アウディ ジャパンは1月28日、アウディとRWEが新しいタイプのエネルギー貯蔵システムを建設したことを、ドイツ本国発表資料として発表した。
アウディによると、RWEは、アウディの電気自動車から回収した使用済みリチウムイオンバッテリーを使用するエネルギー貯蔵施設をドイツのヘルデッケに建設し、稼働を開始した。60のバッテリーシステムを使用するこの新しいエネルギー貯蔵施設は、ヘンクシュタイ湖に面するRWEの揚水発電施設の敷地内にあり、4.5MWhの電力を一時的に蓄えておくことができる。
このプロジェクトで使われたバッテリーは、Audi e-tronの開発車両から回収された使用済みバッテリーであり、電気自動車としての用途が終了した後も80%以上の残存容量を持っているという。「セカンドライフバッテリー」は、据え付け型の蓄電システムとして活用することができ、使用状態にもよるが、これらのバッテリーの耐用年数は最大で10年に達するとしている。
さらに、これらのバッテリーは、新品と比較して安価であることも特徴としている。再利用によりバッテリーの寿命を延長することで、製造時に排出されたCO2が、これら2つの用途(自動車に搭載される期間と電力貯蔵のため使用される期間)にわたって持続的に分散される。
AUDI AG技術開発担当取締役 オリバー ホフマンは、次のように述べている。
「カーボンニュートラルなモビリティは、アウディが掲げる究極の目標です。私たちはこの野心的な目標を達成するために、全力で取り組んでいます。2025年までに20を超える電気自動車を発表するという計画は、その方針に向けた重要なステップです。しかし、私たちの目標は自動車本体に関することだけに留まりません。エネルギー産業界のパートナー各社とのコラボレーションを通して、持続可能なモビリティの開発も進めています。RWEとの提携は、高電圧バッテリーを再利用して、未来の電力網へインテリジェントに組み込むことにより、限りある資源を有効活用する可能性を示すものです。私たちはさらに、再利用が終わった段階も想定に入れ、使用済みバッテリーの効果的なリサイクルを行うための方法も開発しています」
RWEは、ヘルデッケにある揚水発電施設の敷地内に、軽量な設計を特徴とする160m2のホールを建設し、ひとつ約700kg、合計60のバッテリーモジュールを格納しています。ホール内のバッテリーシステムの設置は10月に完了しました。11月には必要なコンポーネントが取り付けられ、稼働を開始しました。
RWEは、この使用済みバッテリーを活用するバッテリーストレージの販売を、2022年初頭に開始したいと考えています。当初の使用目的は、送電の安定化を図るために電力網をサポートすることです。同社は、今後も他の利用方法を柔軟にテストしていきたいと考えています。
RWE Generation SE最高経営責任者(CEO)ロジャー ミーゼンは、次のように述べている。
「強力なバッテリーストレージシステムは、エネルギー革命において重要な役割を果たします。再生可能なエネルギーの短期的な変動を補い、電力網を安定させるためには、柔軟な蓄電テクノロジーが求められます。そのためには、バッテリーを使った蓄電システムを使用することが理想的です。私たちRWEはアウディと協力して、かつて電気自動車に搭載されていた高電圧バッテリーを接続し、据え置き型のエネルギー貯蔵装置として、どのように使用できるのかをテストしています。再利用されたバッテリーは、新品と比べて持続可能な代替手段となります。このプロジェクトから得られた経験は、このようなバッテリーシステムを、もっとも費用対効果の高い方法で運用するための方法を模索することに役立ちます」
アウディとRWEによるこの試験的エネルギー貯蔵システムにより得られた知見は、RWEが将来的にEVバッテリーを活用した大規模な施設を建設したり運営したりする際に役立ちます。これらの施設では、2つのモジュールを直列に接続する革新的なテクノロジーを使用することにより作動電圧を高め、コストを削減しています。