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2025年3月26日【事業資源】

アウディ、2024年度決算会見で攻めの新戦略を示唆

坂上 賢治

 

アウディグループは2024年・会計年度報告に於いて、厳しい市場環境下で堅実な業績を達成した。過去12か月間の売上高は645億ユーロ、営業利益は39億ユーロ、営業利益率は6%となった。純キャッシュフローは31億ユーロに達した。

 

来るべき2025年は、モデル毎に着実な成果を積み上げていき、年末までに市場セグメント内で新鮮な製品ラインアップを用意するという。

 

 

概要発表の壇上でAUDI AGのゲルノート デルナーCEO(Gernot Döllner)は、「世界的な経済変化と国際競争の激化は、アウディおよび業界全体にとって大きな課題をもたらしており、我々は、新たな道を切り拓く勇気と、これまで受け継いできた強みに自信をもって、この現実に立ち向かっていきます。

 

一方で2024年もアウディは重要な基盤を築き、最初の主要なマイルストーンを達成しました。「それに倣い、我々は今年も刷新への道を貫きます。

 

その中心となるのは、多くの新型モデルによるラインアップの若返りを図ることです。また、中国および北米という中核市場でのポジショニングにも特に注力しています。同時に、企業全体の構造をより効率化する取り組みを進め、革新技術をより迅速に実用化できる体制を整えています」と述べた。

 

 

そうした更なる詳細説明によると、アウディの取締役会と従業員代表会は、ドイツ国内拠点の将来的な競争力を確保するべく労使に於いて将来に向けた共同合意を締結。インゴルシュタットおよびネッカーズルムに於ける生産性の向上、スピードの加速、柔軟性の強化を明確に目標に掲げているという。

 

そうした合意の一環として、アウディは雇用保護制度を2033年12月31日まで延長。人件費の削減を図ると共にドイツ国内の拠点を電動モビリティへの移行に対応できる強靭かつ柔軟な体制へと整備していくと畳み掛けた。

 

それでも2025年度は、競合に互して最も若い製品ポートフォリオを用意する

 

そもそも昨年の厳しい経済環境、激化する市場競争、一部の供給制約が影響して2024年の販売台数は減少に転じた。アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティを含むブランドグループプログレッシブ(アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティ)全体では、1,692,548台(2023年:1,918,912台)の自動車と、54,495台(2023年:58,224台)のモーターサイクルを販売。

 

アウディブランド単体では1,671,218台を販売し、前年比11.8%減少した。このうちBEV(バッテリーEV)は164,480台(前年比-7.8%)だった。

 

 

そんな前年実績を踏まえつつアウディは今年も、新世代のEV、高効率なICE(内燃機関)モデル、PHEV(プラグインハイブリッド)を投入し完全電動化への移行を推進していく。

 

より具体的には、2024年から2025年にかけて20車種以上の新モデルを発表予定で、その半数はBEVとなる見込みだ。その結果、2025年末までには競合他社がひしめき合う中で、最も若いポートフォリオを持つブランドになるという。

 

その皮切りとして2025年は、重要モデルであるAudi A6およびAudi Q3シリーズの刷新に重点を置き、今月3月始めにはAudi A6ファミリーの最初のモデルとしてAudi A6 Avantを発表。この他のモデルも発表予定としている。

 

また新型Audi Q3は2025年夏にデビュー予定。更にAudi A3 Sportback TFSI e、Audi A3 allstreet TFSI eを皮切りにPHEVモデルの展開を2024年末から始めており、2025年末までに合計10モデルのPHEVを投入する。

 

地域毎の市場戦略は前年に続き、市場別に最適化させた戦略を継続する

 

地域戦略でアウディは引き続き、市場ごとに最適化した戦略を継続する。特に世界第2位の自動車市場である米国では、2026年末までに新型車10モデルの投入と既存モデルの改良を実施。Audi Q6 e-tronは既に米国市場で発売済みで、2025年にはAudi A6 e-tron、新型Audi Q5、Audi A5、Audi A6のICEモデルが登場する。

 

中国市場ではFAWおよびSAICとの商品戦略により、電動モデルのラインアップを拡充。アウディはFAWと共に、長春に新設されたAudi FAW NEV社の工場でAudi Q6L e-tronの生産を2024年末より始めている。その他の中国専用モデルも、2025年半ばから生産を予定。またSAICとは、中国市場向けのインテリジェントでコネクテッドなEVの開発にも取り組んでいく。

 

収益面で2024年度のアウディ グループの売上高は、645億3,200万ユーロ(前年比-7.6%)。これは販売台数の減少に加え、頻繁なモデルチェンジや、利益貢献までに時間を要する新製品の投入が影響した。EUタクソノミーに準拠した売上高の割合は10.2%(2023年16.3%)となった。

 

これらを踏まえた2024年のアウディグループの営業利益は39億300万ユーロとなり(2023年:62億8,000万ユーロ)、この数値にはブリュッセル拠点の生産終了に伴う構造改革費用が含まれている。営業利益率は6.0%(前年比-3.0ポイント)となった。

 

それでも従業員の努力に報いるため積極的な利益配分を行った。例えばドイツ国内工場の熟練労働者に対しては、5,310ユーロ(2023年:8,840ユーロ)の利益分配金を支給。この利益配分額は、労働協約に基づく計算式で決定され、営業利益などの要因が考慮されている。

 

 

 

構造改革費用の影響を受けつつも、個別ブランドでは記録更新を達成

 

個別の車種ブランド毎の実績ではベントレーが、2024年の販売台数は10,643台(2023年:13,560台)。売上高は26億4,800万ユーロ(2023年:29億3,800万ユーロ)。営業利益率は14.1%、営業利益は3億7,300万ユーロ(2023年:5億8,900万ユーロ)。

 

ランボルギーニは、近年の好調を維持し、2024年の販売台数は10,687台(2023年:10,112台)で、前年の力強い結果と比べても5.7%増となった。売上高は前年比16.2%増の30億9,500万ユーロとなり、営業利益は前年比15.5%増の8億3,500万ユーロ。営業利益率は前年と同水準の27.0%(2023年:27.2%)となっている。

 

二輪のドゥカティは、 54,495台を販売(2023年:58,224台)し、売上高は10億300万ユーロ(2023年:10億6,500万ユーロ)。営業利益は9,100万ユーロで、2023年の記録的な水準(1億1,200万ユーロ)を下回り、営業利益率は9.1%(2023年:10.5%)となった。

 

こうした成果を勘案したグループの財務結果は10億9,700万ユーロ(2023年:14億2,300万ユーロ)。これには中国でのビジネスからの6億5,100万ユーロ(2023年:9億1,500万ユーロ)が含まれている。税引後利益は41億8,900万ユーロ(2023年:62億6,000万ユーロ)に。ネットキャッシュフローは30億7200万ユーロ(2023年:47億4,000万ユーロ)。この減少は、報告年度の収益の減少と運転資本のネガティブな変動によるものとなっている。

 

2025年の展望についてユルゲン リッテルスベルガーCFO(Jurgen Rittersberger)は、「競争の激化や経済の低迷という困難な環境の中でも、アウディは順調に進捗し、2024年を財務的に健全な状態で締めくくることができました。

 

 

しかし、依然として厳しい道のりが続くため、持続的に収益目標を達成するために、体系的な変革を推進していきます。アウディは業務構造やプロセスの合理化を進め、可能な限り複雑さを軽減します。この取り組みの一環としてPerformance Program 14を導入し、必要な投資の基盤を確立するとともに、収益性を確保することを目指します。

 

ただ当面の間アウディも、今年は不安定かつ厳しい市場環境が続き、困難な財務年度になることょ覚悟しています。2025年の世界経済の全体的な成長率は2024年よりやや鈍化すると見込んでいます。

 

わずかな経済成長の前提のもと、2025年度の売上高は675億~725億ユーロの範囲になると予想しています。営業利益率は7%から9%の範囲、ネットキャッシュフローは30億から40億ユーロの範囲になると見込んでいます。なお、将来に向けた協定に関する財務的影響は現在評価中であり、今回の予測には反映されていません」と結んだ。

 

 

アウディ グループの主な業績(抜粋)(単位:百万ユーロ)
————————————–2024年_2023年
– グループ販売台数:1,692,548_1,918,912
– アウディ販売台数:1,671,218_1,895,240
– 売上高:64,532_69,865
– 営業利益:3,903_6,280
– 営業利益率(%):6.0_9.0
– ネットキャッシュフロー:3,072_4,740
– 営業外収益:1,097_1,423
– 税引後利益:4,189_6,260
– EUタクソノミーに準拠した売上高の割合(%):10.2_16.3

 

 

アウディ グループの2025年の予測(単位:百万ユーロ)

————————————–2025年
– 売上高:67,500–72,500
– 営業利益率(%):7–9
– ネットキャッシュフロー:3,000–4,000

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。