東レは、従来の紫外線カットフィルムに比べ、薄膜で紫外線カット率99.99%の紫外線遮蔽性能をもち、かつ透明性を維持したまま、400nm(ナノメートル/※1)近傍の紫外線領域までカットできる紫外線カットフィルムを開発し、2020年の量産に向けて本格展開を開始した。
ディスプレイ市場では現在、情報化社会の発展に伴い、従来の液晶ディスプレイ(LCD)の他にも、様々なディスプレイが開発され、各種の特長を活かした製品が市場へ展開されている。
中でも、TVやスマートフォンなどの各種用途に急速に広がっている有機ELディスプレイは、水分や熱の他、紫外線にも弱く、特に可視光に近い波長400nm近傍の紫外線でも劣化に影響するとの報告もあり、耐久性向上のさらなる改善が望まれていると云う。
東レでは、2008年に上市したナノ積層フィルムPICASUS(※2)で培った技術追求を続け、ナノ積層フィルムの層厚みをさらに高精度な制御を可能とし、干渉反射現象による反射波長帯域を自由に制御できる「波長選択性」を実現。
近赤外透過・金属光沢調フィルムや、ダイクロイック調フィルム、ブルーライトカットフィルムなど、種々の用途に応じて必要な特性を付与したPICASUSシリーズを展開している。
今回本格展開を始める紫外線カットフィルムのPICASUS UVは、ナノスケールの厚みの層を数百~千層重ねたフィルムで、その層の厚みや配列デザインにより紫外線領域の光を任意に反射・吸収させる機能を備えている。
これにより、従来の紫外線吸収剤のみを含んだフィルムでは達成できない400nm近傍の紫外線までをカットしつつ、その遮蔽性能を飛躍的に向上。
ディスプレイ用途以外でも自動車、建材、農業、電子材料、医薬等の特殊包装の様々な用途での使用が期待できるとしている。
[紫外線カットフィルムPICASUS UVの技術ポイント]
1.高い紫外線遮蔽性能
ナノ積層フィルムならではの干渉反射により400nm近傍の紫外線までをシャープにカットしつつ、紫外線吸収剤を併用、薄膜かつ無色透明でありながら、従来技術では達成困難な紫外線カット率99.99%の紫外線遮蔽性能を実現。
2.フィルムの高精度積層技術
独自の積層装置とポリマーレオロジーの制御により、各層の厚みをナノメートルレベルで高精度に制御し、数百層もの層厚みを個別にデザインすることが可能。これにより光干渉反射現象による反射・透過の波長帯域を思い通りに制御できる「波長選択性」を実現。
※1)nm(ナノメートル):10-9m(髪の毛の直径が10~100μmとすると、その1万~10万分の1)
※2)PICASUS:東レ独自のナノ積層技術を駆使したポリエステルフィルムの総称。可視~近赤外線までの光を一様に干渉反射させた金属光沢調フィルムから、ディスプレイから発するブルーライトのみを色づきなくカットできるフィルム、特定の色の光のみを選択的に反射できるダイクロイック調フィルムなど、様々なラインナップがある。