NEXT MOBILITY

MENU

2021年2月15日【テクノロジー】

ヤマハ発動機のFSR開発部、二輪車のような航空機を目指す

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「二輪車のような航空機」の開発に取り組む金城さん、広瀬さん、竹之内厚志さん(左から)

 

 

ヤマハ発動機では、FSR開発部社員の自発的な研究活動の中から「二輪車のような航空機」の開発が進められている。その進捗状況レポートが、同社サイトで2月15日発表された。

 

自発的研究を奨励する「5%ルール」

「一歩一歩、積み上げるかたちでここまで来ました。そこに関しては、誇らしさも感じています」。そう話すのは、ヤマハ発動機FSR開発部の金城友樹さん。金城さんらは職場近くの倉庫を借り、4年前からこの秘密基地でご覧の小型飛行機の組み立てを進めてきた。

 

ヤマハ発動機の研究部門には、通称5%ルールと呼ばれる「エボルビングR&D活動」という制度が存在する。これは事業に直結した日々の研究活動とは別に、就労時間の5%を自発的な研究に充てることでエンジニアとしての幅をひろげ、そのパワーでイノベーションを創出していこうというもの。そうした自発・自律的な研究活動の中から、2018年には電動トライアルバイク「TY-E」が誕生した。

 

「エボルビングR&D活動は、志を抱いている人の情熱の入り口。そして僕らの志は、『二輪車のようにパーソナルでスポーティな航空機』の開発です。その目標を実現する第一歩として、まずは自分たちの手で自作飛行機キットを使った組み立てに取り組むことで、航空機の設計やつくり方の基本の習得に励んでいます」

 

試運転を終えて機体への搭載を待つエンジン

 

 

オートバイのように付き合える飛行機を

機体はすでに胴体まわりの組み立てを完了し、昨年は手づくりのダミーフレームにエンジンを搭載して試運転まで漕ぎつけた。2021年はいよいよそのエンジンを機体に搭載して、残る主翼づくりに着手する。「そこまでが2021年の計画。その後は飛行試験に向けて性能検査や書類整備を行い、許可を得て飛行させる計画です」

 

飛行可能な機体を自分たちの手で組み上げることで、航空機の図面を描ける知識を手に入れ、また解析技術や整備スキルも身につける。壁に当たって頭をひねった分だけ、また慣れない作業で手を動かした分だけ、はるか遠くに見える「二輪車のような航空機」の開発の実現に向かって、確実に近づいている感覚を得ながらのチャレンジだ。

 

「オートバイでのツーリングは、一人でもみんなでも楽しめますよね? それからレースのように競い合う喜びや、自分らしくカスタムする愉しみ、ガレージでうんちくを語り合うことだって魅力の一つ。僕らが目指しているのは、そんなふうに付き合うことができる飛行機です。海外には、もうそうやって楽しんでいる人たちがいます」

 

メンバーの一人、広瀬量平さんが見せてくれたデザインスケッチには、機体にまたがって操作するパイロットと、タンデムシートにまたがるパッセンジャーの姿が描かれている。「空想のように思えるかもしれませんが、思い描かなければ生まれない。僕らはそんな乗りものを生み出したいと考えています」。

 

自作にこだわり、操縦席のシートなど部品製造にもトライ

 

 

夢と志を持って、ゼロから航空機開発に挑むグループのリーダー金城さんは、京都大学在学中から人力飛行機づくりに取り組み、入社後は当社の人力飛行機同好会「チームエアロセプシー」で飛行距離の世界記録樹立を目指した経歴の持ち主。現在は研究部門に在籍しているが、かつては産業用無人ヘリコプター「FAZER」の設計を担当したこともある。ほとばしる情熱を発しながら、それでも急ぐことなく堅実に一歩一歩前進しようとするその姿はまさに純粋そのものであった。

 

 

■電動トライアルバイク「TY-E」について

https://global.yamaha-motor.com/jp/recruit/project/tye/#_ga=2.249281540.2051189915.1611531387-568910676.1562203536

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。