BMWは3月21日(独ミュンヘン発)、Neue Klasse( ノイエ・クラッセ )の設計思想を具現化したスポーツ・アクティビティ・ビークル「Vision Neue Klasse X( ビジョン・ノイエ・クラッセ・エックス )」を初披露した。( 坂上 賢治 )
かつてBMWは「IAAモビリティ2023」で、Neue Klasse思想を範としたBMW Vision Neue Klasseを初公開。未来のセダンの姿に関し、BMWとして明確な未来ビジョンを示した。そして迎えた今春、Vision Neue Klasse Xで未来のXモデルに対するBMWの孤高の姿勢を描くことになった。
そんなVision Neue Klasseに続くision Neue Klasse Xは、早くも2025年からハンガリーのデブレツェン工場でシリーズモデルの生産に入るという。しかも生産面でもNeue Klasseシリーズは、新たな章の幕開けを告げるものとなっている。というのはデブレツェン工場は、数ある世界のBMWグループの製造拠点の中で、初めて化石燃料以外のエネルギーのみで稼働する工場であるからだ。
さて今回提案のBMW Vision Neue Klasse Xでは、Xらしいアクティブな未来のライフスタイル像をカースタイリングを通して示すべく効率性を高めたダイナミクスデザインを提案している。それは一目見ただけでわかるエクステリア領域でのデザイン言語と、明るく広々としたインテリア表現を組み合わせたものとなっている。
対してメカニズム面では、次世代型とされる新BMW iDriveが生み出す特別なドライビング感覚や、室内空間に於けるサウンド・エフェクト効果を介して、自動車にとっての電動化とは何を意味するのか。更にデジタル化とは、過去から幾多の時代を積み重ねてきたクルマに何をもたらすのか。サーキュラーエコノミーの構築が、製品づくりにとってどような革新を示していくのか、その理想の姿をスポーツ・アクティビティ・ビークルとして表現したものだとした。
そこで大きな役割を担うのは、改良されたe-driveユニットに加えて、これまでの角形バッテリーよりもエネルギー密度を20%向上させた円形リチウムイオン・バッテリーだとしている。
これを800Vへ移行させた次世代のパワーシステムと組み合わせることで、充電速度が最大30%高速化。300kmの航続距離を稼ぐために必要な電力を10分で蓄えることができるようになったという。結果、航続距離も最大30%延長した。
エアロダイナミクス性能でも、現行ラインの同等モデル比で、空気抵抗係数を20%削減。EV専用設計のタイヤに組み合わせるブレーキ・システムは、絶対性能を最大25%高めた。
しかもBMWブランドの核心を成すドライビング・プレジャー(駆けぬける歓び)面では、Neue Klasseシリーズのために特別に開発した駆動システムとシャーシ制御技術。加えて第6世代目となる新BMW eDriveテクノロジーを用いることで、次なる段階へと進化させられたと謳っている。
またステイリング面の取り組みでは、Neue Klasse用に新たに開発されたデザイン言語を介して、現行のBMW Xモデルが有する2ボックス・デザインをベースに、グラウンド・クリアランスをより高くできるEV特有のディメンションを採用したことで車室内がより広く使えるようになった。
つまり長いホイールベース、短いオーバーバンク、これにBMWの典型的なプロポーション思想を反映。大型ウィンドー・エリアとパノラミック・ガラス・ルーフは室内へ自然光を注ぎ入れ、印象的な温かみのある色調のクロスと共に、解放感を持たせた大きな空間を設けられたとしている。
このような新たなスポーツ・アクティビティ・ビークルの仕上がりについてBMW AG取締役会のオリバー・ツィプセ会長は、「BMW Vision Neue Klasse Xは、BMW Vision Neue Klasseと共に、未来の我々のモデルラインアップの理想の姿を示したものとなります。
今後Neue Klasseシリーズは、将来のお客様が求める多様なニーズを余すことなく反映させた製品に育っていくでしょう。それは、現在のモデルラインナップと同じく未来に於いても、スポーティなセダンだけなく、そこからの派生させた新モデルや、更にモダンなSAVモデルなど、我々は、未来に於いても多様なクルマが提案するライフスタイルづくりに精力を注いでいくことを意味しています。
というのは、そもそも我々が提案してきたNeue Klasseの製品コンセプトそのものが、実は、これまでのBMWという自動車ブランドを、かつての限られた枠組みを超える新たな企業ブランドへと昇華させていく切っ掛けとなっていくからです。
つまりNeue Klasseは、BMWブランド自体の未来を再定義する存在でもあるのです。今後も我々は真のBMWらしさとは何かを問い続けていくことで、まだ見ぬ新たな世界を切り拓いていくことに挑戦していきます」と述べた。
一方、BMW AG開発担当取締役のフランク・ウェーバー氏は、「Neue KlasseはBMWのドライビング体験が、更なる高みに到達したことの証でもあります。というのは未来のBMWのモデル群には、これまでのモビリティとは異なる全く新しい4つのスーパー・ブレーンが搭載されるからです。
これらの車載コンピューターは、今まで個別に処理されていたものを同時並行的に処理できる高度な性能を備えるものとなります。例えば1つ目の車載チップは、現行比で約10倍のコンピューティングパワーを発揮。この結果、革新的なドライビング・ダイナミクスをもたらすことになります。
また2つ目のチップは自動運転領域で、我々のクルマに大きな飛躍をもたらします。Neue Klasseのシリーズモデルでは、そんな複数の車載チップを1つの高性能コンピューターとして統合。これにより、これまでは実現させることができなかった全く新しい〝駆けぬける歓び〟をご提供できるようになります」と説明した。
最後にBMWグループ・デザイン・ディレクターのエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、「BMW Vision Neue Klasse Xは、Neue Klasse思想を加味したXモデルの未来像を示しています。
つまり電動化、デジタル化、循環社会への適合化などの〝ものづくりの指針〟が、BMWのスポーツ・アクティビティ・ビークルにも適用されるということです。しかし一方で、Xモデルのモノリシック( 一体型表面 )なデザイン言語は、独特な解釈を加えたBMWライト・シグネチャーなどの特徴として受け継がれます。
BMW Xモデルの流れを引き継ぐ新ブランドは、そのルックスにも新時代を迎えるに相応しいアピアランスを主張させています。
例えば縦に並んだLEDユニットは、BMWの象徴的なデザインコンセプトに新鮮な解釈を付け加えるものとなりました。特にフロント中央のBMWキドニー・グリルは、バックライト付きの縦型フレームと共に立体感のある彫刻的なフォルムへと進化させています。
対してリア・セクションは、パワフルでアスリートのような印象となっています。中心部の奥にまで届くリア・ライトは、お馴染みのL字型に水平的な要素を加えたデザインとし、光が可変式に制御される3Dプリント・エレメントは豊かな表現力を湛えています。
またインテリア面では、より環境性能の高い素材を厳選して選択。石油を一切使わずに製造できる100%植物由来の素材が開発・採用されています。海洋プラスチック由来のリサイクルマテリアルも射出成形パーツの材料として初採用しました。結果、廃棄漁網などから採取したこうした二次原料の利用率は、特定の部品では既に30%を超えています。
こうした素材と共に部材や部品の組み立て構成手法も、再検討することで部品自体の分解そのものが容易となってリサイクル率も向上しています。
例えばサイド・スカートとフロント・エプロンおよびリヤ・エプロンの付属品は単一のリサイクル素材で構成。こうした新デザイン・コンセプトは、当社が2021年に発表したBMW i Vision Circularの原則に沿うもので、より広い範囲で単一素材の使用に成功しています」と結んでいる。