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2024年10月2日【新型車】

BMWの「新型M5」、V8+PHVで歴代最強のモデルに

坂上 賢治

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M史上最強のパワーでダイナミックなサーキットパフォーマンスを実現

 

ビー・エム・ダブリューは10月2日、都内(港区・麻布台ヒルズ)に報道陣を募りミドル・クラス・セダンの5シリーズに「BMW M5(エムファイブ)」の新型モデル(全面改良)の追加・発表会を開いた。( 坂上 賢治 )

 

発表会の壇上では、同社代表取締役社長の長谷川正敏氏の挨拶に続き、BMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクト・マネージャーの御舘康成氏が新型M5の車両概要を説明した。

 

それによると車両販売は、同日より全国のBMW正規ディーラーで開始。メーカーが希望する販売価格は、先代モデルから据え置いた1,998万円(例え中核的なM5の購買層が、医師、弁護士、公認会計士、企業役員であったとしても2,000万円の大台を超えてしまうと一気に市場が狭まってしまうため、2,000万円以下に保った)。車両生産は先代モデルと同じく独・ディンゴルフィング工場が担う。納車開始時期は今年11月中旬以降を予定している。

 

さてBMW傘下で、孤高のハイ・パフォーマンスモデルのみを手掛けるM社が開発しているM5は、BMW最高峰のコンペティションモデルとして1984年に初代が登場している。

 

 

今発表の新型M5は、そこから数えて第7世代にあたる。そんなM5は世界規模で昨年1年間で20万台超える販売台数を記録。一昨年の約17万台から着実に成長している車種だという。

 

またM社が手掛けるMモデルには現在、2つの車種カテゴリーがあり、ひとつは市販車でありながら最先端のレーシング技術を余すことなく投入したMハイ・パフォーマンス・モデル。もうひとつは、公道上でのスポーツドライビングを極限まで愉しめるものとしつつ、プレミアム・カーとしての快適性にも拘ったMパフォーマンス・モデルがある。

 

今回の披露された新型M5は、冒頭のMハイ・パフォーマンス・モデルにあたる。そのパワーユニットは、4.4LのV型8気筒のクロスバンク型ツインパワー・ターボ・エンジンが基本であるのだが、これにM5初のM専用PHVの〝M HYBRIDシステム〟が追加搭載されたものとなっている。

 

 

4.4L・V8ツインターボ単体の最高出力は、585PS(430kW)/5,600-6,500rpm、最大トルク750Nm /1,800-5,400rpm。これに電池容量22.1kWhを持つ197PS(145kW)、最大トルク450Nmの電気モーターが組み合わされる。結果、モーター駆動特有の頭打ち感を抑えつつ車両としてのトータルの最高出力は727PS(535kW)、最大トルクでは1,000Nmの大台に到達させた。

 

Mモデルながらもラグジュアリー・モデルに相応しい快適性も備えている

 

なおMモデルであるゆえにパワーユニットの設計思想は、世間を走っている一般的なPHV仕様とは全く異なっており、その目的はサーキット上での運動性能を極限にまで極めるための手段に他ならない。従って今回の新型M5は、歴代モデルを含めても史上最強のモデルに仕立て上げられた。その絶対性能は0-100km/h加速3.5秒、80-120km/hの加速領域でも2.2秒を実現している。

 

 

また上記の電動モーターは、専用の8速Mステップトロニック・トランスミッションのハウジングに組み込まれた。ちなみに、あたりまえではあるが電動のみでの走行もできる訳であるから走行距離にして約70kmまでならゼロ・エミッションでの走行が可能だ。

 

 

エクステリアは、既存のBMW 5シリーズをベースにMモデルらしさを盛り込んだ。まずフロント・デザインは、M専用エアロ・バンパーやガーニッシュ、BMWらしさを伝えるブラック・キドニー・グリル、75mmワイドとなったフロント・フェンダーなどがある。

 

リアではMカーボン・リア・スポイラー、専用デザインのディヒューザーが施されたM専用リア・バンパー。Mスポーツ・エギゾースト・システム、リア・フェンダーも48mmワイドとなっている。

 

 

ボディ骨格では、通常のパノラマ・ルールに比べ30kgもの軽量化と車体重心の低下を実現するカーボン強化樹脂製のルーフを標準搭載。プレミアムカーとしての訴求面では、BMW Individualレザー・メリノ・シートやアルカンターラ・ヘッドライナーに加え、高品位な音響空間を提供するBowers & Wilkinsダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システムも装備した。

 

 

機能面では、アクティブ・シート・ベンチレーション(前席)や4ゾーン・エアコンディショニングも備えているため、Mモデルながらもラグジュアリー・モデルに相応しい快適性も備えている。

 

サーキットでのダイナミックな走りを心底、味わい尽くせる仕様に

 

インテリアは先代に比べボタン類が大幅に削減された。カーブド・ディスプレイは、最新の12.3インチのインフォメーション・ディスプレイと14.9インチのコントロール・ディスプレイで構成されている。

 

インストルメント・パネル中央からドア・トリムを立体的なクリスタル面が貫くBMWインタラクション・バーを標準搭載。Mカラーのアンビエント・ライティングで室内空間を演出。Mモデル専用のMマルチ・ファンクション・シート、M専用装備品などがMモデルらしさを主張する。

 

 

ドライビング・フィールは、ダイナミックな走行性能、あらゆる運転状況における抜群の安定性、高精度なハンドリング性能、優れた乗り心地、世界最高のドライビング・ダイナミクスの実現を目指した。

 

 

より具体的には、フロント・アクスルとリア・アクスルのトレッド幅の拡大、バランスの取れた約50:50の前後重量配分、インテリジェントな軽量構造、ボディとシャシーの接続剛性の向上等に加え、様々なMモデル専用の最先端シャシー・テクノロジーを採用している。

 

またステアリングレシオは可変機能を備えたスポーツドライビングに最適化されたもの。併せてM5では初搭載となる4輪操舵のインテグレーテッド・アクティブ・ステアリングを標準装備。サーキットでのダイナミックな走りを、味わい尽くせる仕様となった。

 

 

渋滞中のハンズオン機能だけなく、完全自動のパーキング・アシスト機能も搭載

 

走行時の基本設定は「DSCオン・4WDモード」であり、これでもMモデル特有の俊敏性を十二分に味わえる。更にMダイナミック・モード(MDM、4WD Sport)に切り替えるとリア・アクスルへの駆動トルク配分が増加。リヤ・ホイールのスリップ許容量が大きくなることで、ドライバーのテクニックを、より存分に引き出せるようになる。

 

加えてDSCオフ時に選択可能な後輪駆動「2WDモード」では、クルマの挙動を制限する制御システムの介入を断つことも可能であり、熟練したドライバー自らが車両を操作する歓びをダイレクトに味わうことも可能だ。

 

もちろんこの際シフト特性を3段階から選択できる。例えば「モード1」は効率的な走りをサポート、「モード2」ではシフト時間を短縮し俊敏な走りを実現。次いで「モード3」では急カーブの手前などで一気に1速ギヤまで落とすなどシフト時間を短縮させ、マニュアル・シフトに準じた複数のギヤを飛び越したシフト・ダウンも可能となる。

 

 

なお新型M5は国土交通省からの認可を取得し、一定の条件下でステアリングから手を離しての走行が可能な「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」も活用できる。Apple CarPlayを筆頭とする外部連携も可能なため、音声による車両の操作、目的地の設定等も可能だ。

 

高性能カメラ&レーダーおよび高性能プロセッサーによる安全機能・運転支援システム「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」、「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)」、「レーン・チェンジ・ウォーニング(車線変更警告システム)」、「レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)」、「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト、サイド・コリジョン・プロテクション」、「衝突回避・被害軽減ブレーキ(事故回避ステアリング付)」、「クロス・トラフィック・ウォーニング、ペダル踏み間違い急発進抑制機能」の他、完全自動駐車が可能となる「パーキング・アシスト・プロフェショナル」等も標準搭載している。

 

 

最後に3年間の主要メインテナンス無償提供、タイヤ/キーの破損や紛失の際の費用サポート等が含まれる「BMWサービス・インクルーシブ・プラス」が全車に付帯される。この「BMWサービス・インクルーシブ・プラス」は、2016年よりBMW全モデルに標準装備された新しいメインテナンス・パッケージであり顧客に対してより安心なドライブを提供するものとなっている。

 

 

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BMW M5主な車両諸元は以下の通り

 

全長5,096mm、全幅2,156mm、全高1,510mm、ホイールベース3,006mm、排気量4,395cc、V型8気筒ガソリン・エンジン、最高出力585PS(430kW)/5,600-6,500rpm、最大トルク750Nm/1,800-5,400rpm、電気モーター出力197PS(145kW)、電気モーター・トルク280Nm、システム・トータル最高出力727PS(535kW)、システム・トータル最大トルク1,000Nm
※全ての数値は欧州仕様値。

 

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M5以外も含めたメーカー希望小売価格(消費税込み)は以下の通り

 

高効率ガソリン・エンジン搭載モデル(48Vマイルド・ハイブリッド・システム搭載)
モデル_メーカー希望小売価格
– BMW 523i Exclusive* :7,980,000円
– BMW 523i M Sport* :8,680,000円

 

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クリーン・ディーゼル・エンジン搭載モデル(48Vマイルド・ハイブリッド・システム搭載)
モデル_メーカー希望小売価格
– BMW 523d xDrive M Sport* :9,180,000円

 

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電気自動車
モデル_メーカー希望小売価格
– BMW i5 eDrive40 Excellence* :9,980,000円
– BMW i5 eDrive40 M Sport* :9,980,000円
– BMW i5 M60 xDrive* :15,480,000円

 

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高効率ガソリン・エンジン搭載モデル(プラグイン・ハイブリッド・システム搭載)
モデル_メーカー希望小売価格
– BMW M5:19,980,000円

※上記のメーカー希望小売価格は、付属品価格、税金(消費税を除く)、保険料、登録に伴う諸費用を含まない車両本体価格。*は、以前に発表済みのモデル。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。