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2025年1月21日【新型車】

アルピナ、伝説の創業者へ捧げる限定99台「B8 GT」を発売

坂上 賢治

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BMW ALPINA B8 GT

 

ニコル・オートモビルズ( 本社:神奈川県代表川崎市、代表職務執行者 社長:ミヒャエル・ヴィット)は1月16日、アルピナ創業家ボーフェンジーペン家が手掛けるブッフローエ製の最後の独・アルピナ( Alpina Burkard Bovensiepen GmbH&Co KG )の限定モデル「BMW ALPINA B8 GT」を発売した。車両本体価格( 10%の消費税込み )は左ハンドルが34,950,000円、右ハンドルが35,400,000円。

 

 

そんなアルピナは、今から60年前の1965年、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限合資会社こと「ALPINA」として創設された。創業当初の6人の従業員は、このブランドが世界的に知られる小規模生産のメーカーに成長するとは考えもしなかったという。

 

 

以来、アルピナでも多くのことが変わり、様々な出来事もあったが、オーナーのブルカルト・ボーフェンジーペン氏の情熱と哲学は、アルピナ社内で変わることなく一貫して受け継がれてきた。今日もアルピナは、贅沢なインテリア、優れた走行性能、そして控えめながらスポーティな外観を持つ、目の肥えたコニサー(目利き、通人)のための特別な自動車であり続けた。

 

アルピナが、ただのBMWのチューニングカーだと思っている人々に対して、おそらく遠慮のない物言いで知られたブルカルト・ボーフェンジーペン氏は、こう言うだろう「( わからないのならば )あきらめるしかないね。」

 

 

2023年10月12日、ブルカルト・ボーフェンジーペン氏が87歳の生涯を閉じた今日もアルピナは、自動車産業におけるマスマーケティングに対する細やかなアンチテーゼとして輝き続けている。それは単なるリッチなだけの自動車ブランドとしてはなく、公道でもサーキットでも、BMW ALPINAのクルマは何度もセンセーションを巻き起こしてきた。

 

その理由のひとつには、前後輪に駆動力を配分するトランスファーを最適化。トルクの分配を更にリア寄りとしつつ、これに電子制御ディファレンシャルの改良ソフトウェアを組み合わせて、独特のダイナミックなドライビング体験を堅持してきたことある。

 

 

サスペンションのセットアップも、数多くのテスト走行と開発時間をかけて徹底的に最適化された。より具体的には、新たにドームバルクヘッド・ストラットによりフロントエンドの剛性アップが行われ、今日もステアリングレスポンスと精度を向上させ続けている。

 

エクステリアデザインでも、新たなカーボンパーツの取り込みに独特の巧みさが表現されている。フロントバンパーのエアダクト、サイドダイブプレーン、エアブリーザーのトリムらが新たにリ・デザインされ、より印象的な存在感を放つディフューザーモカーボンファイバーで仕上げられた。

 

21インチのアルピナ・クラシック鍛造ホイールは、アルミニウムサテン仕上げ。複雑な鍛造工程により繊細で深い光沢を湛えた鏡のような表面を生み出す。ホイールセンターキャップもアルミニウムの無垢材から削り出されており、これらがアルピナの謳う独自のこだわりとなっている。

 

 

ステアリングの操舵モードが「COMFORT」、「SPORT」、「SPORT+」の3つから素早く選べる点も同社のこだわりのひとつだ。つまりスポーティでダイレクトなレスポンスか、または適度に抑えの効いた穏やかなフィードバックとするかのいずれかを、その時、その時のドライバーの好みに応じて瞬時に選ぶことができる。そんなドライバーに向けた各部の細やかな配慮が、アルピナが今日も支持され続けている理由となっているのだろう。

 

但し、そんなアルピナもいよいよ2025年末を以て、その商標権がBMWへ譲渡される。これまで家族経営であり続けたアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社は「BOVENSIEPEN 社」となって全く新しいモビリティ企業となる。

 

 

つまり現行の車両開発と生産は、2025年末までドイツのブッフローエで継続されるが、ブルカルト・ボーフェンジーペン氏の意思をダイレクトに引き続く現行車の入手という意味では、今年が最後のチャンスとなる可能性がある。

 

アルピナでは、「BMW ALPINA B8 GTはマスターピースたりえる自動車を創造するという私たちの情熱を体現し、独自のエレガンスと印象的なパフォーマンスを融合させた一台です。それはブルカルト・ボーフェンジーペンへのオマージュです。なお、このグランクーペは、世界で99台限定となっています」と結んでいる。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。