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2024年12月11日【新型車】

アストンマーティンのヴァルハラ、999台の限定生産に

坂上 賢治

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アストンマーティン初のPHEVを搭載した量産ミッドエンジン・スーパーカー

 

アストンマーティンは12月11日(英ウォリックシャー州ゲイドン発)、同社のミッドエンジン・ハイブリッド・スーパーカー、ヴァルハラ(Valhalla)全貌を明らかにした。ヴァルハラは、フォーミュラ1®で培った技術とスリリングなドライビング・フィールを備えたアストンマーティン初のプラグインハイブリッドを搭載した量産ミッドエンジン・スーパーカーだとしており、現在、開発は最終段階を迎えているという。

 

 

パワーユニットは4.0リッターツインターボ・フラットプレーンクランクV8エンジンを搭載。これに電気モーターとリア電子制御ディファレンシャル(E-デフ)を備え、新しい8速デュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)も初採用した。そのエアロダイナミクスデザインは、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1®チームのコンサルティング部門のアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)が協力した。

 

 

そんなヴァルハラについてアストンマーティンの最高経営責任者(CEO)であるエイドリアン・ホールマーク氏は、「今回、アストンマーティン初のミッドエンジンの量産モデルである究極のドライバーズ・スーパーカーヴァルハラをポートフォリオに加えました。

 

スペック上でもサーキットでの走行でも、最もドライバーにフォーカスした、技術的に最も進化したスーパーカーである同車は、真のハイパーカー性能を備えながら、公道では他のアストンマーティン車同様、実用性と快適さを実現しています。

 

 

つまり市場で最もエレガントでエキサイティングな車として設計された、唯一無二の存在であり、ヴァルハラはウルトラ・ラグジュアリー・ハイパフォーマンス・ブランドとしての未来のビジョンを体現するものです。

 

そんなヴァルハラの開発にあたって私達は、究極のハイパーカーであるアストンマーティン・ヴァルキリーの開発や、エイドリアン・ニューウェイとの協業を通じて新たな視点で考える方法を学びました。

 

そんな知識と新たなクルマづくりの手法を組み合わせることで、アストンマーティンの新たな歴史の一頁をご体感頂くお客様のために、これまでの成功を更に発展させてテクノロジー、パフォーマンス、顧客体験の全てに於いて、世界をリードする自動車メーカーとして孤高の地位を確立することができたと感じています」と述べた。

 

 

1リッターあたり207PSというアストンマーティン史上最高の比出力を実現

 

その中心にあるのは、828PSを発揮する4.0リッター・ツインターボV8エンジンと、251PSを供給する3基の電気モーター(そのうち2基はフロント・アクスルを駆動)によって構成されるハイブリッド・パワートレインで、クラス最高水準の最高出力1,079PSと最大トルク1,100Nmを発揮する。

 

そのうち内燃エンジン(ICE)は、1リッターあたり207PSというアストンマーティン史上最高の比出力を実現させている。また新開発の8速DCTトランスミッションはリア・アクスル駆動力を伝達し、瞬時のシフトタイムとスリリングなシフト特性を実現させたという。

 

その結果、具体的なパフォーマンスの目標値としては、0-100km/h(62mph)加速が2.5秒、最高速度は電子制御リミッターにより350km/h(217mph)をマークする。

 

 

併せてエクステリアでは、アストンマーティン・ヴァルキリーのマシンづくりで得たノウハウを注ぎ込み、走行中に於いて600kgを超えるダウンフォースを生み出すことに成功した。

 

この数値は240km/h(149mph)の疾走時に達成され、その後、350km/h(217mph)の最高速度に至るまで維持される。併せて速度が増すにつれてフロントおよびリアウイングの迎角を徐々に小さくすることで、F1譲りのアクティブ・エアロダイナミクス性能を発揮。過剰なダウンフォースを巧み逃がして。幅広い速度域で空力バランスを一定に保ち続けるという。

 

なお、この際の車両の姿勢制御では、インテグレーテッド・ビークル・ダイナミクス・コントロール(IVC)が仕事を行う。これはサスペンション、ブレーキ、ステアリング、アクティブ・エアロダイナミクス、パワートレイン・システムの全てをセンシングを介して監視し、あらゆる状況下での最適なパフォーマンスとドライバーとの一体感を醸し出す。

 

 

レース・モードではアクティブ・エアロダイナミクス機能がフル活用できる

 

さて、まずヴァルハラに乗り込む際のデフォルト設定はスポーツ・モードとなっており、ドライバーはそこからセンタースタックにあるロータリースイッチを介してピュアEV、スポーツプラス、レースなどのドライブモードを選択することができる。

 

各モードは、パワートレイン(トルクベクタリングやハイブリッドシステムの統合を含む)、サスペンションの硬さ、アクティブ・エアロ、ステアリング・キャリブレーションの設定が異なり、それぞれ特徴ある走行特性を演じることができる。

 

 

例えばピュアEV・モードでは、フロント・アクスルのモーターのみで駆動し、航続距離は14km、最高速度は140km/h(80mph)に制限される一方で、スーパースポーツカーに似つかわしい穏やかな走りも披露できるため、旅の始まりと終わりに最適なモードとなる。

 

またバッテリー残量が少なくなると、ヴァルハラは自動的にスポーツ・モードに切り替わる。スポーツ・モードでは4.0リッター・ツインターボV8エンジンが作動し、電動フロント・アクスルによる瞬時のトルクと、V8エンジンの圧倒的なパワーを組み合わせたハイブリッドスーパーカーならではの走りが愉しめる。

 

対してスポーツプラス・モードは、公道でのダイナミックなスリルを最大限に引き出す設定だ。レース・モードでは、リアのTウイングが強力な油圧ラムによって255mm持ち上げられ、不断は隠されているフロント・アクスルの前方のアクティブ・フロントウイングがせり出され、究極のパフォーマンスを追求するサーキット走行を念頭に置いて、アクティブ・エアロダイナミクス機能がフルに活用できる。

 

 

ヴァルハラは同クラスのライバル車と並び立たない孤高の存在に

 

また走行中に車両が不要なダウンフォースを逃がす必要があると判断した場合には、自動的にDRS(ドラッグリダクションシステム)が作動。レース・モードでのブレーキング時には、リアウイングは主にエアブレーキとして機能し、アクティブ・フロントウイングと連携して圧力のバランスを調整。これにより優れたブレーキング性能を発揮しつつ、最適な安定性を確保する。

 

 

こうしたセッティングについてアストンマーティンでビークルパフォーマンス担当取締役を務めるサイモン・ニュートン氏は、「エンジニアリングチームとビークルダイナミクスチームにとっての大きな挑戦は、ヴァルハラが持つ膨大なパワーをアクティブ・エアロダイナミクスと組み合わせて如何に活用することにありました。

 

1,079PSと1,100Nmという驚異的なパフォーマンスを当然の前提としながらも、サーキットでは更なるレベルのスピードと爽快感を提供し、対して公道では楽しく、エモーショナルなスーパーカーとしての走りを実現させることは大きな課題でした。この前例のないダイナミックな懐の深さが、同クラスのライバル車とヴァルハラが並び立たない孤高の存在にしています」と説明した。

 

なおアストンマーティンでは、いよいよヴァルハラの量産フェーズに入る。999台のみの限定生産となり、初回納車は2025年下半期になる予定。アストンマーティン初のミッドシップ・ハイブリッドスーパーカーとなる新型ヴァルハラが体験できるコンフィギュレーターは以下URL、https://configurator.astonmartin.com/を介して閲覧できる。現段階の車両価格は、およそ1億200万円というプライタグが付くとされている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。