NEXT MOBILITY

MENU

2020年10月21日【自動車部品】

矢野経済研究所、リチウムイオン電池市場に関する調査を実施

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

矢野経済研究所(本社:東京都中野区、代表取締役社長:水越孝)は、リチウムイオン電池(LiB)主要4部材の世界市場を調査し、民生小型機器用や車載用などのLiBセルの用途や主要4部材の出荷動向、国別の設備投資や部材価格の動向などを公表した。

 

 

 

yanoresearchinstitute_lithiumionbattery_marketresearch_2020_1

yanoresearchinstitute_lithiumionbattery_marketresearch_2020_2

 

1.市場概況

 

 

2020年のリチウムイオン電池(以下、LiB)主要4部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比95.5%の200億3,811万7,000ドルの見込みである。2019年の同市場は、前年比106.7%の209億7,987万3,000ドルであった。

 

 

車載用LiB世界市場では、これまで補助金政策主導で成長を続けた中国市場において、2019年からその成長率に鈍化傾向が見られる。背景には補助金枠の減少が影響していると見られる。
LiB主要4部材は、車載用LiBセル向けを中心に正極材、負極材、電解液、セパレーターの4部材全てで市場平均価格に下落トレンドが見られ、金額ベースの成長率は数量ベースの成長率を下回る形での推移となっている。2020年下期に入り、部材によっては下落トレンドに歯止めがかかり始めている状況も見られるが、新型コロナウイルスの影響による同年上期の出荷停滞状況等を踏まえ、2020年通年で前年比減少推移を見込む。中国政府は2022年までの補助金延長を決定しており、欧州では乗用車のCO2排出量について2021年の目標値を平均95g/kmとする規制の実施を予定している。これらを受けて、今後、OEMの電動化計画を受けたxEV生産の拡大が見込まれる。

 

 

一方、民生小型セル向けのLiB主要4部材では、ノートPC向けやタブレット端末向けLiBがコロナ禍の影響による在宅勤務や教育機関での需要増で伸びを示している。上記を踏まえ、2021年以降は再び成長軌道に戻る見込みで、LiB主要4部材世界市場は引き続き車載用セル向け需要を主な牽引役として、市場拡大を続けると予測する。

 

 

2.注目トピック

 

 

中国製部材の高いプレゼンス状況は変わらず、今後は欧州市場でのポジション確立が争点に

 

2019年のLiB主要4部材世界市場における国別出荷数量シェアをみると、中国が引き続き4部材全てで高い存在感(プレゼンス)を維持している。今後は、欧州地域におけるLiBセル生産でのポジション状況が、中国LiB部材メーカーのプレゼンスの維持を左右すると見られる。

 

 

日本はセパレーターが30%台と比較的高い比率を維持しているが、2018年との比較では正極材、負極材、電解液において前年よりシェアを下げている状況にある。部材によっては価格競争激化等を背景に、中国LiBセルメーカー向け供給から手を引こうとする動きも見られる。

 

 

韓国では、引き続き韓国LiBセルメーカー向けがメインとなっており、POSCO CHEMICAL(正極材、負極材)、Enchem(電解液)といった新規参入プレーヤーが出荷量を伸ばしている。今後、韓国セルメーカーの車載用セル向け出荷量の伸びを牽引役に、徐々にプレゼンス向上の可能性があると見られる。

 

 

その他では、正極材でベルギーのUmicoreが一定のプレゼンスを有するに留まっているが、欧州ではBASF、ジョンソン・マッセイも正極材を手掛けている。一方、負極材、電解液、セパレーターでは欧州地場のLiB部材メーカーの目立った動きは今のところ見られない。なお、欧州ではxEVに対し、LCA(Life Cycle Assessment)に基づくルール作りを検討する動きが見られ、今後の動向次第では、日韓中のLiB部材メーカーの現在のポジションに影響を与える可能性もあると考えられる。

 

 

3.将来展望

 

 

2020年のLiB主要4部材世界市場は前年比4.5%減での推移を見込むが、2021年以降は成長軌道に戻り、LiB主要4部材の需要拡大は今後も続く見通しである。

 

 

但し、新型コロナウイルスの影響等により、自動車市場全体の規模が縮小してしまった状況において、ガソリン車よりも利益率が低いと見られるxEVだけ成長が続くというシナリオはあまり現実的ではないと考える。
コロナ禍においても、欧州ではxEV市場が成長を維持していると見られるが、補助金等の政策に影響されると考える。欧州地場の新規LiBセルメーカーに関しては、Northvoltを筆頭にこの先数年でGWh規模の設備投資も計画されている。中国では2022年まで延長された補助金の終了後、環境規制の強化、並びに電動車両・車載用LiBの更なる進化を背景に、xEV市場の自立成長を期待されており、欧州xEV市場の立ち上がりと両輪でバランスを取りながら成長が続くことがベストシナリオではある。しかし、LiB部材メーカーによっては、今後の中長期の設備投資に関しては慎重な判断が有意の策になると考える。

 

 

[調査要綱]

 

– 調査期間: 2020年5月~9月
– 調査対象: リチウムイオン電池部材メーカー(日本、韓国、中国、欧州等)
– 調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

 

 

<リチウムイオン電池主要4部材世界市場とは>

スマートフォンなどの情報通信機器の電源やEV、PHEV等xEVの動力源として搭載されるリチウムイオン電池(LiB)は、十数点以上の部材点数及び材料から構成されるが、本調査では、正極材、負極材、電解液・電解質、セパレーターの主要4部材を対象とする。
なお、本調査における市場規模(出荷金額ベース)は全て米ドル換算で算出しており、各国通貨の換算レートについて、2016年は1USD=108.8円、1207.70ウォン、6.64元、0.94EUR、2017年は1USD=111.5円、1178.60ウォン、6.79元、0.88EUR、2018年は1USD=110.4円、1100.10ウォン、6.61元、0.85EUR、2019年は1USD=109.0円、1165.5ウォン、6.91元、0.89EURとしている。

 

<市場に含まれる商品・サービス>

正極材、負極材、電解液・電解質、セパレーター

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。