ヤマハ発動機は6月3日、国土交通省からの〝型式指定申請に於ける不正行為の有無等について調査指示〟を受けて社内調査を実施した結果、2つの認証試験(現行生産車1車種、過去生産車2車種)に於いて不正が確認されたことを公表した(5月31日、国土交通省に報告)。
なお、これら対象車種(現在出荷を停止/過去に出荷済みの車両)は、再試験により、実際の使用には支障が生じないことが確認されているとのこと。
同社は、今回の不正を重大に受け止め、深く反省しているとコメントしている。
1.調査方法と結果
2024年2月から5月にかけて、過去10年間に認証試験を実施した者およびその申請書類を作成した者を対象に、不正行為に関与したり見聞きしたりしたことが無いか、アンケート方式で尋ねると共に、申請書類が認証試験の社内報告書を基に正しく作成されていたかを確認するため、両書類を突合する調査を実施。さらに、疑義の生じた事案については、関係者へのヒアリング等も行った。なお同社では、これら調査を、独立性・中立性を担保するべく、自社の統合監査部主導の下、外部調査機関を活用して行ったと云う。
その結果、〝騒音試験〟に於いて「規定とは異なる条件で試験が行われていた」という事案と、〝警音器の音圧試験〟に於いて「試験を実施した車両以外の車台番号を記載して申請を行った」という事案の2つの不正が確認された。
同社は、これら対象の製品について、関係当局と対応手続き(再試験や試験成績書の再提出等)についての確認や相談等を適切に行った上で、必要な対応を行っていくとしている。
2.不正事案の内容と対象型式
(1)騒音試験:不適正な条件によるコンディショニング(試験準備調整)
騒音試験に当たっては、グラスウール製吸音材を使用した消音器(マフラー)を通常路上で使用する状態にするコンディショニング(試験準備調整)を行うところ、認証試験担当者は、コンディショニングの過程で、熱によって試験器具が溶損する事態が生じたため、規定とは異なるエンジン出力でコンディショニングを実施。
認証試験担当者が、グラスウール製吸音材の耐久劣化状態に影響を与えず、排気圧力・持続時間・試験サイクル数等の試験条件を満たす範囲であれば、試験機器の溶損を避けるためにエンジン出力を変更することは問題ないと誤った判断をしたもの。
同社では現在、対象現行車種の出荷を停止しているが、改めて実施した規定条件下での再試験で、何れも基準に適合していることを確認。また、出荷を停止している対象車両および出荷済みの車両に関して、実際の使用に支障を生じさせる事案は確認されていないとしている。
また今後は、関係当局に再試験の試験成績書の提出・相談を行った上で、必要な対応を行っていくとしている。
(2)警音器の音圧試験:型式申請時、試験を実施した車両以外の車台番号を申請書類に記載
型式申請時に、警音器およびその取付け状態が同等である他の型式の試験結果を使用する際、本来は試験を行った車両の車台番号を申請書類に記載し、その車両と申請車両の性能が同じであることの宣言書(管理番号と申請車両の引当て表)を当局に提出すべきところを、申請担当者が、誤ったルールの理解により、引当て表を提出せず、かつ試験を行った車両の車台番号ではなく、申請する車両の車台番号を申請書類に記載して申請していた。
なお、同社では、対象車両について、実際の使用に於いては支障は無いものと判断。今後は、関係当局に相談を行った上で、必要な対応を行っていくとしている。
3.原因
(1)騒音試験:不適正な条件によるコンディショニング(試験準備調整)
・コンディショニングの条件を一部変更しても技術的にグラスウール製吸音材の飛散への影響が無ければ法令上も問題無いという、誤った法令の理解をしていた。
・認証試験に於いて、試験結果への影響だけでなく、試験プロセスも含めた遵法性が重要であることの認識が不足していた。
・試験プロセスの遵法性を担保するための方法や、プロセスごとの責任所在に不明確な部分があったため、適切な確認が行われず、試験実施部門の誤った判断の発見できていなかった。
(2)警音器の音圧試験:型式申請時、試験を実施した車両以外の車台番号を申請書類に記載
・認証申請にかかわる法令やルールについて、社内展開が正確にできていなかった。その結果、申請方法のルールについて十分に理解をしないまま誤った申請を行っていた。
4.再発防止策
二度とこのような事態を引き起こすことがないよう、以下の再発防止を徹底する。
・試験規程に於いて認証業務と開発業務を明確に区別する。
・認証業務の遵法性の担保と維持のために、試験プロセスの重要性と留意事項等を継続的に教育する。
・認証部門を明確に責任部署と定めて、試験プロセスの遵法性を担保する。
・認証業務および開発業務に於いて管理すべき項目について、抜け漏れなく記録を残す仕組みづくりをした上で、社内記録と申請書類の整合性およびその遵法性を確認する。
・申請書類と社内報告書の部内確認を行う仕組みを作り、形式的な単純照合作業とならないように作成者と承認者が相互に牽制を効かせた実効性のあるチェックを行う。
・認証試験用車両のコンディショニングについて、社内の法令解釈を明確にした上で規定化して周知する。
・法令等によって求められる認証申請に必要な手順について、抜け漏れなく社内規定に展開する仕組みを構築する。