ヒートポンプソリューションでステランティスからの大型受注を獲得
仏ヴァレオは10月13日、EV向けサーマルシステムでの受注獲得の好調さを公表している。( 坂上 賢治 )
そもそもヴァレオは、2019年から完成車メーカーへ向けて自社開発のヒートポンプソリューションを供給しており、次世代のEVプラットフォームにも、この基礎技術をベースとした製品提供を積極展開している。同社はこれを踏まえ、先の9月具に同分野でステランティスから大型受注を獲得した。
システムサイズがコンパクトであるゆえに統合が容易な同社のヒートポンプは、高い電力効率と冷却効率を持ち合わせている。このためバッテリーの急速充電を可能にし、車室内で快適に過ごすために求められる充分な空調能力を備えているという。
またその前月の8月には、欧州で別の完成車メーカーとも契約を結んだ。これによりヴァレオはEVプラットフォーム向けに、EV用エアコンユニットとフロントエンド冷却モジュールの供給を開始した。
完成車メーカーに対して高い静粛性を強みに独自の提案力が活かせている
ちなみに同分野では、完成車メーカーに対して高い静粛性を強みに独自の提案力が活かせているとした。というのは、これまでの内燃エンジン搭載車で空調機の音は、エンジン音にかき消されて目立たなかった為で、内燃エンジンが存在しないEVでは、耳障りなノイズはクルマの乗員に簡単に聞こえてしまう事から静粛性が重要になる。
加えてヴァレオは中国の完成車メーカーともEV用サーマルシステム(スマート・ヒートポンプ)の追加注文を獲得。この際の納入ユニットは、バルブ、ポンプ、熱交換器で構成されている超小型の統合型スマート・ヒートポンプ・モジュールであり、こちらは2023年から量産が始まるという。
またバッテリー冷却システムに係る分野でも、既に欧州メーカーと大型契約を結び、中国と欧州の4つの顧客からも電気ヒーターと、2つの主要なEVプラットフォーム向けの電動コンプレッサーの受注も獲得した。
結果、ヴァレオは今年、自動車の電動化に特化したサーマルシステムで40億ユーロ以上の受注を獲得しており、これは前年同期と比べ100パーセント増の規模拡大にあたる。更にこの5年間を遡ると、同社は合計114億ユーロを受注。同実績はヴァレオのサーマルシステム受注全体の70パーセントを占めた。
電動化向けサーマルシステムの年初からの受注額は40億ユーロ以上に
ヴァレオのサーマルシステム・ビジネスグループのプレジデントであるフランシスコ・モレノ氏は、「2025年までに、EV向けのサーマルシステムは、内燃エンジン車用に製造されたシステムより、2.5倍の価値を創造するでしょう。
年初からの好調な販売実績は、Move Upプランに沿った電動化の加速がすでに進行中であり、ヴァレオがこの取り組みへのギアをアップしたことを示しています。
現在、サーマルシステムで世界第2位のサプライヤーであるヴァレオは、EV向けの包括的な技術ポートフォリオを有しています。
2021年に63億ユーロに達しているEV向けサーマル システム市場は、今後5年間で3倍以上に拡大し、2025年には210億ユーロ、2030年には400億ユーロ近くに達する見込みです」と述べている。