トヨタ自動車 豊田社長スピーチ
皆さま、こんにちは。豊田でございます。
本日はお忙しい中、また急なご案内にもかかわらず、共同記者会見にご出席をたまわり、誠にありがとうございます。
本日、トヨタ自動車株式会社とパナソニック株式会社は、車載用角形電池について協業の可能性を検討することに関する合意書を締結いたしました。
現在、私どもが直面しております温暖化や大気汚染、資源・エネルギー問題といった地球規模での課題を解決していくためには、電動車をより一層、普及させることが必要となってまいります。
そのためにも、電動車の重要な基幹部品である車載用電池について、性能・価格・安全性などの面での更なる進化と安定供給能力の確保が喫緊の課題と言えます。
こうした認識のもと、両社は、車載用角形リチウム、全固体など次世代電池の取り組みに加え、その電池の資源調達やリユース・リサイクルなども含めて、幅広く、具体的な協業の内容を検討してまいります。
ここからは、今回の提携に込めた私の想いについて、少しお話をさせていただきます。
トヨタと電池との関わりは古く、1925年にまでさかのぼります。
トヨタグループの創始者である豊田佐吉は、当時のお金で100万円の懸賞金をかけて、蓄電池の開発を奨励いたしました。
その翌年の1926年に設立された豊田自動織機製作所の資本金が100万円でしたから、当時としては大変な金額になります。
開発を奨励した蓄電池は、「100馬力で36時間運転を持続することができ、かつ重さは225キロ、容積は280リットルを超えず、工業的に実施できる」というものでした。
これが「佐吉電池」といわれるものですが、未だにここまでの性能を持つ電池は開発できておりません。
佐吉は、今日のような「電動化時代の到来」をすでに予感していたのかもしれません。
当時から90年以上が経過した2013年、私は静岡県湖西市にある佐吉記念館で、ある方をお迎えすることになります。
いま、私の隣におられる津賀社長です。
社長に就任された1年後に、私どもの原点とも言える佐吉記念館をご訪問いただきました。
いろいろなお話をしながら、館内をご案内させていただいたのですが、津賀社長の表情、姿勢、言葉の端々から「創業への想い」と「お国への想い」、そして、「会社を継承する者」としての覚悟がひしひしと伝わってまいりました。
その時から4年の月日が流れ、本日、皆さまの前で、車載用電池の開発というテーマでの協業を、発表させていただく運びとなったわけです。
私には、「津賀社長と、佐吉記念館で出会ったときからこうなることは必然であったのではないか」という気がしてなりません。
いま、自動車業界は「100年に一度」と言われる「大変革の時代」に直面しております。
もはや、これまでの延長線上に未来はない。
自分たちの知恵と技術によって、未来を創造しなければならない時代に入ったと認識しております。
未来を創造するために必要なものは、「世の中をもっとよくしたい」というベンチャー精神と「もっといいやり方がある、もっといい技術がある」というベターベターの精神だと思うのです。
パナソニックさんには、長年にわたって積み重ねてこられた車載用電池の業界ナンバーワンの開発力があります。
そして、トヨタには、ハイブリッドカーの開発でつちかった電動化技術に加えて、「クルマへの愛」、「クルマを絶対にコモディティにはしないという決意」があります。
さらに申し上げますと、両社には、松下幸之助翁、豊田佐吉、豊田喜一郎という日本の国の発展に人生を捧げた偉大なる発明家、起業家から継承してきた「ベンチャー精神」があります。
本日、私が皆さまにお伝えしたかったことは、両社の提携は、「今よりも、もっと豊かで、もっと楽しいモビリティ社会」を実現するための提携であり、「日本で生まれ育った両社が電動化の時代をリードしていく」という想いを形にしたものだということです。
皆さまのあたたかいご支援を賜りますようお願い申し上げます。
以上