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2023年8月18日【イベント】

アウトモビリ・ピニンファリーナ、EVバルケッタを公開

坂上 賢治

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ピニンファリーナSpA傘下の新たな自動車ブランド、アウトモビリ・ピニンファリーナ(Automobili Pininfarina)は8月17日(米国東部時間)、モントレー・カー・ウィーク2023に於いて、同社初の全電動バルケッタの「B95」を披露した。( 坂上 賢治 )

 

イタリア語の直訳でバルケッタ(小舟/Barchetta)と称される当該カテゴリ車は、同国に於いてオープントップの2人乗りスポーツカーを意味するもの。

 

従って命名されたB95の「B」は先のバルケッタに由来であり、続く「95」は、もはや伝説と言うべきピニンファリーナSpAの95周年目にあたる2025年に納車されるクルマである事を示唆する数字が続くものとなっている。

 

 

なお、このB95は、ピニンファリーナの社内デザイナーが関わった次世代の電動車を定義する3次元マニフェスト〝ランチア・プーラ・デザイン(Lancia Pu+Ra Design)〟からインスピレーションを得たクルマであるという。

 

実際、そのプーラの3次元マニフェストが示す通り、アウトモビリ・ピニンファリーナのデザイン哲学は、エレガントなシルエットとドラマチックなプロポーションが持ち味となっている。

 

 

そこで確立された原則はB95にも反映され、クラシック・レースカーのエッセンスと未来要素のバランスを保ちつつ、独自のデザイン哲学を貫いている。

 

そのフロントノーズには、ドライバーの姿勢に合わせて調整可能な世界初のツイン エアロスクリーンが搭載されており、これにより独特の車両シルエットを崩すこと無く乗員を保護。究極のドライビングエクスペリエンスを可能にすると謳っている。

 

車両の足元には、マットブラックで仕上げられたフロント20インチ / リア21インチの鍛造アルミニウムホイールが装備され、露出したアルミニウムのマット精密研磨のアウターとのコントラストが輝く。

 

 

センターロックリングは、ブラックのブラッシュドアルミニウムアルマイト仕上げで、ブレーキキャリパーは、エクステリアのアクセントにマッチしたGiallo Arneis製だ。

 

インテリアは、クラシックなレースカーと未来的なデザインを融合させたもので、コンセプトカーからインスピレーションを得たダッシュボードとキャビン環境により、充分な安全が確保される。

 

ドライバーとして運転席から見ると、広大なダッシュボードがエクステリアと一体化しているように見え、ボンネットの特徴的なラインがキャビンまで伸びる。

 

ダッシュボードそのものは、特注のエンボス加工を施したタン・サステイナブル・ラグジュアリーレザーで装飾されており、対照的に他の部分はブラッシュド・ブラック・アルミニウム陽極酸化で仕上げられている。

 

同様にタン・サステイナブル・ラグジュアリーレザーで仕上げられたシートは、クラシックなレースカーからインスピレーションを得たもので、乗員の周りでカーブするように設計されている。

 

どちらのシートもドライバーとパッセンジャーを包み込むような形状になっており、独自のアルミニウムインサートを備え、快適さと乗員の保護を両立させている。

 

電気溶接されたピニンファリーナのロゴがあしらわれたヘッドレストは、千鳥格子のテキスタイル素材で仕上げられ、黒と黄褐色のコントラストステッチがシート、ドアインテリア、ダッシュボード全体に施された。

 

 

この次世代の全電動バルケッタB95について、アウトモビリ・ピニンファリーナのパオロ・デッラハ最高経営責任者(CEO)は、「このクルマの誕生は、過去から連なるピニンファリーナの歴史を踏まえても、最もエキサイティングな章にあたるものです。

 

それは一連の3要素のうちの3つめのピースです。まず最初のピースは、初代F1世界チャンピオンのバティスタ・エディツィオーネ・ニーノ・ファリーナ。ふたつめは、我々にとって新しいデザイン哲学となったランチア・プーラ・デザイン(Lancia Pu+Ra Design)による3次元マニフェストの発表。

 

そして最後のピースは、古典的なモータースポーツのテーマと最新の技術革新、素材、プロセスを融合させることで何が生まれるかを示したところにあります。

 

実際、B95はバティスタが示した熱意と強い意志を取り入れながらも、ドライビング・エクスペリエンスの新たな次元を再定義し、改めて未来のドライビングの喜びを示すもとなりました。それは、電動車が示す並外れたパフォーマンスを介したスリルと爽快さが結実したものとなるでしょう。

 

この限定生産車は、僅か10台のサンプルカーとしてカンビアーノのアウトモビリ・ピニンファリーナ・デザインチームの手によって細心の注意を払って僅か10台のみ生産され、ピニンファリーナSpAの95周年を祝う2025年に納車される予定です。

 

アウトモビリ・ピニンファリーナは、世界で最も名高いプレミアムなユーザーに向けワンオフカーを製作してきた数十年の経験を持つピニンファリーナSpAとの協力により、卓越した品質の製品を生み出すことになります。我々は、そんな近未来のシーンを今から想像して心待ちにしています」と述べた。

 

 

一方、アウトモビリ・ピニンファリーナの最高デザイン責任者であるデイブ・アマンテア氏 は、「PURAのデザイン哲学の中心には純粋さがあり、そこにはピニンファリーナの過去の象徴的な仕事を超越したデザイン哲学が織り込まれています。

 

B95は、まさしくバルケッタのボディ形状を印象的に解釈したモデルです。洗練された時代を超越したラインは、技術的なディテールと対照を成し、純粋で美しいデザインを生み出しています。B95のフットプリントは洗練されたキャビンへのオープンアクセスを備えたエレガントなボディによって強調されています。

 

そんなバルケッタのシルエットは美しく、クラシックなプロポーションと絶妙なディテールの組み合わせにより、私たちは本当に特別なものを生み出すことができました。

 

そうしたB95に関わるデザインの手仕事は、フロントフェンダーまで一体的に包み込むボディワークによって認識頂けると思います。ホイールアーチのデザインシルエットは、車両が内包しているパワーを暗に示し、そこから高めのスウェッジラインがアウターボディへと繋がり、見事な筋肉質の外観を与えています。

 

またB95を上から見ると、PURAデザインのDNAが直ぐに判ります。ルーフを持たないオープンな車室内空間、シート、調整可能なエアロスクリーン、各乗員後方にドームを組み込みつつキャビンスペースを再定義しました。このビューからはB95を定義する4つの明確なシルエットラインが内包されており、そこにはPURAビジョンコンセプトとの繋がりが見え隠れしています。

 

B95のオープントップ・ドライビング・エクスペリエンスは、電子的に調整可能なエアロスクリーンによって高められます。それはビンテージな戦闘機からインスピレーションを得た透明なポリカーボネートによる造形でありながら、現代に相応しい快適性を併せ持っています。

 

車両をオーダーしたお客様は、それぞれにカスタマイズしたB95仕様に合わせて、オーダーメイドのヘルメットも注文できます。そうしたアクセサリーによって、ドライバーは一般道路やサーキットでB95のパフォーマンスを安全かつ心ゆくまで愉しむことができます」と語っている。

 

 

更にアウトモビリ・ピニンファリーナのアンドレア・クレスピ最高技術責任者は、「B95は、単純な全電気式のハイパー・バルケッタとして設計することもできましたが、私たちはそれを遙かに超えたものにしたかったのです。

 

それは最新のテクノロジーを駆使して、人々が所有したいと思う乗り物であり、スリル満点なドライビングプレジャーを提供することでもあります。

 

例えば調整可能なエアロ スクリーンを設けるための技術は、二輪のグランプリレースからインスピレーションを受けています。そうした技術によりオープントップドライビングのスリルを味わいながらも、快適な高速走行も両立できています。

 

 

そんなB95は最先端のパワートレインを搭載し、0-90mph加速は2秒未満、最高速度は300km/h 以上となります。そのために1400kW (1900 PS) のピーク出力を発生する大容量120kWhリチウムイオン バッテリーを搭載しています。

 

T字型の液冷式バッテリーパックは、強力かつ軽量のカーボンファイバーハウジング内で保護されており、最大270kWのDC 急速充電器を使用して充電でき、僅か25分で20~80%まで充電できます。

 

 

この電力は、各車輪を駆動する4つの独立した高性能電気モーターを介して道路に供給されます。5つの異なるドライブ モードはフルトルク・ベクタリング・テクノロジーを活用し、ドライバーが好みや運転条件に合わせてパワー供給とハンドリングを調整できるようにします。

 

運転時のダイナミクスを調整するための運転モードはCalma、Pura、Energica、Furiosa、Carattereの5 つ。これらはステアリング ホイールの横にあるスポーティなロータリーセレクターを介して有効になります」と説明した。

 

 

モントレー・カー・ウィークでは、7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでデビューしたババッティスタ・エディツィオーネ・ニーノ・ファリーナ・ハイパーGT、PURA Visionデザインコンセプトと並んでワールド・プレミア・カーに選ばれている。生産車の販売予定価格は440万ユーロからとなっている。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。