自動車用シート・内装品大手のテイ・エス・テックは11月18日、次世代車室内空間を具現化した「XR キャビン(Cabin)」を東京都内で公開した。アルプスアルパインと共同開発したもので、EV(電気自動車)や自動運転時代に向け、2030年代に実用化を目指す。
発表会見にはアルプスアルパインも同席。テイ・エス・テックの保田真成社長は自動車が劇的に変わる中、シートやドアトリムなどといった単体の製品から「キャビン全体を提案する企業」へと生まれ変わる狙いで開発したという。
このためにはハード面に加え、ソフトウェア領域のテクノロジーが不可欠であり、車載HMI(ヒューマンマシンインターフェース)技術に強みをもつアルプスアルパインと車室内空間の方向性の考えで一致した。
アルプスアルパインは電子メーカーのアルプス電気と車載情報通信機器メーカーのアルパインが2019年に経営統合したメーカー。テイ・エス・テックとそのアルプスアルパインは今年1月に業務提携を結ぶ。
公開したXR キャビンは自動車シートとVR(仮想現実)技術を融合、リラクゼーションシートのほか、EVに対応した高効率・速暖空調、ゾーン別サラウンドシステム、デザインと機能を融合させたステルススイッチなどを搭載。さらに生体センシングなど乗員の健康チェック機能などを盛り込む。
わが国の自動車メーカーや日本に事務所を持つ海外自動車メーカーを対象にした「次世代車室内空間発表会」も実施し、各社から「大変、興味がある」という声が寄せられたという。
テイ・エス・テックとアルプスアルパインは次世代車室内空間のコンセプトを数セット開発し、北米や中国の開発拠点に持ち込み、同様の提案を海外の自動車メーカーへも行う方針だ。
保田社長はXR キャビンの展開について、「次世代自動車についてはOEM各社で考え方が異なる。このため今回の発表をスタート台に、それぞれのOEMの仕様に合うよう開発を進めていくことなる」とした。また、キャビン全体のほか、個々の要素技術ごとの提案も検討する。
一方で、アルプスアルパインは今回のXR キャビンと並んで、計器メーカーの日本精機ともインパネ周りの開発を協業する。
このため、アルプスアルパインの木本隆取締役専務執行役員はXR キャビンにヘッドアップディスプレイなどを組み込むなど、話が進めば「3社協業」へと発展の可能性も示唆した。
保田社長はともにホンダを主力供給先としていることから「OEMを含めた共同開発」になるとも見方を示す。
XR キャビンの実用化を2030年代としたのはEVや自動運転の普及期を前提としたためで、それぞれ要素技術についは早い段階での採用可能性を示唆する。すでにホンダとは一部技術を共同開発していると話す。