横浜ゴムは、6月12日、同社技術者が行ったゴム技術研究に対し、一般社団法人日本ゴム協会の「第66回優秀論文賞」を受賞したことを発表。
論文は同社の佐藤有二氏(写真左)による「加硫過程におけるゴム中での気泡発生機構の解明」で、これによりタイヤ製造の加硫時に発生し製品不良の原因となる気泡発生のメカニズムが明らかになった。
タイヤ製造における加硫とは、原料となるゴムを成型して製造した生タイヤを金型に入れ加熱・加圧(加硫)することで、強い弾性を持つタイヤに仕上げる工程のこと。この工程により、タイヤのトレッド部に溝(トレッドパターン)が施されるが、工程中ゴム内に気泡が残留する場合があり、それが製品不良を発生させる原因のひとつとなっていた。
従来、このタイヤ加硫時に気泡が発生するメカニズムは十分明らかになっておらず、気泡による製品不良を防ぐには、製造過程で必要以上のエネルギーや時間を消費し、環境負荷の増大や生産性悪化に繋がっていた。
本研究は、そういった課題解決を目指したもの。タイヤを製造する際に使用するスチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムといった原材料に、シリカやカーボンブラックを充填剤として配合し加硫。
その後、ゴム内部の発泡の様子を「SPring-8」という大型放射光施設を活用したX線イメージング法(※)により観察する方法を開発した。
これによりゴムに存在する水分を主とする揮発成分量および架橋剤の配合量とそれらの発泡状態の関係を解明。気泡が発生するメカニズムを明らかにすることに成功した。
今回受賞した論文は、こういった研究内容をまとめたもので、信頼性の高いゴム製品を製造する際の条件設定の一助となったことが評価された。
なお、「優秀論文賞」は今年で66回目となる歴史ある賞で、過去3年間に日本ゴム協会誌に発表された論文の中から毎年優秀なものに対し最多で2件に授与される。2019年度の受賞式は5月23日、京都工芸繊維大学で開催された。
※X線イメージング法:
高輝度X線を用いて透過像を短時間で多数取得する方法。これにより加硫中のゴム内部で気泡が発生する様子を観察することが可能になった。