ヤマハ発動機は6月17日、高速通信規格「5G」を活用し、複数メーカーの産業用ロボットを統合的に遠隔操作する実証実験に成功したと発表した。
実証には、異なるメーカーの産業機器を規格の壁を越えて統合するミドルウェアの「ORiN(オライン)」と、「クラウドダイレクト®️」を活用した。ドコモ5Gを活用した産業用ロボットの遠隔操作実験は日本で初めての成功となる。
なお、この実証は、ORiN協議会、およびその加入企業であるヤマハ発動機、NTTドコモ、デンソーウェーブ、カワダロボティクス、オフィスエフエイ・コムの5社が共同で実施した。
実証は、2021年3月4日~4月7日にドコモオープンイノベーションラボ四ツ谷で実施された。複数メーカーのロボットを使い、操作者の入力デバイスからの信号を「ORiN」で変換し、5Gを経由して遠隔側のロボットを操作した。
「ORiN」を介して、ヤマハ発動機製のスカラロボットと、カワダロボティクス製のヒト型ロボットを接続。現場でロボットが動く様子は、5Gを介して遠隔のロボット操作者に届けられ、操作者がディスプレイに映る高精細の映像を見ながら、二つのロボットの動作を入力デバイスで指示した。
実証では、異なるメーカーの産業用ロボットであっても、「ORiN」を介することでメーカーの仕様の差分を吸収し、統合的に接続できることが確認できた。また、5Gを使用することで、現場の4K映像をリアルタイムにロボット操作者のディスプレイに表示できることおよび、操作者のロボットへの入力信号のタイムリーな反映ができることを確認できた。その結果、操作者の違和感を軽減し、円滑な操作を実現した。
現在、製造業の工場ではさまざまなメーカーの機器が動いており、これらを統合的に制御・監視するためにはソフトウェア側がそれぞれに対応する必要があり、プログラマーの学習コストやメンテナンスコストの増加が懸念されている。また、工場内の機器同士を接続するためにプロトコルごとに大量のケーブルが敷設されており、機器の設置位置の柔軟な変更ができないという課題がある。
今回の実証で構築した仕組みを採用することで、遠隔の環境であったとしてもORiNを介して製造業で使用されている異なるメーカーの機器同士を汎用(はんよう)的な言語で接続し、ケーブルを5Gに置き換えることで工場内をワイヤレスに接続し、柔軟なレイアウト変更を実現することが可能となる。
今後、ロボットをはじめとして、工場内のさまざまな機器が5Gで接続されることで、工場内のレイアウトフリーの実現や、各工場の設備連携などのさらなる発展が期待される。
■各社の役割
NTTドコモ:5G・クラウドダイレクトの提供、5G端末の提供
デンソーウェーブ:ORiNおよびロボットとの接続インターフェースの開発
ヤマハ発動機:産業用スカラロボット(YK400XE、RCX340)の提供
カワダロボティクス:産業用ヒト型ロボット(NEXTAGE OPEN)の提供
オフィスエフエイ・コム:システムの構築およびORiNを用いた遠隔操作、ソフトウェア開発
ORiN協議会:実証実験の全体統括