アストンマーティン初のPHEVを搭載した量産ミッドエンジン・スーパーカー
アストンマーティンは12月11日(英ウォリックシャー州ゲイドン発)、同社のミッドエンジン・ハイブリッド・スーパーカー、ヴァルハラ(Valhalla)全貌を明らかにした。ヴァルハラは、フォーミュラ1®で培った技術とスリリングなドライビング・フィールを備えたアストンマーティン初のプラグインハイブリッドを搭載した量産ミッドエンジン・スーパーカーだとしており、現在、開発は最終段階を迎えているという。
パワーユニットは4.0リッターツインターボ・フラットプレーンクランクV8エンジンを搭載。これに電気モーターとリア電子制御ディファレンシャル(E-デフ)を備え、新しい8速デュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)も初採用した。そのエアロダイナミクスデザインは、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1®チームのコンサルティング部門のアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)が協力した。
そんなヴァルハラについてアストンマーティンの最高経営責任者(CEO)であるエイドリアン・ホールマーク氏は、「今回、アストンマーティン初のミッドエンジンの量産モデルである究極のドライバーズ・スーパーカーヴァルハラをポートフォリオに加えました。
スペック上でもサーキットでの走行でも、最もドライバーにフォーカスした、技術的に最も進化したスーパーカーである同車は、真のハイパーカー性能を備えながら、公道では他のアストンマーティン車同様、実用性と快適さを実現しています。
つまり市場で最もエレガントでエキサイティングな車として設計された、唯一無二の存在であり、ヴァルハラはウルトラ・ラグジュアリー・ハイパフォーマンス・ブランドとしての未来のビジョンを体現するものです。
そんなヴァルハラの開発にあたって私達は、究極のハイパーカーであるアストンマーティン・ヴァルキリーの開発や、エイドリアン・ニューウェイとの協業を通じて新たな視点で考える方法を学びました。
そんな知識と新たなクルマづくりの手法を組み合わせることで、アストンマーティンの新たな歴史の一頁をご体感頂くお客様のために、これまでの成功を更に発展させてテクノロジー、パフォーマンス、顧客体験の全てに於いて、世界をリードする自動車メーカーとして孤高の地位を確立することができたと感じています」と述べた。
1リッターあたり207PSというアストンマーティン史上最高の比出力を実現
その中心にあるのは、828PSを発揮する4.0リッター・ツインターボV8エンジンと、251PSを供給する3基の電気モーター(そのうち2基はフロント・アクスルを駆動)によって構成されるハイブリッド・パワートレインで、クラス最高水準の最高出力1,079PSと最大トルク1,100Nmを発揮する。
そのうち内燃エンジン(ICE)は、1リッターあたり207PSというアストンマーティン史上最高の比出力を実現させている。また新開発の8速DCTトランスミッションはリア・アクスル駆動力を伝達し、瞬時のシフトタイムとスリリングなシフト特性を実現させたという。
その結果、具体的なパフォーマンスの目標値としては、0-100km/h(62mph)加速が2.5秒、最高速度は電子制御リミッターにより350km/h(217mph)をマークする。
併せてエクステリアでは、アストンマーティン・ヴァルキリーのマシンづくりで得たノウハウを注ぎ込み、走行中に於いて600kgを超えるダウンフォースを生み出すことに成功した。
この数値は240km/h(149mph)の疾走時に達成され、その後、350km/h(217mph)の最高速度に至るまで維持される。併せて速度が増すにつれてフロントおよびリアウイングの迎角を徐々に小さくすることで、F1譲りのアクティブ・エアロダイナミクス性能を発揮。過剰なダウンフォースを巧み逃がして。幅広い速度域で空力バランスを一定に保ち続けるという。
なお、この際の車両の姿勢制御では、インテグレーテッド・ビークル・ダイナミクス・コントロール(IVC)が仕事を行う。これはサスペンション、ブレーキ、ステアリング、アクティブ・エアロダイナミクス、パワートレイン・システムの全てをセンシングを介して監視し、あらゆる状況下での最適なパフォーマンスとドライバーとの一体感を醸し出す。
レース・モードではアクティブ・エアロダイナミクス機能がフル活用できる
さて、まずヴァルハラに乗り込む際のデフォルト設定はスポーツ・モードとなっており、ドライバーはそこからセンタースタックにあるロータリースイッチを介してピュアEV、スポーツプラス、レースなどのドライブモードを選択することができる。
各モードは、パワートレイン(トルクベクタリングやハイブリッドシステムの統合を含む)、サスペンションの硬さ、アクティブ・エアロ、ステアリング・キャリブレーションの設定が異なり、それぞれ特徴ある走行特性を演じることができる。
例えばピュアEV・モードでは、フロント・アクスルのモーターのみで駆動し、航続距離は14km、最高速度は140km/h(80mph)に制限される一方で、スーパースポーツカーに似つかわしい穏やかな走りも披露できるため、旅の始まりと終わりに最適なモードとなる。
またバッテリー残量が少なくなると、ヴァルハラは自動的にスポーツ・モードに切り替わる。スポーツ・モードでは4.0リッター・ツインターボV8エンジンが作動し、電動フロント・アクスルによる瞬時のトルクと、V8エンジンの圧倒的なパワーを組み合わせたハイブリッドスーパーカーならではの走りが愉しめる。
対してスポーツプラス・モードは、公道でのダイナミックなスリルを最大限に引き出す設定だ。レース・モードでは、リアのTウイングが強力な油圧ラムによって255mm持ち上げられ、不断は隠されているフロント・アクスルの前方のアクティブ・フロントウイングがせり出され、究極のパフォーマンスを追求するサーキット走行を念頭に置いて、アクティブ・エアロダイナミクス機能がフルに活用できる。
ヴァルハラは同クラスのライバル車と並び立たない孤高の存在に
また走行中に車両が不要なダウンフォースを逃がす必要があると判断した場合には、自動的にDRS(ドラッグリダクションシステム)が作動。レース・モードでのブレーキング時には、リアウイングは主にエアブレーキとして機能し、アクティブ・フロントウイングと連携して圧力のバランスを調整。これにより優れたブレーキング性能を発揮しつつ、最適な安定性を確保する。
こうしたセッティングについてアストンマーティンでビークルパフォーマンス担当取締役を務めるサイモン・ニュートン氏は、「エンジニアリングチームとビークルダイナミクスチームにとっての大きな挑戦は、ヴァルハラが持つ膨大なパワーをアクティブ・エアロダイナミクスと組み合わせて如何に活用することにありました。
1,079PSと1,100Nmという驚異的なパフォーマンスを当然の前提としながらも、サーキットでは更なるレベルのスピードと爽快感を提供し、対して公道では楽しく、エモーショナルなスーパーカーとしての走りを実現させることは大きな課題でした。この前例のないダイナミックな懐の深さが、同クラスのライバル車とヴァルハラが並び立たない孤高の存在にしています」と説明した。
なおアストンマーティンでは、いよいよヴァルハラの量産フェーズに入る。999台のみの限定生産となり、初回納車は2025年下半期になる予定。アストンマーティン初のミッドシップ・ハイブリッドスーパーカーとなる新型ヴァルハラが体験できるコンフィギュレーターは以下URL、https://configurator.astonmartin.com/を介して閲覧できる。現段階の車両価格は、およそ1億200万円というプライタグが付くとされている。