NEXT MOBILITY

MENU

2019年9月6日【エネルギー】

水陸連携マルチモーダルMaaS、2020年代に実用化へ

松下次男

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

東京海洋大学、モネ・テクノロジーズ、電通の3法人、東京都港区海外周辺で自動運転型水陸連携マルチモーダルMaaS実証実験を公開

 

 国立大学法人 東京海洋大学(本部:東京都港区、学長:竹内俊郎)の海洋工学部清水研究室、モネ・テクノロジーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:宮川潤一)、株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本敏博)は9月4、5日の2日間、東京都港区海外周辺で自動運転型マルチモーダルMaaS実証実験を実施し、報道陣などに公開した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

今実証では、東京都内のウォーターフロント地域を対象に陸上車両と船舶を組み合わせた水陸連携マルチモーダルMaaSを展開した。なお実際の事業化では案外、近い将来の実現を見据えている様子で、具体的な計画は明らかにされなかったものの、今回の首都圏だけでなく西日本エリアなどの自治体からの協力を取り付けることで全国を視野にした水陸連携マルチモーダルMaaSの構想が練られているようだ。

 

このマルチモーダルMaaS実証は、海洋大学が提供する「自動運航船らいちょう」とクルマをつなぎ、シームレスなモビリティ・サービス提供の可能性を試行・検証したもの。

 

 加えて、実証実験の結果を踏まえ5日午後に東京海洋大学越中島会館(東京都江東区)で「総括討論会」を開催した。この中で、水上交通を主導した東京海洋大学の清水悦郎教授は水陸マルチモーダルの可能性について「都市の中の交通手段として一体になって展開していくことが必要」と総括し、このためにも「普段から、水上交通を認識してもらうことが大切だ」と述べた。

 

写真は将来、自動運転化した場合に車両に搭載される利用者用の操作パネル

 

実用化に向けては、2025年までに実用化を目指す自動運転を組み込んだ日本版MaaSに間に合うとの見方を示し、各自治体や民間企業などの実証実験、事業化に採用されることを期待していた。

 

2020年代のマルチモーダル移動サービスの一環として実用化を目指す。実現に向けては都市交通の中で、一体となって整備することが重要との見解を示す

 

 実証実験は海洋大提供の自動運航船らいちょうのほか、モネ・テクノロジーズ提供の「配車プラットフォーム」(陸上交通)、電通提供の「船着場利用管理システム」(水上交通管理)を組み合わせて実施した。

 

陸上のモビリティ車両からの水上モビリティへの乗換は、先の8月2日に東京都港区の日の出埠頭に設けられた桟橋、小型船ターミナル「Hi-NODE(ハイ―ノード)」からアクセスする。同ターミナルからは不定期航路の船が発着できる。この新たに設けられた桟橋にはレストランや芝生広場も備えられており、実際の待合所には今実証で乗船する電気駆動船の発着予定が掲げられていた。

今回の実証では電動モーターを搭載した東京海洋大学の実験船「らいちょう」に乗船する。搭載された東芝製のバッテリー容量は日産リーフなどの一般的な電気自動車に匹敵する。シングルモーター駆動により環境負荷の低い移動環境が実現する。

 

 今回のマルチモーダル実証実験で中心的な移動手段となった小型船舶では自動車の自動運転や電動化技術を応用。「Wi-Fi」を使った遠隔操作で自動運航船の自動運転を実用化するとともに、画像、障害物認識は自動車用途のカメラ、LiDAR(ライダー)のセンサーシステムをモディファイして採用した。将来的には、船側の自律走行も検討する。

 

商業化を視野にした船上移動でも、陸上に於ける自動車利用と同じく自動運転による操業を想定している。今回はWI-FIアンテナからの電波をキャッチしての遠隔操作を実現した。現実の事業化にあたっては、電動船舶が信号を受信し易いLTE回線の他、WI-FIアンテナを移動区間に複数設営し、運用していく考えを持っているようだ。

 

 MaaSを想定した課題では、水陸連携マルチモーダルのニーズや定時走行などを掲げた。このため、実用化に向けては、まずは国土交通省が進める新モビリティサービス推進事業へ参画できるかなどが一つの転機となりそうだ。(実証実験などの詳細は、雑誌版「NEXT MOBILITY」vol.12に掲載)

 

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。