150N・mの駆動トルクで水平対向エンジンをサポートし、最大40kWの出力向上に貢献。

 

 

新たな911は、両方の電気モーターを軽量でコンパクトな高電圧バッテリーに接続。そのサイズと重量は従来の12Vスターターバッテリーに相当し、最大1.9 kWhのエネルギー(総)を蓄えて400Vの電圧で作動する。加えて総重量を最適化するため、ポルシェは12V車載電気システム用に軽量リチウムイオンバッテリーも搭載している。

 

一方、T-ハイブリッドドライブの心臓部は、高電圧システムによりエアコンコンプレッサーを電動で駆動させることが可能になり、その結果、ベルト駆動が省略されてエンジンが大幅にコンパクトになっている。より具体的には、これにより電源ユニットの上部にパルスインバーターとDC-DCコンバーター用のスペースが生まれた。

 

内燃エンジンの1シリンダーあたりのボアは97mm、ストロークは81mmへと拡大、先代に比べて排気量は0.6リッター増加した。またエンジンヘッドにはバリオカムカムシャフトコントロールとロッカーアーム付バルブコントロールが装備される。これによりマップ全体に亘って燃料と空気の理想的な混合比(ラムダ = 1)を維持できるようになった。

 

 

この新世代エンジンにより新型911は、先代モデルから50kgの重量増に収まった。出力面で電動アシストなしで357kW(485PS)の出力と570N・mのトルクを発生。システムの合計出力は398kW(541PS)、合計トルクは610N・mとなり、先代と比較した出力増加は45kW(61PS)となる。

 

従って新型の911カレラGTSは、静止状態から100km/hまでの加速タイムが大幅に向上。プラグインハイブリッド車と比較した場合は、余分な重量を大幅に減らしたことでCO2排出量も削減できている。

 

最もスタンダードな911カレラは、ツインターボを備えた3.0リッター水平対向エンジンを搭載しているが、実は同エンジンも全面的に刷新された。

 

 

911カレラのターボチャージャーは、排出ガスの低減と最大トルク450N・mに加えて290 kW(394PS)までの出力向上を達成。新しい911カレラクーペの0-100km/h加速タイムは4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は294km/hとなり、先代モデル比で、それぞれ0.1秒、1km/h向上した。

911カレラGTSではサスペンションも包括的に見直され、リアアクスルステアリングが初めて標準装備された。その結果、高速走行時の安定性が向上し、回転半径が小さくなっている。

 

加えてポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)アンチロール安定化システムをパフォーマンスハイブリッドの高電圧システムに統合。これにより電気油圧制御システムの使用が可能になり、システムの柔軟性と精度が更に高まっている。

 

ホイールには、計7つの19/20インチまたは20/21インチのホイールデザインが用意された。911カレラに初めて採用されたエクスクルーシブデザインのホイールは、空気抵抗係数を低減し、効率を高めるカーボンブレードを備えている。

 

911カレラGTSは、幅11.5インチの21インチホイールと315/30 ZR 21タイヤをリアに標準装備した。フロントには245/35 ZR 20タイヤを8.5インチ幅の20インチホイールに装着。性能の大幅な向上に伴い、リアタイヤの接地面積を広げたことで911カレラGTSの場合は、ドライビングダイナミクスとトラクションが向上した。

エクステリア面では4灯のグラフィックを備えたマトリックスLEDヘッドライトに、すべてのライト機能を統合した。これにより、フロントドライビングライトを省略することが可能になり、車両のフロントに大型の冷却ベントを設けるスペースが生まれた。

 

 

ボディ後部では再設計された円弧と“PORSCHE”ロゴを統合した新しいライトストリップデザインを採用。これにより911のリアエンドをより深くより広く見せる。再設計の各サイド5枚のフィンを備えたリアグリルは、リアウインドウへとスムーズに接続され、格納式スポイラーに溶け込むグラフィックユニットを形成する。

 

併せてナンバープレートの位置を高めに設定し、すっきりとした構造のリアバンパーを採用した。モデル専用のエグゾーストシステムは、目立つディフューザーフィンにエレガントに組み込まれている。911カレラモデルには、オプションでスポーツエグゾーストシステムが用意。911カレラGTSモデルには、GTS専用のスポーツエキゾーストシステムが標準装備される。

 

インテリア面でクーペモデルについては2シーターが標準となっている。追加料金なしで2+2シートも用意することも可能だ。コックピットには、お馴染みの911デザインのDNAと最新のテクノロジーが融合された。

 

 

ポルシェドライバーエクスペリエンスコントロールコンセプトは、ドライバーを中心とした直感的で素早い操作に重点を置いたもの。重要なコントロールエレメントはステアリングホイール上またはステアリングホイールの周囲に直接配置されている。

 

より大きな違いは、911に初めてフルデジタルのメーターパネルが装備されたことだ。12.6インチの曲面ディスプレイは、新しいコントロールとディスプレイのコンセプトにエレガントに適合し、幅広いカスタマイズを可能とした。

 

ポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)システムは、10.9インチの高解像度センターディスプレイで操作し、ドライビングモードのカスタマイズ性やドライバーアシスタンスシステムの操作性が大幅に改善されている。

 

アップグレードされた911には、新しいコネクティビティー機能も装備される。QRコードは、ポルシェIDによるPCMへのログオンプロセスを大幅に簡素化する。今回初めて、駐車中のビデオストリーミングもオプションで利用できるようになっている。

 

 

新型911(カレラ+タルガ価格/2024年5月28日現在)
車種_TM_ハンドル_価格(税込)
カレラ_8速PDK_右/左_1694万円 
カレラカブリオレ_8速PDK_右/左_1943万円
カレラGTS_8速PDK_右/左_2254万円
カレラGTSカブリオレ_8速PDK_右/左_2503万円
カレラ4 GTS_8速PDK_右/左_2365万円
タルガ4 GTS_8速PDK_右/左_2615万円
カレラ4 GTSカブリオレ_8速PDK_右/左_2614万円

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。