トーヨータイヤ(TOYO TIRE/本社:兵庫県伊丹市、代表取締役社長:清水隆史)は、自動車が走行している最中に気候などの外的要因が刻々と変化するなか、タイヤ自体に影響を与える「摩耗」や「荷重」、「たわみ」といった動的影響を検出。
これを数値に置き換えて視覚化した上で。昨今のデジタル技術やAI(人工知能)を使って分析していくことで、これまで使い古されたきた「タイヤパフォーマンス」を数値としてリアルタイムに見せられる全く新しいタイヤセンシング技術の開発に成功。この成果を都内開催の記者発表会で公開した。
トーヨータイヤでは、昨今急速に加速されるCASEなどの技術トレンドの進化や、車両制御技術の高精度化。クルマの運行管理に見られるビッグデータ化。さらにはそれらのデータ群を基にしたメンテナンス情報の提供など、今日、自動車アフターマーケットへの反映を求める声に応えるべく、タイヤから各種情報を吸い上げるセンシング技術の開発を積極的に進めてきた。
TOYO TIRE 技術開発本部 先行技術開発部 設計研究・技術企画グループ 榊原 一泰担当リーダー
これら技術進化により、これまでは単に「走るための消耗品」でしかなかったタイヤを「情報取得デバイス」として仕立て上げ、自社事業そのものにも拡がりを持たせ、新たな付加価値提供による新規ビジネスモデル創造を目指している。
今発表では、自動車が走行している状態に於いて、路面やタイヤの状態を正しく把握するため、タイヤからの情報取得に適したセンサーを巧みに装着。そこから検知した諸情報を高度演算処理で分析。そこから本来、果たすべきタイヤ性能(グリップ力)の限界値を導き出すセンシング技術を構築した。
トーヨータイヤでは、刻々と変化する路面の状態に対してリアルタイムに求められる要求性能を割り出すため、走行中のタイヤから収集可能な「空気圧」「タイヤ各部の温度」「路面判別」、4つの個々タイヤに掛かる「荷重」「摩耗」「異常」などの取得情報から推定したパフォーマンス値を「タイヤ力」として独自に呼称。個々4輪のタイヤが、走行中に充分な能力を発揮できているかを把握し、その数値とパフォーマンスを視覚化できるようにした。
これにより、車両別に求められるタイヤ性能のみならず、クルマが走行している外的環境やそれに係る4輪それぞれに求められるべき限界値と、実際のタイヤが実現しているパフォーマンス値を数値で割り出す。
このリアルタイム数値と車両の動きを連動させ、より高い安定走行や危険回避能力を引き出すかなどドライビングの安全性と愉しさの両立を目指していくという。また今回構築した技術を用いて、自動運転技術などタイヤ外の技術領域との統合(オープンイノベーション)を進めていくとしている。
そうした技術説明の後、説明会に登壇した技術者に加えてタイヤ技術の専門家をゲストに加えた座談会を実施。そこで同社のタイヤセンシング技術は、タイヤを情報取得デバイスとして機能させ、検知した情報から「走行中の路面に応じてタイヤに求められるパフォーマンス」と「実際の走行中に発揮しているパフォーマンス」を導き出し、安全で精度の高いドライブにつなげるというコンセプトにより開発されたことなど過去の開発の経緯や、将来に向けての可能性について活発なディスカッションが行われた。
ISHマークイット日本・韓国ビークル・セールス・フォーキャスト 川野義昭マネーシャー
TOYO TIRE 技術統括部門管掌 守谷学執行役員
SAS Institute Japan ソリューション統括本部 森秀之執行役員
トーヨータイヤでは、今回のタイヤのパフォーマンスの割り出しのためAIテクノロジー企業のSAS Institute Japan社 と協業した背景などを説明。この協業により車両とタイヤ・ホイールに装着した各種計測機器とタイヤに装着したセンサー情報の同期に成功し、この結果を学習データ(データセット)としてニューラルネットワークであるAIへと引き渡すデータ分析プロセスを構築。今回の「タイヤ力推定モデル」の構築へと結びつけたのだという。
加えて今後はPOC(Proof of concept:概念検証)を行うプロセスを経て同技術のさらなる可能性について模索を続けていき「タイヤ力」の理論的根拠をより強固に固めていく構えであると結んでいた。