東洋製罐と新日鐵住金は、共同で業界最軽量となるスチール缶を開発した。
このスチール缶採用の製品は、既に今年5月から市場に流通していると云う。
共同開発したスチール缶(開発缶)は、185g用TULC(*1)の低陽圧缶(*2)で、缶重量はスチール缶では業界最軽量の16.2g(蓋除く)。
低陽圧缶仕様の従来缶に対して6%超、広く使用されているTULCの陰圧缶(*3)に対して約40%の軽量化を実現した。
缶の軽量化は製造工程や輸送時のCO2排出量削減につながることから、両社は、今後の開発缶の採用拡大が期待できるとしている。
[開発までの経緯]
東洋製罐は、安定した缶内圧の確保により缶内圧検査が可能で、缶の薄肉化を図れる低陽圧缶充填システムを開発しており、飲料充填メーカーに低陽圧缶仕様のスチール缶と共に提供している。
新日鉄住金は、低陽圧缶仕様の従来缶用に板厚0.185mmの鋼板を供給していたが、開発缶用に新たに板厚0.170mmの鋼板を開発。鋼板はTULC製缶時に更に薄く延ばされる。
缶の板厚が薄くなるに伴い、鋼板中の介在物の影響を受けやすく、缶は破断しやすくなるが、新日鉄住金は、介在物を極力低減する技術を高めた極薄鋼板を開発。
東洋製罐は、製缶プロセスの工夫で、板厚0.170mmの極薄鋼板でのTULC製缶を実現した。
[スチール缶の開発]
スチール缶は、以下のような特徴をもっている。
①リサイクル率が高く、LCA(ライフサイクルアセスメント)に優れる
②打検(*4)により、缶詰製品の内圧異常などの良否判定が可能
③変形・破損がしにくく、流通特性に優れる
④遮光性・気密性に優れ長期保存が可能
両者は、上記に挙げた特徴を生かし、素材メーカーと製缶メーカーの共同の取り組みにより、業界最軽量となるスチール缶を実現。開発缶は現在、ダイドードリンコのコーヒー製品に採用されている。
東洋製罐と新日鐵住金は、今後も両社の技術先進性を発揮することを通じて、地球環境に優しく、食品安全性に優れたスチール缶の開発に取り組んでいくとしている。
*1)TULC:TULC(Toyo Ultimate Can)は、材料・生産プロセスを根本から見直し、加工時にクーラント(潤滑・冷却剤)不要、廃水処理不要、内面塗装不要な環境保全性を高めた2ピース缶。
*2)低陽圧缶:缶の内圧が外気圧より高い(陽圧)状態のため、缶胴が薄くても強度が保持できる。また缶底がフラットなため、陰圧缶詰用の打検システムが使用出来る。
*3)陰圧缶:缶の内圧が外気圧より低い(陰圧)状態のため、缶の剛性により強度を保持する。
*4)打検:音波を利用した缶詰の非破壊検査方法。缶底を叩いてその音の振動数を解析し、製品の内圧を判別して良否判定する。