ドイツの大手自動車機器サプライヤーZFフリードリヒスハーフェン(以下、ZF)は10月23日、最新世代(第2世代)AKCアクティブ後輪操舵システムを量産開始することを発表した。最大10度となったステアリング角度により、全長の長い車両の敏捷性が高まり、また、ステアリング操作を電気信号で操舵装置に伝える「ステア・バイ・ワイヤ」技術で自動運転機能への統合が容易になった。ZFはこの製品の発売により、車両の挙動制御のマーケットリーダーとしての地位を明確に示す。
AKCアクティブ後輪操舵システムは、ZFの成功している技術の一つだ。このシステムには、車両中央に1つ大きなモーターを配置したセントラルアクチュエータータイプと、後輪左右それぞれにモーターが搭載されるデュアルアクチュエータータイプ(主にスポーツ設計の車両に適用)がある。AKCシステムはリアアクスルを安全性、快適性および優れたドライビング・ダイナミクスを付加するステアリングシステムに変化させる。デュアルアクチュエーターのシステム(第1世代)は、2013年に量産が開始され、現在までにAKCシステムはセントラルアクチュエーターを含め、世界の多くの自動車メーカーで50万台以上の車両に搭載されている。
ZFのシャシ・アクチュエーター・プロダクトラインのシニア・バイスプレジデントであるインゴ・エルマンサは次のように述べる。「この第2世代AKCは、パフォーマンスとネットワーキング能力がさらに向上し、モビリティの自動化および電動化の要件を満たしています。」
セントラルアクチュエーターは11kN(以前は8kN)に作動力が増加し、最大3.5トンの車両にも適用することができる。また、アクチュエーターストロークの改善により、最大10度の後輪ステアリング角が取れるようになった。そのため、この新しいシステムは主にバッテリーEV(BEV)に適している。バッテリーEVは重いリチウムイオン電池と、長いホイールベース、また一般的に、車軸の間に設置された蓄電ユニットにより、後輪操舵がなければ、特に都市環境における操縦はより困難なためだ。
このAKCのもう一つの特筆すべき技術は、新しい電子アーキテクチャに基づく「ステア・バイ・ワイヤ」システムだ。ZFが開発したコントロールユニットは、最新のサイバーセキュリティによりハッカーの攻撃から守られ、パーキングやステアリングのアシスト機能と連携する。そのため、より大型のセダンでも、狭い路地の走行時や駐車時の操縦を容易に行うことができる。
高評価製品の生産開始
ZFのカー・シャシ・テクノロジー事業部の責任者であるピーター・ホールドマン博士は、第2世代のAKC生産開始について、以下のように述べる。「ZFのアクティブ後輪操舵システムの需要は伸び続けています。そのため、我々は最近、オーストリアのレブリング工場に4番目の組み立てラインを開設しました。現在、年間100万台以上を生産することが可能です。」
第2世代AKCは、今年12月、世界的に有名な自動車メーカーの高級モデルに初めて採用される。この車の回転直径は前モデルに比べ2メートル小さくなります。今後、この後輪操舵システムは他のモデルへの搭載も予定する。
ホールドマン博士は以下のように述べている。「私たちの最新世代AKCは、まさにZFの技術進化を証明するものです。低速での操縦性向上に加えて、より高速での安全性を確保するのにも役立ちます。今回の受注、および当社の製品がスポーツカーモデルで採用されていることは、ZFの技術が幅広いアプリケーションに対応すること示し、また、車両の挙動制御領域のマーケットリーダーとしての当社の地位を強調しています。」
ZFにとって、ビークル・モーション・コントロール(VMC)という言葉は、シャシ制御ソフトウェアによって、ステアリング、ブレーキ、ダンピング・システムなど、車両の縦方向、横方向、垂直方向すべての挙動制御システムをインテリジェントにリンクし、制御することを意味する。ZFは、この領域において、さらなる開発を続け、ドライビングの楽しみや安全性を提供することで、自動車メーカーをサポートしていくようだ。