Amazon Web Services,Inc.(AWS)と、BlackBerry Limited(本社:カナダ オンタリオ州、CEO:ジョン・チェン、以下BlackBerry)は12月2日、BlackBerryのインテリジェント車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY」の開発・販売を目的とした、複数年のグローバル契約を発表した。
このBlackBerry IVYは、クラウド接続型の高拡張性ソフトウェア・プラットフォームであり、自動車メーカーは、一貫性とセキュリティを維持した形で、車載センサーのデータを読み取り、データを正規化することができる。車内のローカルデータとクラウドデータ、両方の情報を活用し、臨機応変な車載サービスを創造することで、ドライバーと同乗者には魅力的な経験を提供することが可能だ。
BlackBerry IVYは、自動車業界のデータのアクセス、収集、管理に関する問題を解決する。最先端の自動車には、多数のサプライヤーから供給された数千個もの部品が使用され、それぞれ独自仕様のハードウェア/ソフトウェア・コンポーネントを組み合わせられている。こうしたコンポーネントに含まれる車載センサーは多様化が進んでおり、独自の専門的な形式でデータを生成する。データの取り扱いには高度な専門的スキルが必要であるうえ、車載サブシステムからそれらのデータにアクセスすることも難しく、開発者にとっては、革新的な最新ソリューションをいち早く開発し、市場に投入するのは困難であった。BlackBerry IVYは、車載データに機械学習を導入し、予測的な見通しと推論を導き出すことで、こうした課題を解決する。自動車メーカーは、こうしたデータをもとに、ユーザーの嗜好に合わせた乗車体験を提供することができる。
また、異なる自動車モデル/ブランド間で互換性を保証するため、BlackBerry IVYは、複数の車載OSとマルチクラウド環境をサポートする。車載データを表面化・正規化するBlackBerry QNXの各種機能と、IoTや機械学習向けの機能を含む、AWSの広範なサービス・ポートフォリオが基礎となる。BlackBerry IVYは、自動車の組み込みシステム内で実行されるが、管理や構成は、クラウドからリモートで行うことができる。その結果、自動車メーカーは、車載データをより深く把握し、ユーザーのアクセス権をコントロールしつつ、エッジコンピューティング機能により、データの迅速・効率的な処理を最適化できる。BlackBerry IVYの統合機能により、メーカーはクラウド接続型の自動車の製品寿命を通じ、新たな特長や機能、パフォーマンスをユーザーに提供しつつ、車載データを活用することで、新たな収益源やビジネスモデルを開拓可能となる。
一例として、BlackBerry IVYは車載データを活用することで、ドライバーの行動とともに、路面凍結や渋滞などの危険な状況を認識し、トラクションコントロール、車線逸脱防止支援、アダプティブクルーズコントロールなど、関連する安全機能の起動をドライバーに促すことができる。BlackBerry IVYはその後、安全機能の使用時期・状況に関するフィードバックを自動車メーカーに送信する。これによってメーカーは、車両性能を向上させるための、ターゲットを絞った投資が可能となる。さらに、電気自動車のドライバーの場合、自動車のバッテリー情報と、サードパーティの充電ネットワークとの共有を選択することで、充電コネクターを事前予約し、ドライバーの現在地や旅行プランに合わせて充電時間を調整できる。
また、BlackBerry IVYは、10代のドライバーの保護者に、車載センサーから得られたデータに基づき、情報を提供することができる。これは車内の人数が変わった際や、ドライバーによる携帯電話の使用が疑われる状況、制限速度の無視、あるいは、自動車の人数が保護者の設定を超えた場合などに適用され、通知を受け取ることが可能だ。同様に、幼児の保護者であれば、後部座席の幼児の存在を検知した場合に、チャイルドセーフティロックの使用を促すリマインダーを受け取ることもできる。
BlackBerry IVYを使用すれば、複数の自動車ブランド/モデルを対象に、最新の車載アプリケーションやネットワークサービスの開発、導入、収益化に要する期間を短縮することができる。複数の自動車モデルに対応した新サービスの共通のビルディングブロックとして、多種多様なデータを活用可能で、今後は現行製品のように自動車のモデル単位で単発ソリューションへの投資を強いられることはなくなる。また、プラットフォームのアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を使用すれば、ソフトウェア開発チームとの間でデータや出力の共有が行え、車載/アプリデータへのアクセス権や情報レベルをコントロールすることで、イノベーションを実現しつつ、ユーザーのプライバシーやセキュリティも保護することができる。
さらに、BlackBerry IVYでは、より幅広い開発者とのコラボレーションを、より簡単に行うことができ、車両性能の向上、保守・修理コストの削減、利便性の拡大につながる新たな製品・サービスを短期間で開発できる。具体的には、性能データをリアルタイムで分析することで、欠陥の可能性がある部品の初期兆候を確認し、対象車両を特定するコードを展開し、対象ドライバーに通知を行い、ターゲットを絞ったリコールを実施できる。プラットフォームのクラウドコンソール(BlackBerry IVYの管理用のWebインターフェイス)から、ソフトウェアの導入とアップデートをリモートで行うことで、自動車メーカーはシステムの機能性を継続的に向上させることが可能だ。
BlackBerryの執行会長兼CEOであるJohn Chenは、このソフトウェア・プラットフォームは、車内で提供する経験のこれまでの概念をくつがえし、安全性、セキュリティ、ユーザーのプライバシーを犠牲にすることなく、新たな用途、サービス、機会の創造に役立つことを約束すると述べている。
Amazon Web Services, Inc.のCEOであるAndy Jassy氏は、AWSとBlackBerryのコラボレーションによって、すべての自動車メーカーは、カスタマーエクスペリエンスを刷新し続け、自動車は固定されたテクノロジーの集合体から、ユーザーのニーズや嗜好に応じて成長・適応可能なシステムへと生まれ変わると述べる。メーカー各社がデジタルトランスフォーメーションでしのぎを削る中、BlackBerry IVYによって、自社のブランドを構築できると同時に、自動車業界全体でコネクテッドカー向けサービスの基準を確立できるとしている。
■アマゾン ウェブ サービス(AWS)
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