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2025年3月25日【新型車】

アウディ、新世代EVの「Q6 eトロン」を日本国内販売へ

坂上 賢治

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PPEベースの最初の市販モデル。アウディの新しいステップを示すモデルに

 

アウディ ジャパンは3月25日、東京都内に報道陣を募り電動( BEV )プレミアムミッドサイズSUVの「Audi Q6 e-tron」と、同スポーツグレードの「Audi SQ6 e-tron」を発表した。販売は全国のアウディ正規ディーラー( 123店舗、現時点 )から4月15日の発売となる。( 坂上 賢治 )

 

 

Audi Q6 e-tronシリーズは、アウディがポルシェと共同開発したハイパフォーマンスBEVプラットフォームPPE( プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック )をベースにした初の市販モデルシリーズとなる。

 

ちなみにアウディのSUVシリーズは統一して「Q」の冠文字としており、それに続く数字が車格のサイズを示している。Audi Q6 e-tronシリーズのボディサイズは、全長4,770mm、全幅1,940mm、全高1,695mm、ホイールベース2,895mmとゆったりしたプロポーションが特徴となる。先の通りポルシェとの共同開発で生まれたPPEの採用も相まって、長いホイールベースと短いオーバーハングも特徴としている。

 

 

エクステリアデザインは、全体的に大柄で抑揚のあるボディをソフトなボディラインを組み合わせてソフトな印象を与えたもの。アップライトなフロントエンドは、完全に閉じられた立体的な造形のシングルフレームとサイドエアインテークでフロントフェイスを際立たせている。

 

ここで新世代のQシリーズを体験しているものに、高い位置に配置されたデジタルデイタイムランニングライトがある。

 

これは、調光可能な計61個のLEDライトで形成されており、車載ソフトウエアを介して光の強さが変化しないよう調整された上で最大8パターンのライティングを選択可能としている。これが発光時に多彩な表現を見せることで、Audi Q6 e-tronオーナーに対して、アウディブランドの独自パーソナライズ性を強調している。

 

またこうした機能は、単なるラグジュアリー表現のひとつということだけでなく、例えば乗員が車両から降りる際や、前方に障害物を検知した際、周囲のドライバーや歩行者などに特定のライトシグネチャーで警告するような安全訴求にも役立つ。

 

 

アウディらしさを失うことなく、持ち前の「テクノロジーの可視化」を表現

 

その前後のフォルムに続くサイドビューは、力強さを訴求するウエストのボディラインがリヤに向かって伸びつつ、その上面のウィンドウエリアは車両後方に向かってわずかづつ細くなっていき、緩やかに傾斜したDピラーが張りのあるショルダー部分に流れ込む形状となっている。

 

この流れのなかでDピラーとルーフの間には、ブラック基調の縁取りがスパイスをなっていて、これらがキャビンをより長く見せる印象を与えている。また先のリヤライトからリヤドアへと流れるふくよかなラインはアウディのデザインDNAに於ける重要な要素であり、アウディでは、これを「テクノロジーの可視化」と表現している。

 

 

対して室内空間の設えは、エルゴノミクスデザインを範としているため、空間の奥行きを感じさせるものとなっている。ドライバーズシート前面のダッシュボード内には、11.9インチのバーチャルコックピットと14.5インチのタッチデイスプレイが組み付けられるものの、旧来から受け継ぐオーナーカーらしいスタンダートかつ落ち着きある造形となっている。

 

 

そのコクピットの流れはパッセンジャーエリアにも及び、10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイを介して、前席乗員に鮮明なデジタル画像を映し出す。これにより、運転中のドライバーの注意散漫を防ぎながら、助手席では映画やビデオコンテンツのストリーミング再生、ナビゲーションルートの共有、充電ステーションの検索などが可能としている。

 

またドライバー向け機能の改良点としては、オプションのAR( 拡張現実 )ヘッドアップディスプレイもある。これはドライバー前方のフロントガラスに、速度、道路標識、アシスタンスシステムの情報、ナビゲーションシステムのシンボルなどを示すものだが、これら拡張現実機能の情報はドライバーの視点から約88インチの大きさで表示され、視認性が大きく高まっている。これにより、ドライバーは不要なストレスや気が散ることなく、運転に集中することができる。

 

そのダッシュボート脇から室内へ配されるトリム素材は、ふくよかなソフトさを与えつつ、シートと同じカラーと素材を活用してコックピットからドアサイド。センターコンソールから後席空間へとシームレスな広がりを感じさせるもので、全ての乗員を統一したスペースに包み込んでいる。

 

AUDI DNAを引き継ぐ伝統的なデザインスタディとサステナブル素材を融合

 

なお同社によると採用された内装材には、レザーフリーマテリアルを筆頭に極力リサイクル素材を採用しているという。例えばS lineパッケージには、100%リサイクル素材を使用した更に環境性能を高めたオプション設定も用意されており、こうした部分がeモビリティにシフトするアウディの新しいラグジュアリーの姿を示しているのだと同社では謳っている。もちろんそれでも表情豊かな素材感が失われることなく、それらはアウディ流の新世代ラグジュアリー表現のひとつということなのだろう。

 

なお人の肌に触れる素材には、柔らかな素材を多様する一方で、コントロールスイッチ類には高品位な印象のハイグロスブラックが採用されており、車両との対話ためのタッチフィーリングは、ドイツ車らしい表現となっている。

 

一方で物理的な室内空間を示すものとして、BEVならではのセンタートンネルのない室内設計が光る。それは後席空間の快適性を高める結果となっており、その広報へ続くトランク容量は526ℓのスペースを持つ。もちろんリヤシートは3分割( 40:20:40 )となっているから、積載容量は最大1,529ℓまで拡大する。おまけにボンネット下のフランク( フロントトランク )にも64ℓの収納スペースが確保されている。

 

 

パフォーマンス面では、パワフルさを増した電気モーターと新開発されたリチウムイオンバッテリーによって、一充電あたりの走行距離を大きく伸ばしている。新たなリチウムイオンバッテリーは12のモジュールと180のプリズムセルで構成され、総容量100kWh( 総電力量94.9kWh )を誇る。

 

これにより、Audi Q6 e-tronは185kW出力モデルで569km、285kW出力モデルで644km 、スポーツグレードAudi SQ6 e-tronでは672kmの一充電走行距離を実現させていることからロングドライブにも安心して出かけることができる車両と言えるようになった。

 

スポーティドライビングの爽快さと効率を両立させたパフォーマンス

 

クルマとしての走行性能では、後輪駆動のAudi Q6 e-tronは83kWhのバッテリーと185kWを発揮する1基の電気モーターをリヤに搭載し、0~100km/h加速は7.0秒。Audi Q6 e-tron quattroは、100kWhのバッテリーを搭載して285kWのシステム出力を発揮し、0~100km/h加速は5.9秒。スポーツグレードのAudi SQ6 e-tronは、同じく100kWhのバッテリーを搭載して最大360kW( ローンチコントロール使用時は 380kW )のシステム出力により0~100km/h加速は4.3秒( ローンチコントロール使用時 )、最高速度は230km/hに達する。

 

駆動システムの具体的な最大出力は、後輪駆動のAudi Q6 e-tronが185kW( ローンチコントロール起動時は215kW )、quattro四輪駆動のAudi Q6 e-tron quattroが285kW、そしてAudi SQ6 e-tronが360kW( Audi SQ6 e-tronのローンチコントロール起動時は380kW )。

 

 

後輪駆動モデルのリヤアクスルにはヘアピンコイルを採用する最大トルク450Nmを発生するPSM( 永久磁石同期モーター )が搭載される。一方、quattro四輪駆動モデルのリヤアクスルには共通のヘアピンコイルを採用する580NmのPSMを備え、フロントアクスルには、同じく共通の最大トルク275Nmを発生するASM( 非同期モーター )を搭載する。

 

これにより力強い加速力に加えて駆動トルクを配分することによりハンドリング性能を高めた。パワーユニットの安定性を高めるためドライサンプ方式の新冷却システムを採用しているから、パフォーマンス性能の持続力についても耐性を持たせている。

 

新設計されたバッテリーと手厚いチャージング網により距離に係る不安を低減

 

気になる日常の充電では標準バッテリーには800Vテクノロジーを採用。充電に際して接続先の充電器にも左右される訳だが、少なくとも欧州では最大充電出力は270kWに達し、最適な急速充電ステーション( High Power Charging:HPC )を利用すれば約21分で充電レベル( SoC )を10%から80%まで引き上げることができる。

 

もちろんアウディの場合、日本国内でも可能な限り100%カーボンフリー電力を提供したいとするAudi charging hub( アウディ・チャーシング・ハブ )紀尾井町をはじめとするアウディ販売店設置のChAdeMO充電器などを介して国内最大出力の150kWチャージを利用できる。

 

この場合は、最大135kWの急速充電に対応し約35分で充電レベル( SoC )を10%から80%まで引き上げることが可能だ。家庭向けや公共施設に多い8kWのAC充電にも対応している。また昨今は、アウディが用意したチャーシング・ハブだけでなく、LEXUSの高品位の充電網も相互連携を高めて利用できる仕組みが広がっているから、今後はそうしたネットワークの利活用も進むものと見られる。

 

実際、車両発表に於ける会見で、アウディブランド ディレクターを務めるマティアス シェーパース氏は、他社ブランドであっても双方に連携するメリットがあれば、高品位な充電ステーション間の連携については積極的に進めたい。そうして全国でBEVを便利に利用できる環境整備を進めて、日本国内のカーボンニュートラル環境を大きく広げていきたいと話していた。

 

 

日常の制動プロセスの約95%を回生、最大220kWのエネルギーを回生する

 

なおAudi Q6 e-tronは、日常の制動プロセスの約95%が回生ブレーキによって行われ、最大220kWのエネルギーを回生できる。これにより航続距離の最大化と高効率なエネルギー活用が可能としている。

 

また車体の構造上、コントロールアームがサスペンションアームの前方に配置されていることから高電圧バッテリーのレイアウト最適化に寄与する。併せてサブフレームに固定されたステアリングラックやアクスル構造によってステアリングの応答性が向上。プログレッシブステアリングとフリークエンシーセレクティブダンパーシステムを備えたサスペンションが、快適性と路面追従性をさらに高められる仕組みとなっている。

 

更にAudi Q6 e-tronのquattroモデルでの場合は、リヤアクスルへのトルク配分が更に効率化される。またフロントとリヤで異なるサイズの電気モーターを搭載していることからフルロード時でもリヤ重視のパワー配分を維持する。

 

なお今回の車両ラインナップには、Audi Q6 e-tronの世界的な販売を記念してた限定モデルAudi Q6 e-tron edition one greyとedition one blueも含まれる。2つの限定モデルは、Audi Q6 e-tron quattroをベースに、スポーティなS lineパッケージ、ブラックAudi rings & ブラックスタイリングパッケージを筆頭にファンクションパッケージ、テクノロジーパッケージ、ラグジュアリーパッケージの5つのオプションパッケージを標準採用した。

 

更に専用のダークヘッドライトハウジングや存在感のあるレッドブレーキキャリパー、Audi Sport製21インチアルミホイールを特別装備。インテリアにも、同じく特別装備のハイテックメッシュアンスラサイトのデコラティブパネルを採用するなど、細部にまで拘った限定モデルとなっており、日本市場では、edition one greyを100台、edition one blueが30台を限定販売される。

 

加えてこれは車種を問わずe-tronシリーズの新車を購入した場合、アウディが加盟する国内最大級の急速充電器ネットワークPCA(プレミアム チャージング アライアンス)の利用登録後1年間、月額基本料金/都度充電料金が無料となる。詳細は当該ウェブサイト( https://www.audi.jp/e-tron/purchase_support/#campaign )を閲覧されたい。

 

最後にAudi Q6 e-tronモデルファミリーは、アウディの本社があるドイツ・インゴルシュタット工場で生産される初のBEVとなる。車両生産にあたっては既存の構造とシステムを活用。PPEは約148,000m²の敷地に建つインゴルシュタット工場で製造されており、ボディは既存の組立ラインに於いてシームレスに統合される。

 

 

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モデル:Q6 e-tron
電気モーター最高出力 / 最大トルク:185kW / 450Nm
バッテリー総電力量:83kWh
駆動方式:RWD
ステアリング:右
車両本体価格(税込):8,390,000円

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モデル:Q6 e-tron quattro
電気モーター最高出力 / 最大トルク:285kW / 580Nm
バッテリー総電力量:100kWh
駆動方式:quattro
ステアリング:右
車両本体価格(税込):9,980,000円

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¥モデル:SQ6 e-tron
電気モーター最高出力 / 最大トルク:360kW / 580Nm
バッテリー総電力量:100kWh
駆動方式:quattro
ステアリング:右
車両本体価格(税込):13,200,000円

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以下限定モデル edition one

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モデル:Q6 e-tron edition one grey
電気モーター最高出力 / 最大トルク:285kW / 580Nm
バッテリー総電力量:100kWh
駆動方式:quattro
ステアリング:右
車両本体価格(税込):12,380,000円

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モデル:Q6 e-tron edition one blue
電気モーター最高出力 / 最大トルク:285kW / 580Nm
バッテリー総電力量:100kWh
駆動方式:quattro
ステアリング:右
車両本体価格(税込):12,530,000円

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*映像は海外仕様(なお近々、国内仕様のプロモーションCMもTV配信される予定。また今後、大阪・関西万博開催時の最寄りの夢洲駅でも独自のプロモーションが行われる予定としている)

 

Audi Q6 e-tron 特設ページ
https://www.audi.co.jp/ja/models/q6-e-tron/audi_q6_e-tron/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。