アウディジャパンのマティアス・シェーパース ブランドディレクター
新店舗を舞台にアウディ・サステナブル・フューチャー・ミーティングを実施
アウディジャパンは1月27日、国内初のカーボンニュートラルショールーム及び同サービスセンターを実現・併設した店舗「アウディ浜松」を報道陣に公開した。同店舗は、CO2排出量実質ゼロの電気とガスを使用。建屋上に設置した400枚のソーラーパネルなどを介して来店するEV( 電気自動車 )への充電を再生可能エネルギーを以て提供する事を表明。
予てより材料調達を含めた生産から車両使用。更に廃棄へと至る自動車のライフサイクル全域で、脱炭素化を推し進めるべくアウディブランドが目指す姿勢を、販売・サービス面で強力に支えていく最新鋭店舗となっている。( 佃モビリティ総研・松下次男 )
併せてアウディジャパンは同日は、この日本発のカーボンニュートラル店舗の公開に合わせ同店舗を舞台に「アウディ・サステナブル・フューチャー・ミーティング( Audi Sustainable Future Meeting )」と名付けたイベントを実施した。
この催しの冒頭で登壇・挨拶したアウディジャパンのブランドディレクターであるマティアス・シェーパース氏は「今日は画期的なモーメントの日」と述べた上で、CO2(二酸化炭素)ニュートラルの実現には「EVが再生可能エネルギーと繫がる事こそが重要」と強調。
脱炭素社会を目指す「SDGs( 持続可能な開発目標 )のサスティナビリティを日本で促進する」とし、それを「パートナーとともに歩みたい」と話した。
サーラカーズジャパン、傘下店舗網でもカーボンニュートラル推進へ
日本初のカーボンニュートラルショールーム&サービスセンターを実現したアウディ浜松を運営するのは、エネルギー事業を中核にサーラ―グループを統括するサーラコーポレーション( 本社:愛知県豊橋市、代表取締役社長兼グループ代表CEO:神野吾郎 )傘下のサーラカーズジャパン。
サーラコーポレーション代表取締役社長兼グループ代表 神野吾郎CEO
同社グループ企業は、事業の起源となった都市ガス事業( 浜松瓦斯株式会社として明治43年に設立 )を基盤に、地域に根ざした総合生活関連ビジネスを標榜して今や40社を超える企業グループに成長。
その中でサーラカーズジャパンは、愛知県・静岡県・東京都にアウディ正規ディーラー3店舗( 別途、認定中古車拠点2店舗 )とフォルクスワーゲン正規ディーラー9店舗( その他、認定中古車センター4店舗 )を運営( 同社グループ初の自動車販社は平成3年に立ち上げたファーレン豊橋が皮切り )しており、同社の坂爪謙治 代表取締役社長は、将来的にこれらの店舗全てで「カーボンニュートラルを目指したい」と述べた。
サーラカーズジャパン坂爪謙治 代表取締役社長
なお独・本国のアウディは、EV戦略に積極的であり、2026年以降に全世界に発表するモデルは全てEVにすると表明。2033年を最終期限に、内燃エンジンの生産は段階的に廃止する事を掲げている。
炭素中立を実現する多彩な設備で国内発のカーボンフリー店舗を実現
これを受けて、日本でもEVシフトを進めると共に、インフラの急速充電ネットワークを加速させている。
先週に都内で行われた年頭記者会見でも、アウディジャパンはパワーアップした150キロワット( kW )の急速充電スポットを国内100店舗強に設置する方針を打ち出す他、自然エネルギーの普及・蓄電・送電の新規事業を展開するパワーエックス( 本社:東京都港区、取締役兼代表執行役社長CEO:伊藤 正裕 )と、国内アウディe-tron店への蓄電池搭載型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー( Hypercharger )」の導入・展開で、協業検討へ向け覚書を締結した。
ディーラーショールーム及びサービスセンターでのカーボンニュートラルの実現は、こうした取り組みを示す独・アウディの脱炭素化に対する意欲を販社が汲み取ったもので、先のシェーパース・ブランドディレクターも「クルマ利用時を含めたバリューチェーンでのネットフリー化」の実現の重要性を示している。
公開されたアウディ浜松は、屋上に設置したソーラーパネルで年間約17万3000キロワットアワー( kWh )を発電する。これで約1000台のEVの充電を賄えるとし、余った電力(10万2000kWh)は売電する。
空調用エネルギーに使う都市ガスはグループ企業から調達するカーボンニュートラル天然ガスを使用。店舗の運営上、夜間や悪天候で発電量が不足する際は、系列の電気会社からCO2フリー電力を購入する。これによって同店舗は実質的カーボンフリーと年間で115トンのCO2削減を実現するとした。
今後も浜松市・アウディ・サーラコーポレーションで炭素中立を推進する
カーボンニュートラル店舗の建設・運用について坂爪社長は「運営コストは約1割アップするが、電気代が安くなった」と説明。電気代については変化が大きいため、具体的な率には言及しなかった。既に90kW級充電器については設置済である一方で、より大型の150kW充電器については、今春を目処に設置していく方針という。
また、サーラカーズジャパンが運営する他のアウディやVW店舗についても将来へ向けてカーボンニュートラル化への取り組みを進める姿勢であるものの、各地域に根ざした事業スタイルを採っている事から、店舗規模や事業形態がまちまちであるため対応は個別に異なる形になるとした。
勿論、導入可能なところでは一部、今年を目処にソーラーパネルを設置する姿勢だが、事業環境上で難しいところは親会社のサーラコーポレーションから再生可能エネルギーによる電力を調達するとしている。
一方、産学官連携で「未来共創ミーティング」などの複数の施策を展開して来たシェーパース・ブランドディレクターは、他のアウディディーラー店舗へのカーボンニュートラル展開については「それぞれディーラー店舗に委ねる」と述べるに留めた。
浜松市の長田繁喜 副市長
浜松市の村上隆康カーボンニュートラル推進事業本部長
同ミーティングには浜松市の長田繁喜副市長なども出席。既に2050年にカーボンニュートラル実現を掲げている浜松市は「エネルギー・スマートシティ」を目指す中で、官民協力でエネルギーの地産地消に取り組む考えを示していた。