豊田自動織機は5月30日、車載電池(バイポーラ型ニッケル水素電池)の開発で培った材料技術・分析技術を活用した「アルカリ水電解式水素製造装置向けの電極」を開発したことを発表した。
脱炭素社会の実現に向けた次世代エネルギーとして注目を集める水素需要は、年々高まっており、水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」ためのサプライチェーン構築や、各工程の技術開発が加速。水と電気から水素を「つくる」水素製造装置の市場は、2030年には、2022年比で約130倍(※1)にまで急拡大する見込みであることから、効率的かつ安定した水素製造技術の開発が求められていると云う。
このような状況を受けて、豊田自動織機では、複数ある水素製造方法の中でも、ニッケル水素電池の知見を活かせるアルカリ水電解方式に着目し、水素製造のキーデバイスである電極について、独自設計の材料および製造工程の開発を推進。今般、車載電池(バイポーラ型ニッケル水素電池)の開発で培った材料技術・分析技術を活用した「アルカリ水電解式水素製造装置向けの電極」を開発した。
この電極は、二ッケルを主成分とする独自設計の材料で構成され、白金やルテニウムなどの貴金属やコバルトが使用されていないため、サプライチェーンリスクの低減に貢献。また、貴金属やコバルトを使用した電極と同等の高い電解効率が実現されていること、その効率を低下することなく維持する高い耐久性を有することも、同社基準による耐久評価試験試験で確認されていると云う。
<開発品の特徴>
(1)サプライチェーンリスクの低減に貢献
白金、ルテニウムやコバルトなど、原産地が特定の地域や国に限られる金属を電極の材料に使用せず、安定供給や価格高騰のリスク低減に貢献。
(2)高い電解効率
貴金属やコバルトを使用した電極と同等の電解効率84%(※2)を達成。
(3)電解効率を維持する高い耐久性
再エネ電源の供給停滞により、水素製造装置が停止する際に起こる電極材料の化学変化は、電極の「剥がれ」を招き、電解効率の低下につながるが、こうした耐久性の課題に対し、同社では独自の電極構造設計を採用。起動停止耐久1300回(※3)(14年相当)時点および連続耐久1000時間(※4)でも劣化せず、電解効率84%を維持する電極を実現。
同社は、この電極について、今後水素製造装置への実装に向けた試作を行い、装置メーカーやシステムメーカー等のニーズに応えられるよう更なる開発を進め、2028年頃の市場投入を目指すとしている。
※1:出典:国際エネルギー機関(IEA)。2022年までの累積導入量約1ギガワットから、2030年に約134ギガワットに拡大する見通し。
※2:電流密度600mA/cm2に於ける電解効率。
※3:風力発電の年間停止回数(約90回/年)を前提に算出。
※4:2030年における1000時間あたりのスタック劣化率目標は0.12%(経産省 水素・燃料電池戦略ロードマップより)。