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2024年9月3日【新型車】

アウディの新型Q5 SUVはキープコンセプトで第3世代へ

坂上 賢治

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新型モデルは製品ラインアップ刷新に於いて重要なステップを示す

 

2008年に初代モデルが登場して以降、15年以上に亘って欧州のミッドサイズセグメントを牽引してきたAudi Q5 SUVは、新たなインフォテインメントシステム、カスタマイズ可能なデジタルライトシグネチャー、最先端の運転支援システムを備える第3世代を迎えた。

 

AUDI AG取締役会会長のゲルノート デルナー氏(Gernot Döllner)は、この新型Audi Q5について、「Audi Q5は、15年以上にわたりアウディのミッドサイズクラスにおける最も成功し、最も重要なSUVモデルとして親しまれています。

 

 

新型モデルは、その特長を更に進化させたものです。この新型Q5は、新世代の高効率内燃エンジンを搭載した2番目のモデルとして、アウディのポートフォリオを若返らせる役割を担っています。ダイナミックなSUVデザインを持つスポーティなオールラウンダーである新型Audi Q5が、新たなサクセスストーリーを歩むであろうことを私は信じています」と述べた。

 

そんなQ5 SUVは新型Audi A5モデルと同様、プレミアムプラットフォームコンバッション(PPC)をベースとした歴代2番目にあたるモデルでもある。このプラットフォームによりアウディは、異なるセグメントで高い技術基準を持つ量販モデルを幾つも展開することが可能になった。アウディは、PPCゆえの柔軟性により、今後の将来モデル展開で多様なキャラクター性を持たせることができるようになった。

 

モデルライフサイクルの後半にはプラグインハイブリッドもに加わる予定

 

そんな新型Audi Q5 SUVモデルは欧州に於いては3つのエンジンバージョンで市場され、それ以降に新たな駆動ユニットの組み合わせが追加される予定だ。まずは市場への初投入される際は、全バリエーションがMHEV plusテクノロジーを搭載し、最大18 kW(24 PS)のオンパワーを備えることになる。また全てのモデルは7速Sトロニックデュアルクラッチトランスミッションの組み合わせとなる。

 

 

エントリーレベルのエンジンは、2.0 TFSIで150 kW(204 PS)、340 Nmの最大トルクを発揮し前輪駆動が標準。オプションでquattro四輪駆動システムも選択可能だ。Audi Q5には、EA288 evo世代の2.0 TDIも用意されており、こちらは150 kW(204 PS)、400 Nmのトルクを発揮し、quattro四輪駆動システムのみが提供される。Audi SQ5は、シリーズのトップモデルとして市場投入され、排気量3.0リットルV6 TFSIは270 kW(367 PS)を発揮、最大トルクは550 Nmなる。

 

いずれもこれに48 Vの電動システムを組み合わせた新しいMHEV plusシステムであり、これによって内燃エンジンをサポート。CO2排出量を効率的に削減しながらパフォーマンスとドライビングフィールの快適性を両立させる。

 

また新しいパワートレインジェネレーター(PTG)は、電動走行を可能にするべく、最大230Nmの追加駆動トルクと最大18 kW(24 hp)のパワーを生成。内燃機関の負担を軽減して、燃料消費を削減するのに役立つ。併せて減速時には、パワートレインジェネレーター(TSG)が最大25 kWのエネルギーをバッテリーへ回生。回生を受け続ける(MHEV plusの)リチウムイオンバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池で1.7kWhのストレージ容量を持つ。

 

 

FSD等によりアウディ特有のほぼ中立的なステアリングフィールも実現

 

これにより一時的にエンジンが停止している時の限られた範囲内であるがバッテリーEVのような純粋な電動走行や駐車時に於ける扱い易さ可能にする。48 Vのシステムにより、電動エアコンコンプレッサーの使用も可能。エアコンがフルパワーで稼働を続けられ、車内を快適な温度に保つことができる。なお新型Audi Q5のモデルライフサイクルの後半には、大容量バッテリーと外部充電オプションを備えたプラグインハイブリッドもラインアップに加わる予定だ。

 

ハンドリング面では、アウディ特有のほぼ中立的なステアリングフィールを実現。標準モデルでは、そうしたステアリング特性を支えるべく、パッシブダンピングシステムFSD(Frequency Selective Damping)と俊敏性を高めたフロントアクスルと組み合わせることで、安定性をより高めたスチールサスペンションが装備される。

 

このFSDは、特に高頻度の振動(例えば石畳の上など)に対してはダンピング力を減衰しつつ、低頻度の振動(レーン変更やコーナリング時など)に対して高いダンピング力を維持させる特性となっている。

 

対してオプションで装備できるエアサスペンションは、アダプティブダンパー制御が利用可能で、その基本設定はアウディ ドライブセレクトを介して個々の要件に合わせてフレキシブルに調整でき、オプションではスポーツサスペンション(Audi SQ5は標準装備)も選択できる。

 

 

車両グレードは3つのバージョン、ボディ色は11色のバリエーションを用意

 

車両グレードは、ベーシック、アドバンストエクステリア、そしてS lineエクステリアの3つのバージョンが用意される。更にSモデルには独自のエクステリアデザインが施されている。

 

特にS lineエクステリアおよびSモデルでは、フロントエアインテークが大きく、L字を描くような空力ダクトとしてデザインがなされた。リヤのディフューザーは一段とスポーティに。またS lineエクステリアおよびSモデルには、ブラックエクステリアパッケージも用意される。

 

ボディ色は11色のバリエーションを用意。アルコナホワイトのソリッドペイント仕上げの他、メタリックペイント仕上げではグレイシャーホワイト、ミトスブラック、フロレットシルバー、ナバーラブルー、グレナディンレッド、ディストリクトグリーン、そして新色のタンボラグレーがある。加えてSモデルまたはエクステリアS line専用のウルトラブルーメタリック、デイトナグレーパールエフェクト、新色のサキールゴールドメタリックも用意される。

 

これら新型Audi Q5ファミリーは、これまで8年間に亘ってメキシコで製造されてきたが、今回の新型Q5もプラグインハイブリッドバリエーションも含めサン ホセ チアパ(San José Chiap)で生産される。

 

 

Audi Q5ファミリーは、2024年9月からドイツで注文開始となる見込み

 

サン ホセ チアパ工場は、資源を効率的に使うことを目指した生産拠点で持続可能な水の使用を実現するロールモデルとされており、アウディ メキシコはCO2ニュートラルな生産に向けた最終段階にある。この工場は、効率的な水管理に関してAlliance for Water Stewardship(AWS)の基準に基づいて認証された世界初の自動車工場だ。

 

この認証は、逆浸透水処理システムや専用の貯水池に雨水を集めるシステムなど、水の持続可能な利用を実現するための多くの対策の成果によるもの。工場では年間15万立方メートルの水を節約しており、これはオリンピックサイズのプール60個分に相当する。

 

加えてその他の効率的な廃棄物管理により、工場で発生する廃棄物のリサイクル率は90%を超える。それはプレス工程からの金属くずなどの材料のリサイクルに加え、部品の包装に至るまで一貫してプラスチック廃棄物を出さないよう努めている。現場には専門家を置き、使い捨て材料の使用を最小限に抑えるために、通常のプラスチック包装に代わる代替品も開発した。

 

最後にこの新型Audi Q5 SUVおよびAudi SQ5 SUVは、2025年第1四半期にドイツおよび多数のヨーロッパ諸国で発売される。より具体的にAudi Q5ファミリーは、2024年9月からドイツで受注開始となる見込みだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。