ZFは12月17日、開発プロセスを大幅に加速させる独自のミドルウェア、グローバルソフトウェアセンターの設立を発表した。
未来の車両は、ソフトウェア・デファインドによる(ソフトウェアで管理操作する)高レベルなネットワーキングと自動化が特徴になる。「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」は、その操作がますますスマートフォンに似てきているが、「車輪のあるスマートフォン」以上のものだ。人々の移動を快適かつ安全なものにするため、ソフトウェアプラットフォームによってインテリジェントに接続される必要があるハードウェアシステムは、その質と量ともに異なる。
CES 2021のプレビューで、ZFは新しいミドルウェアを発表した。このオープン・ソフトウェアプラットフォームは、車載コンピューターのオペレーティングシステムとアプリケーションソフトの「仲介役」となり、主にハードウェアの抽象化とアプリケーション間の通信を行う。
ZFのシニア・バイスプレジデントで、研究開発を担当するディルク・ヴァリザ―博士は次のように述べている。「この新しいミドルウェアは、当社が将来のソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)向けの世界有数のシステムサプライヤーであることを強調するものです。当社のお客様は、ハードウェアとソフトウェアの統合の際、開発プロセスを迅速化し、またその複雑さを大幅に軽減することができます。また、車両のライフタイム終了まで、機能のアップデートやオンデマンドでの追加が可能です。」
ZFのミドルウェアは、包括的なソフトウェアプラットフォームとして、2024年から量産車に実装を予定している。この開発は、自動運転、統合安全、車両制御、電動化のようなモビリティ領域におけるアプリケーションソフトウェアの開発と密接につながっている。
ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)向けシステムソリューション
電子制御技術は、1970年代に最初の電子制御ユニット(ECU)が自動車に搭載されて以来、約50年間、自動車部品が互いに通信することを可能にしてきた。100個もの異なるECUが搭載されている車両も存在している。各ECUはそれぞれソフトウェアも含む。未来の新しい車両プラットフォームでは、電気/電子(E/E)アーキテクチャが劇的に変化し、自動運転機能などのソフトウェア機能は、分散型から少数のドメイン制御ユニット(DCU)による集中型システムに移行する。これらすべてのアプリケーションソフトは、システムの統合を管理しスムーズに統合されたミドルウェアによるメリットを得ることができる。
ミドルウェアにより、システム統合の複雑さを軽減
ミドルウェアをオペレーティングシステムに接続するだけで、車両のアプリケーションソフトとハードウェア・コンポーネントを連携することができる。このアプローチは、インターフェイスを最小限にし、システムのすべての部品との高速通信を保証し、自動車メーカーのシステム統合の複雑さを大幅に軽減することに役立つ。
ハードウェア・コンポーネントの開発についても原則同様で、ミドルウェアにより車両は「一つの普遍的な言語」でコミュニケーションを行う。ミドルウェアにより、車両の異なるハードウェア層とソフトウェア層の通信を「翻訳」し標準化することで、車両へのフレキシブルな統合を簡素化する。
プロセスの迅速化と改善
オープンなハードウェアおよびソフトウェアアーキテクチャにより、開発の初期段階から車両のライフタイム終了まで、ZF、自動車メーカー、その他のパートナー間の開発プロセスを迅速化し、改善することができる。その結果、自動車メーカーおよびエンドユーザーは、常に最新かつ革新的な車両機能を利用することができる。
ZFは、自動車メーカーのソフトウェアアーキテクチャに、ミドルウェアのモジュール型アプローチで対応し、フルプラットフォームソリューションのほか、メーカーのソフトウェアプラットフォームに統合できる単一のモジュールも提供することができる。次世代車両向けのスケーラブル・スーパーコンピューティング・プラットフォーム「ZF ProAI」により、ソフトウェア、コンピューティング、センサー、コネクテッドアクチュエータなどで構成される包括的なシステムを顧客に提供する。
2021年にグローバルソフトウェアセンターを設立
ZFは、ソフトウェア、ファンクション、スマートシステムでの新たな挑戦に備え、年明けにグローバルソフトウェアセンターを設立し、多くの開発を積極的に進めていく。ZFのヴァイス・プレジデントでソフトウェアソリューション&グローバルソフトウェアセンターの責任者、ニコ・ハートマンがその所長を務める。ヴァリザー博士は次のように述べている。「グローバルソフトウェアセンターは、グループレベルで将来のアーキテクチャ向けのソフトウェアシステムを開発し、それらを全社で利用可能にします。」そして、ZFは新しいトレンド、テクノロジー、方法、手順、ツール、機能をコーディネートし標準化することで、すべての事業部がソフトウェアを共通の開発プラットフォームで利用できるようにするとしている。
また、ハートマン博士は次のように述べている。「私たちはソフトウェア開発を『集中化』することを目指していません。このアプローチは斬新で、ソフトウェアに対して新たな見方を示すものですが、理由は簡単です。経験豊富なチームが長い間、コンポーネントレベルでハードウェアとソフトウェアを連動して開発してきたところで、そのコンピテンシーを減らさないためです。その代わりに、補完的なサポートを提供し、理想的な包括的条件を作成するための共同ソフトウェア統合プロジェクトを進めます。これにより、エキスパートチームは作業に集中しながらも、グローバルソフトウェアセンターを介して最新のリソースにアクセスできます。一方、このミドルウェアなどの純粋なソフトウェア製品は、グローバルソフトウェアセンターで一元的に作成されます。また、それらをすべての人が活用することができるようにします。」
このようにして、中期的には、ZFグループ全体の組織構造と開発環境を均一化。未来のソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)のニーズを満たすため、ソフトウェアを、顧客やパートナーと連携しより迅速に開発、適応させていくという。