豊田合成は、青色LEDの材料である「窒化ガリウム(GaN)」の結晶化技術を用い、開発中の「縦型GaNパワー半導体」において、世界最高水準となる1チップで100アンペアの大電流動作を実現した。
車や家電、産業機器などで幅広く使われるパワー半導体は、電力を変換する電子部品(※1)として、現在、電動車の普及や再生可能エネルギーの利用拡大に伴い高性能化が求められている。
しかし、従来の材料であるシリコン(Si)では、大電力の効率的な変換(※2)が限界に近づいている(※3)。
そこで豊田合成は、耐圧性に優れる「GaN」を使用することに加え、電気を基板に対して垂直に流す「縦型構造」を採用することで、薄型・小型化。その性能を高めて(※4)きた。
今回、新たにGaN結晶内に「電流分散層」を導入することで、電流を耐圧維持層に広げて抵抗値を下げ、電流容量を従来の50アンペアから100アンペアに高めることに成功した。
なお豊田合成は、この技術について、今年5月に上海で開かれたパワー半導体の世界最大の国際会議(ISPSD/※5)で発表している。
※1:電気のオン/オフの切り替え(スイッチング)などにより、電圧や電流、周波数などを変換する。
※2:導通時やスイッチング時の電力損失(熱に変わる)が少ないこと。
※3:Siは半世紀以上に渡る改良を経て、「高耐圧」(高電圧で壊れない)と「低抵抗」(電気抵抗が低い)の両立が物性上の極限に近づいているため、大電力動作時の「導通損失」や高周波動作時の「スイッチング損失」の大幅な低減が難しい。
※4:GaNはSiの10倍以上の耐圧性を持つため、薄型化・低抵抗化による導通損失の低減が可能。また「縦型」はチップ全体を使って電気を流せるため、小型化・高周波動作化によるスイッチング損失の低減が可能。これらにより豊田合成は、高耐圧(1.2kV 級)で低抵抗(1.8mΩ㎠
)、高周波動作(10MHz 以上)などの性能を実現している。
※5:The 31st IEEE International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs
■(豊田合成)縦型GaNパワー半導体の技術説明資料(PDF):https://www.toyoda-gosei.co.jp/upload/news/787/document_20190523.pdf