循環型市場設計のオークネットは4月1日、東京大学エコノミックコンサルティング(UTEcon)と「リユース流通価格指数」を開発。その第1弾として「中古車市場価格指数」を発表した。こうした中古車市場価格に関する指数の可視化は、日本でも先行的な取り組みとなる。
この「リユース流通価格指数」開発の背景は、日本国内の(2021年)リユース市場規模が推計約2兆7千億円で、これが2030年には4兆円規模に到達すると予測され、今後も市場は継続して拡大する見込みであること。併せて米国の経済動向を把握するための指標CPI(消費者物価指数)は、二次流通に於いて不動産中古物件や中古車も指標の取り入れられており、これらは経済動向を把握する指標として注目を集めていることなどある。
一方で日本国内で提供されてきた「物価指数」は、直線的にモノが流れるリニア・エコノミーを前提に算出されているが、今後サーキュラーエコノミーへ経済視点が拡大していくなかで、リユース市場の蓄積データを活かたBtoB流通の価格トレンド・需要を〝指数として可視化〟することが求められると考え、今回の「リユース流通価格指数」の開発に至った。
実際、日本で中古車市場の値動きを把握するための指標として引用される「平均取引価格」では、取引される中古車の質の変化を反映できておらず、物価変動を適確に把握することができないそこで今回オークネットとUTEconは、関連指数の第1弾として「中古車市場価格指数」を発表した。
より具体的には440万件を超えるオークネットの会員流通データを元に、UTEconの価格指数構築ノウハウを活用。様々な中古車の属性を統計モデルに組み込むことで、日本市場での中古車価格が実際にどのくらい上下しているのかを客観的に把握可能な「中古車市場価格指数」システムを構築した。
併せて今後は、月毎の「中古車市場価格指数」をオークネットが設立した企業内ラボ「オークネット循環型流通ラボ」で定期更新の上で公開していく。
例えば2008年以降、取引される中古車の走行距離と経過年数が長くなるなど、中古車の品質低下が顕著に見られるが、同指数によると2008年7月を1として「中古車市場価格指数」と「平均取引価格」を比較した場合、品質を統計的に揃えた「中古車市場価格指数」は2013年~2020年頃までは1.1~1.4前後で推移してきたものの2020年を境に高騰。
2022年9月には2.2に達している一方で、「平均取引価格」は最大でも1.4倍程度の上昇幅に留まり、取引される中古車の品質を統計的に揃えた「中古車市場価格指数」と大きな差があることが分かる。このように「中古車市場価格指数」の変化を比較することによって、単純に「平均取引価格」を見るだけでは見えてこない、適確な「物価の変動」を把握することが可能となる。
図:「中古車市場価格指数」と「平均取引価格」の比較
図:平均走行距離の推移
図:平均経過年数の推移
図:全ボディタイプを総合した「中古車市場価格指数」
図:ボディタイプ別「中古車市場価格指数」
図:ボディタイプ別「中古車市場価格指数」前年同月比
こうした取り組みについてUTEconでは、「昨今、様々な商品の値上げが相次ぎ、物価の上昇をどのように察知し対策するかということが、多くの人にとって身近な問題になっています。
今回取り扱った中古車市場に於いても、価格が大きく動いていることは長らく取り沙汰されてきましたが、〝平均取引価格〟が動く際には取引される中古車の品質も変化することが通常であり、〝同じ品質〟に揃えた形で適切に価格の変化を捉えるために計量経済学的な工夫を加える必要がありました。
今回の取り組みでは、オークネットが保有する潤沢なデータを活用することでそのような工夫が可能となり、リユース市場における動向をより的確に映し出す、社会的に大変意義深い取り組みになっていると考えております。このような挑戦的な取り組みにご一緒できたことを大変光栄に思います」と述べた。
また更にオークネット循環型流通ラボ理事長の有村祐二氏は、「オークネットは1985年にリアルタイム中古車オークションを開始、中古デジタル機器、中古バイク、ブランド品など、多種多様な領域へと拡張し、リユースを中心とした二次流通の専門ノウハウや流通ネットワークづくりを推進してまいりました。
このたび、オークネットが所有する多くのデータとUTEconの計量経済学的なノウハウを組み合わせることで、BtoB市場における価格動向を的確に表す仕組みをご提供することが可能となりました。
今回発表した〝中古車市場価格指数〟をはじめ、今後もさまざまな商材のB2Bリユース市場の価格トレンドを表すリユース流通価格指数をUTEconと共同研究し、社会に貢献していきたいと考えております」と話している。