ベントレーがル・マン24時間レースで6度目の優勝を飾って20年。また伝統の初レース開催から100年を記念し英国時間の4月12日、コンチネンタルGTクーペとコンチネンタルGTC(ル・マン・コレクション)の限定車を発表した。
そもそもベントレーとル・マンとの長い付き合いは、決して順調なスタートとは言えなかった。
1923年にジョン・ダフ選手がベントレー3リッターを引っ提げ、初のル・マン24時間レースにプライベーターとして挑むと聞いた当時のW.O.ベントレー氏は、「全くクレイジーだ。きっと誰も完走できない。クルマは24時間、そんな負荷がかかるように設計されていない」と語ったと言われている。
しかし、W.O.ベントレー氏はレース開幕目前となる土壇場でラ・サルト・サーキットに駆けつけ、ダフ選手は4位入賞(ガソリンタンクの穴の修理のため長時間中断)と最速ラップを記録した。
翌1924年、ベントレーモーターズはワークスでル・マンに参戦。トップでチェッカーフラッグを潜る。これが7年間で5回の優勝を果たした最初の10年間の始まりとなった。
そんなル・マン初開催から78年後の2001年、ベントレーはEXPスピード8でル・マンに復活。2年後の2003年6月15日の日曜日、ガイ・スミス、トム・クリステンセン選手、リナルド・カペッロ選手の#7が377周を平均時速214.33kmで走り切り、ジョニー・ハーバート選手、マーク・ブランデル選手、デビッド・ブラバム選手の#8がそれに続き6回目となる1位と共に2位も獲得した。
そうした歴史を踏まえた今回のル・マン・コレクションはW12エンジンを搭載。ル・マンで優勝したスピード8 #7のデザインを踏襲したエクステリアとインテリアのディテールがインスパイヤされている。
例えばインテリアでは全モデルに、タッチスクリーン、デュアルパネル、アナログダイアルの3種類から選べるベントレーローテーションディスプレイが装備。
標準装備の12時間表示のアナログ時計の代わりに、特注のデザインの24時間表示のデジタル時計を採用。更に中央の標準ダイヤルの代わりにガラスケースがあり、中には2003年のル・マン優勝車であるベントレー・スピード8の4.0リッターツインターボV8エンジンバルブを入れた。
当該エンジンはコンテスト後に取り外されて保存されていたものを、32本中24本を切断。限定製作のために48個のアーティファクトを作成した。
そんなル・マン・コレクションモデルの製作にあたっては、2003年のル・マンで一世を風靡したダークグリーンのスピード8レーシングカーからインスピレーションを得ている。バーダントグリーンのエクステリアから、フェイシアに描かれたスピード8エンジンの一部まで、全てのディテールで長い歴史に裏打ちされた記憶が刻まれているという。
より具体的には、ル・マンで勝利を収めた2003年のスピード8を綿密に研究。今回、限定販売されるコンチネンタルGTとコンチネンタルGTCはバーダントグリーンで仕上げられ、ボンネット(およびクーペのルーフ)にはムーンビームレーシングストライプが施されている。
ブラックラインスペシフィケーションは、スピード 8のブラックとグリーンのカラーリングにちなんだもので、カーボンファイバー製のスタイリングスペシフィケーションのボディコンポーネントはブラックで仕上げられ、ムーンビームの繊細なピンストライプで飾られている。
ロウアーフロントバンパー、ウィングミラーキャップ、トランクリッドスポイラー下のリアの「馬蹄形」のエリアにはベルーガブラックを採用。ブラックの22インチ10スポークホイール内部には、カーボンセラミックブレーキとレッドのブレーキキャリパーが組み付けられた。
一方、ベントレーらしさを表すマトリックスグリル(もともとは1920年代の未舗装のル・マンのレーストラックでラジエーターを保護するために開発された)は、アークティカホワイトで#7が描かれ、2003年のレースに優勝したナンバーで1924年から1930年の間にル・マンで5回優勝したベントレーのラジエーターのペイントを表現した。
インテリアは、特注されたリースのウェルカムランプがコックピットへと誘う。シートの表面には性能重視の起毛のダイナミカが張られ、インテリアのモノクロームカラーに、コントラストの効いたホットスパーのシートステッチとシートベルトがアクセントとなっている。
ステアリングホイールはハイドとダイナミカで縁取られ、フェイシアとドアウエストレールには、ピアノブラックとハイグロスカーボンファイバーの2種仕上げ。
ボディ各部にはスピード8のシルプレートと6つのリースのトレッドプレートや、光沢があるカーボンファイバーにはめ込まれた6輪のエンブレムがあり、1924年から2003年の間にベントレーがル・マンで記録した6回の完全優勝した実績が刻まれた。
走行性能に関わるパワーユニットは、最高出力659PS、最大トルク900Nmを発揮する6.0リッターW12 TSIエンジン。これにより最高速335km/h、0-100km/h加速3.6秒をマークする。
サスペンションは、ベントレーダイナミックライドとアダプティブダンピングが付いた3チャンバーアクティブエアサスペンションとなっており、これに加えてオプションの新開発カーボンセラミックブレーキ、可変エレクトロニックスタビリティコントロール、オールホイールステアリング、エレクトロニックリミテッドスリップディファレンシャルがセットされる。