三菱ケミカル(本社:東京都千代田区、社長:和賀 昌之)は11月16日、炭素繊維複合材料である「SMC(Sheet Molding Compound)」が、トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、社長:豊田 章男)から2020年9月に発売された「GR ヤリス」のルーフに採用されたことを発表した。
三菱ケミカルが開発したSMCは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の中間基材の一種で、長さ数センチメートルにカットした炭素繊維を樹脂中に分散させたシート状の材料。プレス成形により2〜5分程度の短時間で部材に加工でき、連続した炭素繊維に樹脂を含浸させた中間期材である「プリプレグ」に比べ、複雑な形状の部材を成形することができるという特長を持つ。また、機械特性が均質に近いため、従来の部材設計ノウハウを活かしながら比較的容易に炭素繊維を利用して、軽量化と高強度化を実現することができる。
今回のGRヤリスでの採用は、三菱ケミカルのSMCを使用することにより大幅な軽量化と高い部材性能を実現できる点、また、同社のSMCが複雑形状の部材を生産可能とする成形性に優れる点を評価された。トヨタ自動車に同社のSMCが採用されるのは、2017年2月の「プリウス PHV」のバックドアの骨格、同年3月のレクサス「LC500」「LC500h」のドアインナー及びラゲッジインナーに続き、3件目となる。
昨今の自動車市場では、電動化やCO2排出規制の強化等を背景に車体の軽量化に対する要求が高まっている。三菱ケミカルは、今後も炭素繊維・CFRPをはじめとする最先端素材の研究・開発を加速させ、技術革新の著しいモビリティ分野に対して最適なソリューションを提供すべく、積極的に事業を展開していくという。