加えて今回のストーリーで「第3拠点」にあたるチェコ所在の生産工場の話が浮上する。
このチェコ拠点は「トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル・チェコ(TPCA)」で、現時点では「グループPSA」も株式を保有しているが、TME(トヨタ欧州NV/SA)がTPCA株式の全株式を取得し、来る2021年1月からTPCAはTME(トヨタ欧州NV/SA)の完全子会社になる。
なおこの話は今回突然、降って湧いた話ではなく、トヨタとグループPSAが2002年に締結した「小型車共同生産の合弁契約」時に含まれていた「持ち株比率の見直し」に係る条項の実行に過ぎない。
TMEが買収するチェコ工場は、トヨタにとって欧州での8拠点目の生産拠点となる
とは言うもののトヨタ自動車側から見た場合、双方の合弁という格好ゆえに、ここまでの相手先ブランド車の販売状況を鑑み、協業体制に一区切りを付けたいとする意味合いもありそうだ。
なお元来、中欧のチェコという国家は、永らく社会主義経済下にあったことで先進工業国に水を開けられていたが、そもそも伝統的な工業国であるから働き手の機械工学に係る素養が高い。また労働コストが安いことも魅力だ。
ただ西欧の先進市場とは異なり、中欧地域ではトヨタ単独の市場占拠率は低く、当初トヨタの単独進出は困難だった。そこでグループPSAとの対等比率(トヨタが50%、グループPSAが50%)で同国コリーン市(Kolin)にTPCAを設立した経緯がある。
ちなみに対等比率によるTPCA開設のお陰で、傘下の系列部品メーカーだけで構築してきた垂直統合型のトヨタ生産方式(TPS)は大きく進化している。
トヨタグループからの部品調達という慣習を崩し、中継ぎ商社を介した水平分業体制により、当地で新ジャスト・イン・タイム(JIT)方式を構築。コンチネンタルを筆頭に既存系列外企業との連携が育まれた。またこれを契機に日系企業のチェコ進出が加速するなど、当地へも社会的恩恵をもたらした。
このTPCAの現場では現在、欧州市場向けとして純粋に開発されたエントリーレベルの小型乗用車「トヨタアイゴ(Aygo)」「プジョー108」「シトロエンC1」を生産しているが、今後、同拠点の全株式を保有することになるTME(トヨタ欧州NV/SA)は、今後もこれらのモデルの生産を継続。当地に於ける生産人口と雇用確保のレベルを維持していく予定だ。