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2024年7月5日【自動車生産】

トヨタ、自動車廃材から「みやぎの工芸品」を生む取り組み

坂上 賢治

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トヨタ自動車は7月5日、宮城県と共同で、地域の伝統工芸品に自動車廃材を取り込み、新たな価値を創造することで地域に貢献する活動として、鉄の廃材を用いた包丁と、ガラスの廃材を用いたグラスやアート作品を、宮城県内の職人・アーティストと共に製作した。

 

トヨタ社内の構造デザインスタジオは、車両構造を素材と工法から抜本的に見直し、従来の経済軸・技術軸に、鉄などの資源の使用量削減やリサイクルしやすい構造を実現する環境軸の考え方を加えた「捨てるところのないクルマづくり」を推進している。

 

その際、クルマの原料や材料にリサイクルできない素材は、元の形よりも付加価値をつけ新たな製品や作品へ生まれ変わらせるアップサイクルの仕組みづくり・仲間づくりにも取り組んでいる。構造デザインスタジオでは、これらの活動を総称して「Geological Design(ジオロジカルデザイン)」と呼んでいるという。

 

そうしたなかで今回、トヨタが提供した自動車廃材の鉄とガラスが、数百年の歴史を持つ中新田打刃物を手掛ける石川刃物製作所(宮城県加美町)と、その土地に根ざした独創的な作品を手掛ける海馬ガラス工房(宮城県仙台市)の手により、みやぎの工芸品である包丁とグラス等のガラス製品へと生まれ変わった。これらの製品は今後一般発売も検討していく。

 

トヨタでは今後も、環境にいいクルマづくりに取り組むと共に、地域の伝統的な工芸品・美術品の知名度向上や産業振興等への協力による地域貢献を通じて「町いちばんの会社」を目指してくと話している。

 

今回、トヨタの自動車廃材から生まれた工芸品の事例は以下の通り

 

製品紹介
中新田打刃物 自動車廃材アップサイクル包丁
〈製作〉石川刃物製作所
〈使用素材〉自動車の鉄端材

 

石川刃物製作所 石川美智雄氏

 

〈石川刃物製作所 石川美智雄氏のコメント〉
自動車とは関係が薄いと思っていた「味覚」を創り出す今回の取組み。鉄廃材を命の源である「食」へと繋げられることや新しい鋼材での製作に挑戦出来ることが非常に面白いと思い、協力させていただきました。

 

従来の鋼材とは全く異なる素材のため、鍛造する工程で温度も叩く力加減もすべて変える必要があり、感覚を掴むまでは苦労しました。1か月半ほど試作を繰り返しましたが、出来上がった製品の切れ味には非常に自信を持っています。

 

今回、中新田打刃物×トヨタ自動車ということで、我々の原点である「黒打の三徳包丁」に、トヨタの原点である織物で使われる藍染に着目した「藍色の柄」を組み合わせた包丁も製作してみました。これをきっかけに、中新田打刃物に興味を持つ方が少しでも増え、打刃物の切れ味を是非多くの人に知っていただけると嬉しく思います。

 

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石川刃物製作所 石川美智雄氏
自動車廃材アップサイクルガラス製品
〈製作〉海馬ガラス工房
〈使用素材〉自動車廃ガラス(サイドガラス)

 

海馬ガラス工房 村山耕二氏

 

〈海馬ガラス工房 村山耕二氏のコメント〉
これまでありふれた自然物と思われている各地の砂・岩石をガラス化することによって、自然・環境を再認識する作品制作を行ってきた中、品質・性能等で使用目的をもって作られる、素材として対極とも言える工業的素材のガラスに、同じガラス素材としてどの様な差異があるのかを感じ、新たな表現の可能性を探れればと思ったのが取組みのきっかけです。

 

工芸素材としてのガラスに比べ、保熱と冷める温度の変化に独特の特徴があるため、取り扱いに慣れるまでに少なくとも3ヶ月くらいは試行錯誤してきました。現在もまだ途上にいる感覚です。両者の素材としての差異を探り、活動を続けてゆくことで、最終的には自動車廃ガラスを純粋な素材として認識し、アップサイクルという意識がなくなる素材循環の世界が訪れることを期待したいですし、そのようなことを感じてもらえる創作活動を行っていきたいと思っています。

 

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〈トヨタ自動車 構造デザインスタジオ・テーマプロデューサー大學孝一のコメント〉

自動車廃材が、みやぎの伝統工芸品・美術品の認知度向上につながり、少しでも地域振興のお役に立てるのであれば、大変嬉しく思います。今後は宮城県に生産拠点を置くトヨタ自動車東日本株式会社から生じた自動車廃材を用いることで、地域完結での自動車廃材の地産地消を実現していきたいと考えています。またこのような活動を通じ、「Geological Design」に取り組む仲間を、業界を問わず増やしていきたいと思います。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。