三菱自動車工業の加藤隆雄代表執行役社長兼CEOは新型「アウトランダーPHEV」の発表に合わせて10月28日オンラインで記者会見し、電動化や販売戦略を表明した。それによるとカーボンニュートラルに向け、現状、CO2(二酸化炭素)削減の最適解はPHV(プラグインハイブリッド車)との見方を示した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
記者会見には長岡宏代表執行役副社長(ものづくり担当)が同席した。フルモデルチェンジしたクロスオーバーSUVの新型アウトランダーPHEVは日本で10月28日から受注を開始し、12月16日から発売する。新型アウトランダーは3代目で、PHEVモデルは先代から設定。加藤社長は日本での同モデルの販売目標として「2021年度内5000台」を表明した。
グローバルではすでに米国でガソリン車モデルを発売。近く豪州やニュージーランドなどでも販売を開始し、PHEVモデルも展開する予定。米国では来年PHEVモデルを投入する考えで、将来的に旧型を販売していた地域をカバーし、販売台数も旧型のPHEVモデルを上回りたいとした。世界的規模で懸念材料となっている半導体不足の影響については「全車に影響が出ているが、当社の場合は残業の縮小にとどめ、現状、販売目標分の調達のめどはついている」との見解を示した。
また、自動車を取り巻く環境については世界的に電動化の波が広がっているが、これに対し、カーボンニュートラルに向け、現状はLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点からCO2削減ではPHVが最適との見方を同社は示す
電気自動車(EV)はタンク・ツー・ホイールの観点ではCO2排出量がゼロだが、搭載バッテリーの製造段階で多くのCO2を排出すると指摘した。また、バッテリーのコストダウンや技術的進化が本格化するのは全固体電池が登場すると見られる2026、2027年以降になるだろうとした。
ただし、電動化戦略では国・地域の方針に合わせて柔軟に対応するとし、バッテリーEVの展開についても同社のPHEVモデルは「EVから発展した。このため、EVへ戻すのは容易」と述べる。当面はPHVもEVほどではないが助成が期待できるだろうと見ている。
一方で、バッテリーの搭載量が少ない軽自動車についてはEVの方がCO2削減に効果的との見解を示し、軽自動車の電動化はEVを主体に展開する考えを示した。軽EVについては来年、日産との共同開発車を投入することをすでに発表済み。これについて「我々は軽EV量産のノウハウを持っており、これに日産の技術が加わった」との特色を強調した。
また、同社の主力市場である東南アジアではEV推進の国策が出つつあるが、同社は現行のミニキャブEVを提案するなどの対策を進めていることを明らかにした。日産、ルノーとのアライアンスについては新型アウトランダーEVに共用プラットフォームを採用するとともに、同一車線運転支援機能(MI―PILOT)に日産のプロパイロットの技術を採用、さらにコネクテッドにも共通の技術を取り入れていると表明した。
今後も電動化や自動運転などの先進技術では「これらをすべて自社で対応できない。アライアンスを有効活用する」とした。新型アウトランダーPHEVモデルは5人乗り、7人乗りの「M、G、P」グレードがあり、2・4リットル・エンジン、ツインモーター4WDを搭載。車両価格(消費税込み)は462万1100円~532万700円。