豊田自動織機は12月10日、同社が新たに開発した「燃料電池向けエアコンプレッサー」と「水素循環ポンプ」が、トヨタ自動車の燃料電池自動車(以下、FCV)の新型「MIRAI」に搭載されたと発表した。
気候変動問題は、世界各国が取り組むべき最重要課題として、先日、日本でも2050年の脱炭素社会実現が目標に掲げられた。このような状況を背景に、水素を燃料とし、走行時に水だけを排出するFCVおよび、FCシステムの商用利用など、水素利用が様々な形で進んでいる。
FCVの普及を見据えて開発された新型「MIRAI」では、「こんなクルマが欲しかった。それがMIRAIだった」を目標に、航続距離が延長され、スタイリングや走行性能等、全方位での見直しが実施された。
今回、その新型「MIRAI」に採用された豊田自動織機の新開発エアコンプレッサーは、量産品としては世界初(※)となる「可動ローラー式増速機」を用いた遠心式を採用し、従来モデルから24%の圧縮効率向上、35%の軽量化、45%の小型化を実現。また水素循環ポンプは、「新シール構造」を用い、素材を従来のステンレス製からアルミ製に変更することで、41%の軽量化が実現されている。
豊田自動織機は、FCV向け製品に加え、主力事業である産業車両分野の「FCフォークリフト」や「FCトーイングトラクター」など、今後もFC関連製品のラインアップを拡充し、水素社会の実現に貢献していくとしている。
[FCVにおける豊田自動織機製品の役割]
FCVは、FCスタック内で酸素と水素を反応させることで発生する電気でモーターを駆動して走行するが、燃料として使用する酸素は大気を「エアコンプレッサー」で吸引・圧縮して、水素は水素ステーションで充填された高圧水素タンクから、FCスタックに供給される。
そして、発電時に反応を起こさなかった水素や発生した水は、「水素循環ポンプ」によってFCスタックから吸引。未反応水素は再度FCスタックへ送られ使用され、水は外部に排水される。このように、エアコンプレッサーと水素循環ポンプは、FCVの発電システムにおいて重要な役割を担っている。
<エアコンプレッサー>
FCVでは、始動後に絶えず酸素と水素をFCスタック内で反応させるため、エアコンプレッサーはアイドリング時の小流量から加速時の大流量まで、大気を効率よく吸引・圧縮することが求められるが、開発品では、カーエアコン用コンプレッサーで培った圧縮技術をベースに、エアコンプレッサーの空気圧縮部を、量産品としては世界初(※)となる「可動ローラー式増速機」を用いた遠心式に変更。
これにより、圧縮部のインペラーを、自動車エンジン用ターボチャージャー並に超高速回転(183,700r/min)化し、新型「MIRAI」の高出力化に大きく貢献した。
さらに、増速機内部の可動ローラーが空気流量の変化に対応しながら最適位置に動き、モーターからインペラーへ動力を伝達することで、小流量時・大流量時共に効率的に空気を圧縮。従来モデル比で圧縮効率を24%向上、また35%の軽量化、45%の小型化も実現されている。
<水素循環ポンプ>
水素循環ポンプは、発電時未反応だった水素と発生した水を、効率よく循環させることが求められるが、新開発の水素循環ポンプでは、「新シール構造」を用いることで耐食性を向上。素材を従来のステンレス製からアルミ製に変えることを可能とし、41%の軽量化を実現した。
なお新型「MIRAI」には、上記製品の他、「カーエアコン用コンプレッサー」「水素循環ポンプ用インバーター」が搭載されている。
※豊田自動織機調べ。